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【コミカライズ連載中】持ち主を呪い殺す妖刀と一緒に追放されたけど、何故か使いこなして最強になってしまった件  作者: 玖遠紅音
第3章 黄昏の鐘と栄華の残響

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プロローグ 黄昏時に鳴り響く鐘の音

第3章開幕です!

 夕方になると決まってこの時間に鐘が鳴る。

 どこから聞こえてくるのか分からないけれど、私の国では何百年も前からずっとそうだったらしい。

 私はこの優しく美しい鐘の音が大好きだった。


「あっ、鐘が鳴った!」

「ちぇーっ、今日はもう解散かぁ」

「それじゃみんな! また明日ね!」


 それは子供たちにとっては一日の終わりを告げる音。

 太陽がもう間もなく沈む黄昏時は、今日の遊びを終了させるのにベストなタイミングだった。

 どれだけ楽しく遊んでいても、あと少しという時でもこの鐘のを聴いたらみんなすぐに家に帰る。

 不思議と心が落ち着き、ルールを破ってしまおうなんて気持ちは起きなくなる。

 それでいい。だって夜は悪魔の時間なのだから。

 夜遊びしている悪い子は、悪魔に連れ去られてしまうのだから。


「ふふっ、今日は楽しかったね!」

「うん! 明日は何して遊ぼうかな!」


 夜が明ければまた楽しい時間がやってくる。

 海の果てでゆっくりと太陽が沈んでいく美しい空を背に、私たちは家へと帰っていく。

 それこそが私たちにとっての平和と日常の象徴。

 それこそが、私にとっての幸せの象徴だった。

 

 そのはずだったのに。


「うゥ、消えて、消えて、消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて――――」 

「聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!」


 いったいいつからだったかな。

 大好きだった鐘の音が、耳を塞いでしまうほどに苦しくなったのは。

 

 いったいいつからだったかな。

 不快なだけだった鐘の音が、憎くなったのは。


 いったいいつからだったかな。

 憎たらしい鐘の音を、()()()()()()()聞こえないようにしたのは。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あぁっ! 来ないで! ダメっ! 来ないで来ないで来ないで来るな来るな来るな来るな――」


 何度も耳を潰したのに。遠く離れたのに。いつまで経っても消えない。

 どこで聞いてもいつも同じ音量であの鐘の音が響き続ける。

 苦しい。気持ち悪い。おかしくなりそうだ。

 でも、でも。


「うゥぅ……」


 耐えるしかない。耐えなければならない。

 耐えなければ、また失ってしまう。大切なものを何もかも。

 

 ――違う。私が奪ってしまう。みんなの大切なものを!


「はぁ、はぁ、はぁ」


 あぁ、やっと終わった。

 よかった。今日も耐えられた。

 私のままでいることが出来た。


「……今日も、綺麗ね」


 額に滲んだ汗を拭って空を見上げると、そこには美しい深紅の満月が昇り始めていた。

 今の私は夜が好きだ。今まで大人たちに出歩いてはいけないと言われていた夜の時間は、こんなにも私の心を穏やかにしてくれる素晴らしい時間だった。


「……家にはまだ、帰りたくないな」


 体がだるい。本当はすぐにでもベッドで横になりたいところだけど、このまま家路につく気にはなれなかった。

 せっかくだから少し散歩をしよう。

 そうだ。近くの池に反射する月でも見に行こう。

 そうすれば少しは気分も晴れるだろう。

 どうせ家に帰ったって誰もいやしない。


「――あっ!」

「……えっ?」


 空をぼんやりと見上げながら歩いていると、見知らぬ人が私の目の前で立ち止まった。

 男の子だ。パッと見では12歳前後の若い男の子。

 だけどその腰には禍々しい刀を携えていた。

 一見温厚そうな雰囲気を纏っていながら、その深奥にただならぬ気配を宿している怪しげな少年。

 そもそもこんな時間にこんな場所を子供がうろついているはずがない。

 まさか、私を殺しに来た――


「えっと、すみません。ここ、どこか教えてもらっていいですか?」

「……へ?」


 最大限警戒していたのに、少年の口から飛び出てきたのはなんてことないセリフだった。


「ちょっと道に迷っちゃって……町の方へ行きたいんですけど」


 町の方へ行きたい? 

 いったい何を言っているのだろうか彼は。

 ここは村からも町からも遠く離れた山の中。

 誰一人近寄ろうともしない魔境だというのに。


「……あの?」

「……あぁ、ごめんなさい。ちょっと変なことをいうものだから、驚いちゃったの」

「あれっ、僕何か気に障るようなこと言っちゃいましたか!?」

「いえ、そうではなくて。ここは町からかなり離れたところだから、道に迷った程度ではたどり着かないはずの場所なの」

「あっ、そういうことでしたか。えっと僕は冒険者で、仲間たちと太陽の国ソランディアを目指していたところだったんです。でもちょっと途中でトラブルがあって、仲間ともはぐれちゃって……」

「冒険者……」

 

 どうやらこの少年はこの若さで世界を旅する剣士のようだ。

 多分きっと戦ったら強いのだろう。穏やかな顔つきだがよく見ると目の奥が笑っていない。

 間違いなくこちらを警戒していながらも、それを見事に隠している。

 だからこんなところに迷い込んでも傷一つ負っていないのだろう。

 それなら、もしかすると……


「そういうことなら納得したわ。よかったら私の家で休んでいかない? すぐ近くにあるの」

「えっ、いいんですか?」

「ええ、構わないわ」

「それは助かります! えっと……」

「アルテよ」

「アルテさんですね! ありがとうございます。僕はクロムといいます」

「クロムくんね。覚えたわ。さ、行きましょう」

「はい!」


 立ち話で済みそうなものでもなさそうなので、クロムと名乗った少年を家へ連れ帰ることにした。

 さっき彼は仲間がいると言っていたから、後で探さなければいけないわね。

 まあ、すぐに見つかるでしょう。ここは私の庭も同然なのだから。

 もし見つけたら丁重にお出迎えしなければね。

 何故なら――

 

 彼ならきっと、私の願いをかなえてくれる。

 根拠のない自信が、心の片隅に灯った。


 

いつも拙作をお楽しみいただきありがとうございます。


この度「持ち主を呪い殺す妖刀と一緒に追放されたけど、何故か使いこなして最強になってしまった件」が、コミカライズ(漫画化)される事になりました!


漫画版タイトルは「魔力0の落ちこぼれ、呪殺の妖刀に選ばれる。」となり、ゼノン編集部様より年明け1月2日から連載が開始されます。


よければぜひチェックしてみてください!


ゼノン編集部

https://comic-zenon.com/


作者 X(旧Twitter)

https://x.com/Akanenovel1

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