一筋の光
無事に発電機ができると、それを足掛かりにして溶接、グラインダー、サンダー等の電動工具を仕入れた。
さらに三つの発電機を作動させたところで行動に移した。
なぜ、ほとんどの人は成功できないのか。それはひとえに、他人と同じ行動をしているからにすぎない。平々凡々な道を歩んでいると、この先にあるのは皆と同じゴールなのだ。だから他人と違うものを見たかったら、同じことをしていちゃいけない。
それに俺は、悪者になることを決めたのだ。
夜中、この茨城は、こうなる前から街灯が少なく暗かったが、さらに人が減って真っ暗闇となっていた。さらにそれは茨城を通り越して、日本中で起きていた。
その状況で、だ、俺は、サーチライトを空に向けて、まるで戦時下に爆撃機を探す防衛隊よろしく空を照らした。
空には雲があった。照らされた雲はまるで稲光のように瞬き、地面には真昼のような明かりが反射して点るのだった。
「ネコチャンが壊れた……」
「玲子さん。あなたは可愛いけど、ちょっと想像力が足りていないです。この真っ暗な世界で、この光はなんに見えますか?」
「……はあ?」
「ぼくはね、飛んで火に入る夏の虫を探しているんです」
もう、皆頭が固い!誰一人として賛同しなかった!どうなってるんだよ!!
計器がおかしくなった飛行機が何を目印にして空を飛ぶのか? 自らの位置を失った船は何を目指して進むというのか。
彼らは、大海原で溺れているのだ。たとえ一本の藁であってもすがり付いて体に巻き付けて生きようとするのだ。
この、真っ暗な、月明かりすら満足に届かない荒廃した世界で彼らは、光にすがる。それは文字通りに生き残るための一筋の光なのだ。
それは僅かに十分ほどだったと思う。
ゴーーッという轟音を響かせて、頭の上を飛行機が通った。
かなり低い。回りが皆真っ暗になるほどだった。
彼らに地面が見えているか?
見えていないのである。
何も見えないから必死に高度を下げたのだ。
それはエンジンが四つ付いていて、プロペラで推進力を生む飛行機である。C130と呼ばれるその機体はゆっくりと肩をもたげるようにしてロール、翼をするようにして土手沿いの道に降りた。
「ガハハハハ!!蛾をつろうとしたら、鷹が釣れた!!」
急いでポンチョを着て走った。
誰かに会うときは第一印象が大事だ。笑顔を忘れずに、爪は研いだ?戦闘準備はオーケー?よっし、行ってみようか。




