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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

森の奥で

作者: まめたん

童話風に。

後書きに7割の力を注いでしまった謎作品……。





おや、こんな辺鄙な所に客人だなんて珍しい。


何?迷ったのかい。


帰り道を教えてあげるから、お茶でも飲んでゆっくりしておいき。


まあまあ、そう言わずに。


年寄りの婆を慰めると思って少し付き合っておくれよ?



あんた達随分と若い様だけど、どんな仕事をしてるんだい?


おや。王立学園の生徒さんなんだ?


そう…お貴族様なんだね。


ほうほう。王子様もいるのかい。


此方は公爵様のご子息で此方は騎士団長のご子息なんだ。


それはまた凄い面子だね。


へぇ。そちらの男の子は平民?


親御さんが商会やってて優秀だったから入学出来た?


はぁ、婆には良く分からないけどさぞかし立派な事なんだろうね。



そっちの桃色の髪の可愛らしいお嬢さんは?


平民のお母さんと一緒に暮らしてたけど亡くなってしまって途方に暮れてたら、実はお父さんが男爵のお貴族様で迎えに来たんだね。


お母さんはお気の毒な事で……お悔やみ申し上げるよ。


え、気にしないで良い?


生きてたら貴族になんてなれなかったから丁度良い?


それは………まあ、そういう考え方もあるんだろうね。


人それぞれだからね。


色んな考え方があるんだろうさ。


そうなのかい、お嬢さんは此処に居る皆の光なんだね。



お嬢さん、まだ焼き菓子は沢山あるから落ち着いてお食べよ。


テーブルに零れてるよ。





ああ、そっちには行っちゃいけないよ。


大事な宝物がしまってあるからね。


こら、駄目だって!!


大切な預かりものだから、勝手に触っちゃいけない。




ん?随分と静かになったね。


綺麗な人形だろう?


まるで生きてる様だ。


驚いている様だけど、知ってる人に似てたりしたのかな?


顔色が悪い様だけど大丈夫かい?


動いたりはしないから安心おし。




この人形の由来が知りたいのかい?


とある男からの預かりものさ。


とても大切な宝物なんだそうだよ。


もう壊れてしまってるが、それでも何よりも大切なのだそうだ。




背の高い凛々しい顔つきの男のね、あまり喋らないが其れを差し引いてもとにかく男前さね。


あんた達みたいに高貴な身分のご子息だけれど色んな事情があって、ある貴族令嬢の従者として入学していてね。


とある学園に在籍してる男だ。


○○王立学園って知ってるかい?


