悪犬
その、体が猫のやつはどうしても人目を引く。だからその中身を知る人間は少ない。
あまりにも残酷で、あまりにも冷酷で、目的を達成するためにはどんな手段も厭わない。
どんな手段も厭わないとは言葉の通り、彼は目的を達成するため、自分の腕を切り落とさなければならなければ淡々とそれを行うのだった。
それは冷酷さに思えるだろう。だが、違う。
実験を受けた結果、自分の望まない姿になった僕は、その猫のまっすぐな目に惚れて、それこそ、ストーカーのように彼を愛した。
同然彼には友達がいて、あるいは、恋人がいて、しかもそれらは普通の人たちだった。
僕をみて悲鳴を上げた人たち。
僕が負けるじゃないか。僕は僕が醜いことをしっている。
医者に切り刻まれた体はどこもボロボロでまだ血がにじむ傷跡がところ狭しと並んでいる。
腐り始めた皮膚は所々色が変わってまるで同じ人間の皮膚ではないようだった。
ここにいてはいけない人間なのだ。
でも僕は、みんなと違うから、力で欲しいものを取ることができる。
「ねえ、こいつらぶっ殺していい?」
「は?」
猫さんのその目。全く感情の見えない目は、一瞬の間を置いて悲しみに揺れる。どうして一瞬遅れると思う?
この子は、ビックリして遅れたんじゃない。悲しむ演技をするために一瞬遅れたのだ。
その証拠に、もふもふと下手が僕の首もとにのびた。
この汚い肌に、何のためらいもなく。
それが嬉しいのだった。
嬉しくて涙が出るのだった。
醜い僕に素手で触れようとする人は始めてだった。
「悪い人。君がきてくれて嬉しいですよ。ほんとに」
彼は天使みたいに笑って、本当に裏がなさそうな顔をして……。
「でも、その性根の腐った思い付きを口にするのが我慢ならない。気を遣ってくれ。人を拷問するのは趣味じゃないんだ」
彼がそのあと二人っきりで僕にしたことを、僕は一生忘れないだろう。とても話せないが、僕は裸で床に崩れ落ち、涙を流しながら許しを乞うた。笑顔を我慢して。
「ゆる……してぇ」
「もう二度と俺にやらせないで下さい。仲間をこういう風に扱うのは好きじゃないです」
「……はい」
ゾクゾクする。あの可愛い顔をしてあんなことを……。
「あ、それからもふもふがあった方がいいですね。何色になりたいとかあります?」
なにを言っているのだろうと思った。手術をするために全身の毛を剃られた僕には恐らく完璧な毛は生えないと思われた。
「なに、言ってるの?」
「だから、モフモフの毛皮を取り繕うと言っています」
?
まだ僕は知らなかったのだ。彼は技術者という人で、彼を含めここには3人もそういうことができる人がいたのだ。
僕たちは何か物が欲しいときお店で買う。じゃあ、その物を作ってる人はどんな人なんだろう?
彼らだった。
彼らが用意した贈り物は、僕のこれからの人生を変える。
それを見た普通の人たちの反応を早く教えて上げたい!!僕は人気者になったんだ。




