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機体名って何?

 寄り道をしたとは言っても、早く起きてしまったので思ったより早く整備や開発等を行うステーションに到着してしまった。

 人型の前まで来ると、人型の調整がまだ終わっていなかった。

「この人型は、色々とテストする事が多い。その為、整備はギリギリまで行っている。」

 神出鬼没の白衣の男が、いつの間にか私の後ろに立っていた。

「今回の整備で、関節部の強化、空戦用装備、それと動力炉の交換。少し待っていれば、すぐに終わる。」

 白衣の男は、動力炉の交換と簡単に言っていたけれど、昨日の人型でも十分に空での活動も可能なぐらいのスペックは持っている。

 それなのに、動力炉を交換するのには何か目的があるとしか思えない。

「動力炉の交換だが、昨日以上にパワーが出る。本来なら軍のテストパイロットにお願いしたい所だったのだが、一向に人型に慣れない。折角の開発も、全然進まない。だから、君にやってもらうことにした。」

 つまり、もう一つの開発実験も私は同時進行させられるという事。

「ちなみに、新しい動力炉はAlternativeオルタナティブ Energyエナジー Crystalクリスタル。略称は、AECエース。」

 オルタナティブは、二者択一とか代わり。

 エナジーは、エネルギーと言えばわかる。

 クリスタルは、結晶。

 直訳すると、何かの代替品のエネルギー結晶という事になる。

 代替品となるので、今使っている動力源の代替品と考えると、パワーは落ちる筈。

 けれど、白衣の男は『昨日以上にパワーが出る。』と言っていた事から、私の知らない動力源の代替品という事になる。

「AECは、とある場所で発見回収された未知の結晶を元に作り出された。未知の結晶は、小さな物ではあるが莫大なエネルギーを持っていた。それを疑似的に再現したのが、AEC。」

 ここに来た時点で何となく分かっていたけど、私は良い実験材料みたいだ。

「本来は、軍のテストパイロットが行うのだが、人型にうまく乗りこなす事が出来ないばかりか、反応速度が遅すぎる。アレで、シミュレータ訓練でトップスリーと言うのだから、期待外れでしかなかった。でも、君が来て、使えない奴ら全員追い返す口実が出来たから、こちらとしては大変助かったがね。」

 白衣の男はそう言いながら、不敵に微笑む。

 どういう経緯かは良く分からないが、私がここに来た為に軍のテストパイロットの3人は、お役御免となってしまったらしい。

「そう言えば、この人型達に型式番号とか機体名はあるのですか?」

 私の質問に、白衣の男は目を輝かせ始める。

 どうやら私は、地雷を踏みぬいたようだ。

「型式番号はある。機体名も、もちろんある。しかしながら、宇宙空間で作業する為に開発された作業用マシーンが箱型である為、分かりやすく呼びやすくする為に人型と呼ばれている。しかしながら、開発時の……。」

「ちょ、ちょっと待ってください。」

「ここからが、いいところなのだが……。」

「き、機体名だけ、教えてください。」

「分かった。この話は、次の機会にすることにしよう。機体名は、スノードロップ、ヘイロン、真紅。」

 人型の3機とも色に因んだ機体名になっているようだ。

 スノードロップは花の名前で、白い花がとても綺麗だったと記憶している。

 ヘイロンは、黒龍の中国語読み。

 真紅は、色の名前。

 白、黒、紅の3色。

「という事は、私が乗ったのは真紅か……。」

 紅は、赤と言うより赤紫に近い色。

 中でも、真紅は正真の紅色。

「どうやら、すべての作業が完了したようだ。今日も、よろしく頼む。」

 作業が終わり、真紅は昨日とは姿が変わっていた。

 変わっていない所は、頭部と特徴的なカラーリングぐらい。

 空戦用にスラスターの数が増えている。

 それに伴ってか、排熱ダクトも増設されている。

 一番の変化は、背中に付けられた大型スラスターウイング。

 大気圏内で、飛行を可能にする装備なのだろう。

「リトリス作業員は、作業用マシーンでの解体作業する際に何を使っていた。」

 私が作業用マシーンで、解体作業を行う際の装備は大体決まってる。

「ヒートチェーンソー、パイルバンカー、プラズマワイヤーアンカーの基礎3点セット。」

 私が答えたのは、作業用マシーンに標準搭載されている3点セット。

 ヒートチェーンソーは、解体作業のメインとして使われる切断道具。

 パイルバンカーは、ヒートチェーンソーの熱暴走を避ける為、数か所の穴あけに使う道具。

 プラズマワイヤーアンカーは、ワイヤーアンカーとして作業用マシーンを固定も可能ではあるけど、主な使い方は生きている回路をショートさせて焼き切る為に使う道具。

「何だ、ビーム刃は使わないのか?」

 ビーム刃は、高密度粒子の刃。

 ビーム刃は、何でも良く切れて使い勝手はいいけれど、エネルギー消費は多いのと、個人的に好きになれない為、使ってない。

「便利ですが、個人的に好きではないので使いません。」

「なるほど。防衛機能が生きてる場合、迎撃の為に射撃武器を許可されていると思うのだが、君は一発の威力が高く弾数の少ないバズーカ系やスナイパーライフル系と、一発の威力は低く弾数が多いハンドガン系やライフル系、ガトリング系など、どちらを選ぶ。それと、実弾とビームどっちだ。」

 質問の内容的に、真紅に持たせる武装を白衣の男は考えているようだ。

 ビーム刃は高密度粒子だけど、射撃武器のビームは、荷電粒子の銃となっている。

「状況に応じた装備が、良いと思います。」

「なるほど、状況に応じた装備……。」

 白衣の男は、何かを考えている。

「分かった。あとの事は昨日同様、オペレーターに任せてある。指示に従ってテストを行ってくれ。」

 白衣の男はそう言い残し、整備作業を終えたメカニックを連れて、様々なパーツが入ったコンテナを物色し始めた。

 私は白衣の男に軽く頭を下げ、真紅に乗り込んだ。

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