罠の中
俺は、食料調達のため農協を囮に使うことを思い付いた。
派手に焚き火をし、その煙でもって敵の注意を集めることに成功した。これは大変なことであった。相手はダブルオーバックやスラッグという巨大で高威力な弾を使う、銃をもったハンターで、しかも霊長類最高の頭脳をもった人間たるその姿は、まさに屈強そのものだった。
事実、中には敷地内に入ることをためらい、躊躇する人もあった。しかし、女さんが米を炊く匂いや機嫌良く奏でる鼻歌が聞こえ始めると、皆こぞってこれに殺到した。
俺は、ハンターたち全員が敷地に入ったと判断したところで重い鉄扉とシャッターを下ろした。まさにこの時、ギロチンの刃が狩人の首に下ろされたのである。
ハンターたちの行動は切羽詰まってのことだったろう。何しろ、数年も荒廃しているために食料がなかく、そこにお米の匂いがしたのだった。
そこからの攻撃は一方的だった。換気扇のダクトに竈の煙を流していった。彼らはほとんどなすすべなく死んでいった。
二酸化炭素が、一酸化炭素が、命を刈り取っていく。
ベテランのハンターたちに補給を任されていたらしい若者たちは焦り、わめき散らしていた。農協では、あるはずのない事が起きていた。
沢山の命を刈り取っていた側のハンターたちが今は燻され、あるいは、自らの銃をくわえて自殺する音が響いているのだった。
頼みとする鉄砲は皆壁の向こうだった。
ついにここで彼らの旅は終わりとなったのである。まさに、ギロチンに切断されるように、最も大事な頭が体と泣き別れしたことによって彼らは判断力と行動力がたちきられてしまったのだ。
その絶妙な、闘志を失ったタイミングで、俺が颯爽と登場する。
「命が惜しかったら食い物飲み物全部だしな!」とまぁ、こういう風に言うわけである。
彼らの恐怖たるや、想像もできない。




