月の事件
珍しく、夢を見た。
月で、事故があった日の夢。
その日は珍しく、レディウスと作業場所が違った。
お互い作業場所に向かう際、私は手を振り、レディウスはそれを見て微笑んで別れた。
この日の私の現場は、偶然なのか必然なのか、月が見える作業場所だった。
作業がちょうどいい区切りだったので、作業を中断して食事を食べる為に、月が見えるように有線式作業用マシーンをステーションに固定した。
私は、持ってきた食事を取り出し、月を眺めていた。
私が食事を頬張っていると、月から眩しい光が見えた。
それが爆発だと知ったのは、作業を追えて部屋に戻る際に同僚達が話しているのを聞いた時だった。
それと同時に、朝に手を振って別れたレディウスが亡くなった事も知った。
当初は事故を疑っていたが、宇宙への移住計画反対派が爆破予告を出していたことがのちに判明した。
反対派の実行役は、月の爆発で死亡。
反対派の何人かも拘束されて、月の爆発事故は事件として処理された。
反対派は、月で使用された無線式作業用マシーンの試作0型数機に爆弾を積んでいた事が分かり、試作0型は全機解体することになった。
そして、完成間近の1型が急ピッチで作られ配備された。
月で亡くなった人は、宇宙葬として空の棺桶に花束と当人の名前が書かれた紙が入れられ、地球へ送り出された。
地球へ送り出されたのは、魂だけでも母星である地球に帰って欲しいと言う願いで行われた。
私は、宇宙葬に出る事が出来なかった。
葬儀の日、私は悲しさを忘れる為、休憩も忘れて作業をし続けた。
これが夢だと分かっていても、あの日の事を思い出すのは辛い。
あの時の私は、レディウスを弔ってあげる事も出来なかった。
だから、少しだけ痛みを受け入れる事が出来るようになった今、夢と言う形で思い出しているのかもしれない。