肉
「人は優秀だと思うんだよね。だって必要な栄養素が全部とれちゃうんだからサ。食べるだけで良いんだからサ!」
このワンコロ獣人が楽しそうに振り返って言った言葉は、勿論、こっちの反応を見ているのだった。
彼は怖いのだ。手に入れたものを失うのが。
だからわざと変なことを言ってこちらの反応を見ているのだった。
自分を出しても良いだろうか。相手はドン引きしないだろうか? と、彼は心配なのである。
それが痛いほど良く分かった。
糞重い彼女かよ!って感じなのだが、彼にとっては本当に大事なことなのだった。
それが手に取るように分かっていて、それを租借し、頭で理解した上で、望んだ回答は用意してやらない。
得意なことっていうのは、金をもらってするものだ。
男に興味はない。不必要に相手を喜ばせるのはいけない。マジで気を付けないと襲われるぜ。だって俺、猫だもん。チラチラ見やがってテメーの視線分かってるからな!!!
オパーイを見られる女子の気分が良く分かるのだった。しんどいぜぇ。
「耳嗅がせろ」
「やだよ」
「あーくっさ♥️ 耳のなか、焼きたてのパンみたいな香りすっぞ? ちゃんと洗ってる? 耳触ってやだねぇ?」
おいこいつどうにかしろ。ほんとやだ。
「お前どうしかしてる」
「どうもしてない」
こいつ頭が良いのか狂ってるのかどっちだ?
「日本は前からおかしかった。弱い人を食い物にして、金持ちばかりが良い暮らしをしやがる。ネコさん。この世界に足りなかったのはなんだと思う?」
「……。」
「明確な死だよ。横に転がっているような死がないと人は生きている実感を得られないんだ」
二人でとぼとぼと拠点に帰って、なんと説明しようかと頭を悩ませていると、行きなり悲鳴が聞こえた。
耳をつんざくような高音。
喉を潰すような絶叫が、空気を震わせている。
「ネコチャン!!、こっちきて早く!!!」
「あ、玲子さん、ただいまです」
「早くこっち!!!!」
何をそんなに慌てるのだろうか。あれか。犬嫌いか?
「大丈夫ですよ。噛みませんよ(多分)」
優しく彼の肩をぺちぺちとする。ん?ぺちぺち?音が変だ。毛が生えているはずなのに。
「……ねえ、ネコチャン、それ、何に見えてるの?」
「え……?」
「私にはそれが、肉の塊にしか見えない」




