表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/77

エピローグ 旅立ち

 冥竜神を討ち取り、アリアの救出を成し遂げたクロム達だが、それを美談で終わらせるにはエルネメス王国の被害が大きすぎた。

 ルフラン達によって最低限の被害に抑えられたとはいえ、冥竜神が暴れまわったせいでいたるところが破壊されており、突然すぎる出来事だったが故に避難も間に合わず死傷者も多数出た。

 さらに王城も辛うじて原形をとどめているものの立て直しが必須なレベルで破壊しつくされており、復興には相当な時間がかかることが予想できた。

 まあもっとも、王城の件に関しては半分以上がクロムのせいなのだが……


「……さ、行こうかみんな」


 あの時はジークの音波攻撃に対抗するために強引に蒼気(ニール)の一部を引き出して攻撃したせいで、出力が大きくなり過ぎたのだ。

 故にこれは事故であると自分に言い聞かせ、責任を追及される前にさっさと国を出てしまおうとクロムはやや急ぎ目に支度を整えていた。

 

「結局ほとんどゆっくりできなかったわね」

「ふぁあ……ねむぃ……」

「まあ二度と戻ってこれないわけでもないし、その時はゆっくり観光しようよ」

「まあ、そうね。あなたはいいの? 一応その、別れの挨拶とか……」

「お気遣いありがとうございます。ですが元よりこの国で私のことを気にかけるような変わり者はロールスお兄様以外いませんので、大丈夫です。エセルの里の方々も――今私が行くと、きっと余計な気を使わせてしまいますから」

「あ……そう。ごめんなさい。余計なことを聞いたわ」

「いえ……それよりも、私! ちゃんと外の世界へ旅に出るのは初めてなんです。楽しみです!」


 エルネメス王国を発つにあたって、新たな仲間が二人も増えた。

 

 一人は冥竜神の魂こと、メイだ。

 あの後何故かそのまま放置されていた本体を美味しくいただき本来の力を取り戻したメイだったが、行く当てがなくて退屈だということでクロムについてくることになった。

 冥の魔力の補給も現状クロムからしかできないというのも理由の一つだったが、どうやら今までは気にも留めなかったヒトの生活に興味を持ったらしく、特に肉体の維持には必要のないはずだった食事に関しては、その美味しさから感動するレベルだったらしい。

 ちなみに本体を吸収したことでまた少し体が大きくなっているが、冥界にチカラの大半を置いてきているので見た目は大人の二歩手前といった程度の姿となっている。


 もう一人はクロム達が命懸けで救出した亡国の姫君、アリア。

 クロムが攫うと宣言したのである意味当然の流れではあったのだが、どうやら()()()()エルネメス王が此度の災害により亡くなってしまった事で、アリアを縛る呪いが解け、彼女は完全に自由の身となった。

 そして代理として玉座に着いたロールスによる、竜災を引き起こした首謀者としての国外追放宣言――という名の見送りを経てここにいる。

 アリアは幼い頃から窮屈な生活が苦手で、自由に旅をしてみたいという欲があったらしく、ロールス王子に託されてアリアを連れ出すことを告げた時はまるで子供のように喜んでいた。


 アリアを頼む。

 ロールス王子にかけられた言葉はその一言だけだった。

 だがその言葉には、本当は自分の手で何とかしてあげたかったが、結局何もしてやることが出来なかった無力な自分を責めるような、それでも救いの手が差し伸べられ、再び笑うことが出来るようになった義妹を祝福するような、言葉に出来ない思いが込められていた。

 それに対してクロムも一言だけ、任せてください。と、答えた。

 

 彼はこれから苦労することになるだろう。

 先王が残した負債と新たに生まれた戦禍の処理に追われることになる。

 しかし、いつかアリアが安心して帰れるような国に建て直して見せると、寝る間も惜しんで動いている。

 ならば、これ以上余所者がでしゃばる必要はない。


 クロム達を犯罪者として扱わない代わりに、英雄としても扱わない。

 それは互いに望んだ流れであり、異論はない。

 

 次なる目的地は太陽の国ソランディア。

 数千年にも渡って栄えている巨大国家だ。

 そしてクロムの微かな記憶では、妹のクロアの留学先であったはずだ。

 あわよくば彼女と再会できれば嬉しいな。

 そんな想いを抱きながら、竜と共に生きる国を旅立った。


 

本話をもって第2章「目覚めし邪竜と囚われの姫君」完結となります!

急ごしらえで連載開始してから完結まで約1年3ヶ月もかかってしまいましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

構想自体はずっと前から出来上がっていたのですが、なかなかまとまった時間が取れず、亀更新となってしまいましたが、更新するたびに応援やコメントをくださる方々のお陰で何とか続けることが出来ました。


妖刀使いは全8章構成を予定しており、第3章の構想もほぼほぼ仕上がっているのですが、他作品の更新や新連載にも挑戦したいと考えているため、勝手ながら一度更新を休ませていただこうと思います。

更新再開の目途が立ちましたらX(旧Twitter)や近況ノートなどでご報告させていただきますので、そちらのフォローも良ければお願いいたします。


最後に、もしまだ☆評価などをしていない方がいらっしゃいましたら、ぜひご協力よろしくお願いいたします!


ここまでお読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