ほぉ、あんた達も同じ名前の学園に通ってるんだ。


これはまた偶然もあったもんだ。





この人形が壊れる前は恋人同士で婚約者だったそうだ。


それぞれの親御さんだけが知っている、誰にも言えない秘密の婚約者だとも言っていた。


そして其れを悔やんでいると。





この二人は幼い頃に出会った。


男の身を守る為に密かに匿われた家の娘が、この人形なんだ。


二人はとても仲が良くてね。


何時も手を繋いで一緒に居たんだそうだ。


お転婆なお嬢様だったみたいでね。


何度も命を狙われた経験から笑わない子供だった男の手を引っ張って、あちこち駆け回っていたそうだよ。


木に登った時は流石に親御さんのカミナリが落ちたそうだけれどね、大抵の事は周囲の人間は暖かく見守っていたらしい。


男の事情を知っている皆が見守る中、己を高めながら彼らはひっそりと愛を育んでいた。


ずっと先の未来へと繋がる様に、少しずつ根回しをしながら。


今だけではなく先の先まで考えて行動する。


そういう男だ。



婚約者がいる事を隠していた事が、この人形を壊す事にも繋がったのだから皮肉な話さね。




最初にこの人形が壊れたのは何だったかねぇ。


そうだそうだ、事故を装った誰かに階段から突き落とされたのだった。


理由は何だったかねえ。


嗚呼そうだ、見初めて母親に頼んで婚約を申し込んだのに、父親に怒られた上に、向こうの家にも固辞されたんだった。


あの家の令嬢だけは駄目だと言われてたのに我慢しなかったから怒られるんだよ。


駄目だと言われるのを分かってたから母親に頼んだんだよ。


それで断られたら逆恨みだなんて本当に性質が悪いよね。


チンケな自尊心が傷付けられたから排除しようとしたんだよ。


申し込んだ奴の母親は隣国の王女だった女でね、国王に横恋慕した挙句に、元々の婚約者だったご令嬢を権力と脅しで追い落としたらしい。


戦争になってもいいのか〜〜〜ってね。


婚姻まで秒読みだったのにね。


当時王太子だった国王に出来る事は、ご令嬢にこれ以上危害が及ばない様に彼女の親御さんの所までこっそりと逃がす事だけだった。


ご令嬢の腹に子が居たとか居なかったとか噂もあったけど、どれが真実か分かったもんじゃないよね。


あの頃は国力は隣国の方が強かったみたいだからね。


今はどうだろう。


国王様頑張ったみたいだからね。


人柄が変わったみたいな苛烈な変貌を遂げたみたいだよ。


隣国が国で居られるのは後何年位なんだろうね。


栄枯盛衰。


形あるものはいつか壊れるのだから仕方ないのかも知れないね。


とにかく我儘と散財の話しか聞かない今の王妃から、元々の正しい王妃様に変わるのは国民は大歓迎だろうさ。


国王様は隣国の王女の息子に跡を継がせる気はさらさら無いらしいしね。


隣国の王女の息子は母親に似たのだろう、ちっとも国王様に似た所は無いからね。


どちらかと言えば隣国から付いてきた王女の護衛騎士によく似た顔立ちだと評判だけどね、側にいると似てくるものなのかも知れないね。


国王と隣国の王女は白い結婚だなんて噂もあるみたいだけれど噂は噂さね。


どちらにしても親が親なら子は子なんだろう。


略奪が好きな血統なのだろうさ。




男は犯人の息の掛かった者によって……とは言っても其れは教師だからね、権力に屈したとはいえ酷い話だ……人形の側を離れなければならなくなった。


勿論、1人になんてする訳は無い。


ちゃんと人形の学友に頼んでから側を離れたんだ。


だけどそれは罠だった。


人形の友人のご令嬢は犯人達の1人によって誑かされていたんだよ。


裏切る方も裏切る方だけど、乙女の純情を弄ぶだなんて酷いよね。


そうまでされたら1生徒である男には防ぎようもない話だよね。


そして犯罪は決行され、麗しい公爵家のご令嬢は物言わぬ骸に変えられたのさ。




あの男は最初は、人形を前に茫然としていた。


長い時間の自身喪失の後、この男を襲ったのは激しい悔恨。


毛髪を掻き乱しながら絶叫し、泣いていた。


それこそ血が吹き出そうな程の、荒々しい慟哭の叫びだった。



その声が、この婆の遠くなった耳にも聞こえたのさ。


だから手を貸してあげようと、この小屋に招待した。




婆に出来る事はほんの僅かな事。


壊れた人形の手直しをし、ほんの少しだけ時間を巻き戻してあげる。


婆にはその程度しか出来ないね。


それでもあの男は感謝していた。





二度目の破壊は、誰かの手によって校舎の窓から落とされたんだった。


こんなに綺麗な人形なのにね。


残酷な事をする輩もいるもんだ。


ただ気に入らなくて目障りとかいう理由だったかねぇ。


自分より身分が高くて綺麗過ぎるから気に入らないだなんて、婆には理解できないね。


自慢にしてた自分の桃色の髪より、淡い色彩のプラチナブロンドの方が羨ましかったみたいだよ。




ああ、お茶が温くなってしまったね。


お代わりはどうだい?


いらない?


お嬢さんはお菓子のお代わりは?


おやおや、お嬢さんもいらないのかい?


最近の若者は小食なんだね。



顔色がさっきより悪いようだけど、少し休んだ方が良くないかい?


いらない?


休んでおいた方が良いと思うけど、あんた達がそれで良いなら仕方ないね。





ああ、さっきの話しの続きが聞きたいんだね。




人形は何度も壊れた。


そしてその度に男は此処に来た。


どんなに時間を巻き戻しても、あの男の記憶は消えない。


他者に事情を話す言葉を封じられ、助けを求める行動が取れない。


そういう仕組みになってるからね。


一人で足掻いて、そしてどうする事も出来なくて、あの男の憎しみは段々と募っていった。




あの健全で賢くて誠実な男の内面が、段々と壊れていくのは婆から見ても哀れだった。


壊れても尚綺麗な人形にも憐憫が募る。


結局はどうなってもお似合いの二人なんだね。


あの男の愛情はずっと変わらなかったし、あの人形も壊れる寸前まで男の事を愛していたのだから。





「次で終わりにする」


つい先日此処に訪ねてきた時、あの男はそう言ったさね。



もう絶対に此処に来る事はない。


だからお別れを言いに来た。



そう言った男はやつれてはいたが、奇妙に穏やかな目をしていた。


真っ当な人間として接して対処出来ないのであれば、人としてのモラルを捨ててしまえば良い。


彼女さえ生きていれば、俺は人間で無くなっても構わない。


そう言い切った。




綺麗な人形と、その対になる男ともう二度と逢えなくなるのは寂しかったけど、理由が理由だから我慢しなきゃいけないね。


だから婆に出来る最大の餞別をあげたんだ。



あの男が戻った世界で破壊する、全てのモノは婆が引き取ってあげようと。


そうすれば、破壊されたモノはあの世界には存在しなくなる。


あの男が罪に問われる事もなかろう。


婆の手元に置いておけば、二度と悪さをする事も出来まい。


あの綺麗な人形と比べると、怖気がくる程の醜悪な人形だろうけど、暗い物置にでも仕舞い込んでしまえば見なくても良い。


少なくとも、あの一対の恋人たちの迷惑にはなるまい。



老婆心ながらそう決心したのさ。





さあ、お前達ももうお帰り。


手ぐすねひいて待ってる人が居るだろうさ。


なに?帰りたくない?


