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○○王子と婚約者の私

パスワード王子と婚約者の私

掲載日:2023/12/31

応募の都合上……本文は千文字で終わりです!

 私の婚約者は王子様。

 王位継承順位は、そこそこ低い。

 ご公務とかも、本当にそこそこ。

 殿下はいつも暇そうで、私はそんな殿下が心配で。

 私の足の向く先。

 暇人の根城。

 殿下の研究室。


「でんかーっ!」

「やあ婚約者殿」

「うわっ!」


 扉を開けると、目の前に殿下の顔があった。

 めちゃくちゃびっくりした。


「心臓が止まるかと……。今日も婚約者の私が様子を見に来ましたが——」

「パスワードだ」

「はっ?」


 突然何を言い出すの?


「今日から入室時に本人確認を行う」

「はぁ」

「まずは合い言葉を決める。言い当てられれば本人だと分かる」

「あの、殿下」


 突然過ぎて意味不明だ。


「なぜ急にそんなことを? 何か問題でもありましたか?」


 殿下の頭にでも問題————


「問題はない。だが問題が起きてからでは遅い。セキュリティー強化だ」

「それで合い言葉ですか」

「うむ。それで、まずパスワードは容易に推測されないことが重要だ」


 確かに、他人が簡単に当てられるようでは意味がない。


「それとパスワードは秘密だ。家族や親友であっても知られてはならない」


 なんだかまだ心臓がどきどきしてる。

 心臓発作の予兆だろうか。


「では殿下と私だけの秘密ですね」


 殿下が確認するのだから、当然そうなる。

 二人だけの秘密……胸がキュンキュンするやつだ!


「いや、俺にも言ってはならない」

「えっ」


 それでどうやって確認するの!?


「ここに『ハッシュ関数』がある」


 殿下がノートを取り出した。

 何やら複雑な数式が書かれている。


「これでパスワードの『ハッシュ値』を求める」


 何それ……。


「婚約者殿は、自分でハッシュ値を計算して、俺に教えてくれ」

「はぁ」

「同じパスワードなら同じハッシュ値だ。一致すれば本人だと分かる」


 正直……めんどくさっ!


「あの、殿下」

「なんだ、婚約者殿」


 どきどきしていた心臓は、すっかり落ち着いてしまった。

 心臓発作のおそれはなさそうだ。


「顔パスでは駄目ですか?」

「それではセキュリティー強化にならないだろう」


 そんなのどうでもいいよ。


「殿下は、パスワードなどに頼らなければ、私を見分けられませんか」

「いや、そんなことはない」

「でしたら! 面倒なことはやめましょう! やめやめ!」

「しかしなぁ……」


 ぐずぐず言う殿下。

 私はもういいだろうと思ったけど、諦められない殿下は。


「あっ、そうだ、生体認証だ」


 言って私の手を取る。

 これって……!


「まずは指紋を採る! 一致すれば本人だと分かる!」


 この殿下……本人で間違いない。

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