猫の王
核爆弾とかやめた方がいいと思うなマジで。
思いっきり被曝するし、見た目が悪いからな。そんなことをして世界を敵に回す必要はない。
何しろ僕はねこちゃんなので。どちらかと言えば、家の軒先でお日様に当たっていたいし、どちらかと言えば、戦闘などしたくない。
戦闘で失われるカロリーや血液を、農業に向けた方がよっぽど未来があると思わないか?
そして俺はレベルが低い。皆より低いし、なんなら戦闘向きじゃなさ過ぎて、人にも簡単に負ける。
しかも人生にはリセットボタンがない。だから自分の行動には責任が伴うし、回りの人生も気を付けなきゃ行けない。
乾燥ワカメを頬張る。バリバリと音を立てながら食べるが何も好きで食べているわけではない。放射線を受けるときにヨウ素剤を飲むのには、甲状腺をヨウ素で一杯にする意味があるらしい。甲状腺があらかじめ一杯になっていれば、そこに放射線が貯まるよちが無くなるため、命が長くなると言うことらしい。
で、そんな薬、手に入らないから、同じヨウ素が沢山含まれる乾燥ワカメを食べているわけだが、かなり見た目が悪い。
台所に立った半裸のオッサンがお腹をかきながら黒い乾燥ワカメを口に押し込んでいる様を想像いただければそれで正しいのだった。
今、大変な時期だ。もうすぐ、3月からはジャガイモの作付が始まる。
我が家は金持ちではなかったため、小さな畑を数枚所有していた。
今目下の問題は、汚染された土の除去と、そこで育てる作物の選定。これはジャガイモにすることにした。勿論、同じ面積あたりにとれる量が多いこと、我が家に種芋の備蓄があったこと、米よりも手間がかからず、ジャガイモの木を皆が知らないことが選定条件となった。
しばらく農作業をすると言ったら、残ったのは玲子さんと拾ってきた犬だけになった。
食べさせる人間が減ったのはありがたい。彼らとのコミュニケーションが日々の課題だったからな。めんどくさいことこの上なし。必要なときに必要な人とコミュニケーションをとれればいい。特に技術者は余っていないがそこにいることは分かったので、今は近くにいないことが大事だ。
各々、自分で生き残ってくれ。俺は安全なひとりでいきるからな。
あー顎痒い。
手が埋まっているので足でかいていたら玲子さんに抱きつかれた。
心臓が止まるかと思った。
俺は人が嫌いだ。
あと触られるのも嫌いだ。
人間はチクチクした服を着ているし、平気でお腹を触ってくる。
その感触はお腹を虫がはい回っている感じがするし、何より気持ちが悪い。
思いっきり噛んだ。
柔らかい肉の感触がする。玲子さんの手である。遠慮なしに噛んだのに、彼女はまだ離していなかった。
パンチもする。
パコッと乾いた音を骨が立てた。
「はーープリチーだよぉ。かわちぃねぇ。キュルキュルだにぇ。おそといかないでぇ♥️」
「飯作んないと生きていけんでしょうが」
「……ヤダ」
ヤダじゃねぇ。おまえは紐か!とも思ったが言わず、全裸男性に抱きついている変人を引きずって玄関まで出る。
最近靴を作った。靴のサイズは驚異の8センチである。猫は足の先っぽしか地面につけないのでこれでいいサイズなのだ。
包まれる感触が嫌で、サンダル形式のできるだけ毛に触らないような形をとった。
ちなみに、家の回りに猫が住み着いている。昔から野良猫が住み着く家だったが、現在その頭数は20を越え、歴代最高になっている。勝手に繁殖した。
デカい猫の縄張りにいると守ってもらえると思ったらしい。あと、我が家は生ゴミをぼっちに捨てるのでそれを食べに来ているのだ。
げんきんなやつらで外に出ると足に絡み付いて、喉をごろごろならしついてくるので、大行進になる。猫の王様って感じ。