何を震えているんだい。


自分の撒いた種は自分で刈り取らなければならないだろう。


何度もチャンスを与えて貰って、それをことごとく潰してきたのはお前達だろう。


報いは受けないといけないね。




大丈夫、ちゃんと後で回収してあげるからね。


壊れた後だけど。




そんなに叫んだって泣いたって駄目だよ。


もう決まってしまったんだから。


ああ…あの男がやりやすい様に、此処に来た記憶は消してあげようね。


逃げたら駄目だからね。









おや、目が覚めたかい?


眠り込んでしまって、疲れてたのかも知れないね。


日が暮れる前に戻った方が良い。


ぼんやりとしてるけど帰り道は分かるかい?


なあに、この小屋の前の道を真っ直ぐ歩いていけば元来た道に戻れるさ。



気をつけてね。


無事に帰るんだよ。


お前達を待ってる人の為にね。













親が親なら子も子 ↓


隣国の王女+息子(托卵) VS 国王陛下+人形の婚約者(国王と元婚約者との間の愛息子)


設定を考えていたら国王陛下の執念深さにときめいた。

想像の中の陛下、隣国関係限定で何かめっちや腹黒くて残酷でネチっこかった。

愛する婚約者との結婚阻んだお前ら絶対に許さないマンだった。

押し負けて要求呑んだ前国王陛下も許して無いよ!後押しした側近もね!もいでも許されると思う!

そして時間は掛かっても目的を達成する為に色々と覚醒する男だった。

箍が外れたとか軽く壊れたとも言う。


まずは市井に噂(真実)を流して王太子を隣国に売った王様と言われて、国王の毛根と精神に軽くダメージを与えます。国の評判を落としてしまったけど、後からちゃ〜んと上げるからね!そこら辺は考えてあるから!

分かってる、もう甘えは許されない。欲を言うならもう少し早く目覚めたかった。国王滅する覚悟が無かった甘ちゃんな自分はあの時死んだ。

ふふ、評判が戻った時、愛する妻(元婚約者)と愛しい息子が側に居れる様に頑張ろうそうしよう。

結婚式?パレード含めてお通夜みたいだったけど知りませんがな。国民の皆さん、私の事を売られていく仔牛みたいな悲愴な顔で見てたけど心配ありがとう。

大丈夫、私これから色々と頑張るからね!

結婚式も税金だから国民に還元出来る策も考えてあるから。

結婚してしまえばこっちのモンと相手は思ってるみたいだけど、ソレ、此方の台詞だから!


この人、初夜に『お前を愛する事は無い』とか絶対に言ってる。



ママン……ママンもあの頃私は若かった。

と、色々と成長しててコイツらお似合いだよな……の、愛する陛下との婚姻邪魔してワタクシを苛め抜いたお前ら何年経とうと牙を磨いて絶対復讐してやるウーマンになった。

何度か暗殺者を送られて愛息子を自分ちの領地に置いておくのが危険だからと、親の友人のオウチに匿われる事になってちょっと発狂。

当然感謝してるし信頼出来る相手だけどソレはソレ、コレはコレ。

抱っこしたいじゃん、お世話したいじゃん、成長見たいじゃんと、家族と使用人と一緒に大泣きに泣いた。

私がもっともっと強かったら、陛下も息子も側に居た!と色々と覚醒して愛の戦士と化した。

家族使用人領民もヤバい目覚めをして愛の戦士増量中。

特にお父上は本来なら滅多に会うことも出来ない立場の孫を抱っこし放題でお顔ゆるゆる。じぃじと呼ばれてご満悦な所を暗殺者なんて輩を送り込んだせいで手放さなければならなくて阿修羅化。うちの孫に何してくれてんじゃい!とキレた。孫パワーを糧に限界を超える。いつか陛下に娘と孫を返す時までどんな手を使っても守るガーディアン爺となる。ちなみにその妻はもっと怖い。

シスコン兄さんは目からビームを出してシスコン弟は空を飛んだ。


そんな二人の子供だったら、絶望の中、無意識に魔女呼び出して味方に付けて個人的には対価無し(魔女的には後から手に入るお人形複数隣国含む)で契約結ぶなんてこと普通にするだろうなと思いました(まる)

血は争えないを地で行く家族だった。


要するに寝た子を起こした隣国と桃髪娘が悪い。

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