74話 勝利を祝おう
邪神率いる魔王軍との決戦にて、僕らは勝利した。またまた宮殿で宴会です。いつも宴会をしているような気がするよ?
「魔王って、美味しいんだなぁ〜」
「この魚、簡単に食べられちゃうよ」
「ウマウマ」
「あたちの出番がなかったでしゅ」
皆が倒した魔王たちをもぐもぐ食べている。大きなタコさんに、食べ甲斐のある魚、刀みたいな身体だけど、唐揚げとかにするととっても美味しい魚。
魔王はたくさんいたこともあり、大漁だったんだ。
「あの邪神は良い人だったね! あんなにたくさんの魔王を連れてくるなんて」
とっても良い人だった。魔王の魔石のおかげで、たくさんのTPが稼げちゃった。お大尽というやつだよ。天使のおじさんは事象の地平線に捨てて置いたから、きっと帰ってくるのに時間がかかるだろう。
『アウタールフ島』
ルルイエ王国
資金300兆6976億5678万TP
毎月維持費:14億2797万TP
多種鉱石埋蔵量91125637
レベル100/999
土壌レベル100/999
魔汚染レベル104/150
人口:528240人
設置施設
豪族宮殿、TP変換神殿、樵小屋、製材所、大工工房、港レベル100、船ドッグレベル100、軍学校レベル100、兵舎レベル100、学校レベル100、鉄鉱山レベル100、鍛冶工房、多種工場、醸造所、魔導発電所、魔法大学、魔法研究所
一気にレベルアップして嬉しい。もう喜んでレベル上げにポチポチしてるよ。
「そうですね。でも、意外と強かったです。閣下の最終形態と戦える戦闘力を持っていたとは……。ここの管理者に命じた者は恐ろしく強い可能性があります」
ダゴン焼きをほふほふと食べながらルフさんが難しい顔になる。
「そういえば、あのおっさん気になることを言ってたわね。ルフはニートだとか。嘘なの?」
「そこは本当なの? と尋ねてくださいよ。その聞き方だと、まるで私がニートなのが本当みたいじゃないですか!」
シュリがお刺身を食べながら、ルフさんへと尋ねると、ルフさんは口を尖らして抗議する。でも、その言葉を僕は知らないなぁ。
「ニートってなぁに?」
「働いたら死ぬという病気にかかった人たちです。日々リハビリに励み、ネトゲーをやったり、漫画を読んだり、親の仕事を手伝います」
辛そうな顔になり、教えてくれるルフさん。
「あんた、息を吐くようにヨグに嘘を教えないでよねっ!」
怒ったシュリがダゴン焼きを奪って、パクリと食べてしまう。
「それよりも、もっと気になるワードがあったじゃないですか。それを気にしてくださいよ、閣下」
「気になることといえば、量産世界って、言ってたね。なにそれ?」
料理に手を伸ばしながら尋ねると、段ボール箱から出してもらったねむちゃんが、手をぶんぶん振る。
「はーい、あたち知ってましゅよ!」
「教えて、ねむちゃん」
覚えたことって、皆に話したくなる年頃だもんね。ねむちゃんは僕の言葉にエヘヘとはにかんでてれてれと照れる。
「えとね、うんとね、ある人がね、世界を手軽に作れるアイテムを売り始めたの。創造神の真似事をしたい神様にうりまちた!」
褒めて褒めてと、もじもじして教えてくれる。凄いやと頭を撫でてあげると、嬉しそうにぽてぽてと歩き始める。
「せかいー、世界はいりませんかー。お手軽につくれましゅよ〜。あ、お客さん、かってみましゅか、一丁500億でしゅよって」
ぱぷぅとラッパを吹く真似をして、ぽてぽて歩いて、売り子の真似をするねむちゃん。
「おー、ねむちゃん物知りだね。僕知らなかったや」
「平行世界の文通しているお友だちが教えてくれたの! この間、一緒にお菓子を食べたよ!」
なんと知り合いだったらしい。平行世界にもお友だちがいるなんて、ねむちゃんはコミュニケーション能力がとても高いね。
「そこで納得しないでください。とはいえ……そうなんです。今って、昔からの天然世界はもう一杯で創造神の枠は予約待ちなんですよ。修行して神になった存在とかは永遠に下っ端かよとがっかりするんです。なので、ある人間が世界創造の素を売り始めました」
「人間が創造の素を売り始めたの!?」
「その人間はちょっぴり特殊でして。アホなので、安値で売りまくり、新世界がポコポコ作られました」
「むきゃー。あほじゃないもん!」
驚きの裏舞台だ。なぜかねむちゃんが怒って、ルフさんに噛み付いているけど、まぁ、いっか。
「その一つがこの世界ですね。天然世界と違うのは、創造神は元からの自分の力しか使えないところです。なので、創造するのに物凄い苦労をするんです。なので、部下に任せて自分は他のことをします」
「それが、あのおじさんだったのかぁ。なるほどね」
あれれ、とするとおじさんを倒したら、怒るんじゃないの?
「神様って、まともな性格はいないので、怒るかもしれません。通常、部下には自分の一欠片のエネルギーしか与えていないはず。それなのに、あれだけの力を持っていたということは……」
「出会ったことのない強い人ってことだね! おじさんと互角の戦いしかできなかった僕だと負けるかも!」
目を煌めかせて立ち上がる。ふんすふんすと鼻息荒くこれからのことに期待しちゃう。もしかして、もしかしなくても、次は大ピンチ?
気づくと、宴会場は静まり返っていた。シーンとして僕たちの話が聞かれちゃってたらしい、しまった、秘密にしておかないといけなかったのに!
予想通りに皆は盛り上がった。
「うぉぉぉ! あれが一欠片なのか! それは凄いぞ!」
「そうだな! 俺らが戦ったことのないレベルの敵だぞ」
「これはあれだな」
「修行だな!」
皆の心が一つになった瞬間だった。僕レベルの部下を持つボスって、とんでもない力を持っているに違いない。
「宴会をしている暇じゃねぇ!」
「そうだな、修行をしないと!」
「燃えてきたぁ〜」
そうして、あっという間に皆は飛び出ていった。きっとこれから修行をするんだろう。
なので、僕もかけだそうとする。僕も修行したい!
「まぁまぁ、1日やそこらでパワーアップをするわけでもないですし、ここは勝利を祝いましょう」
「そうでしゅ。きっとラスボスの人間はとっても強いと思うのでしゅよ。ゆっくりと修行をすれば良いでしゅ」
「たぶん今程度の力だと、相手にたんこぶも作れないはずでしゅ」
ルフさんとねむちゃんとねむちゃんがお刺身を食べながら、引き止めてくる。なるほど、たしかにそうだ。ちょっと興奮しすぎたかも。
「それにレベル100を超えそうなので、次元研究もできます。そろそろ『日本』へと行けますよ?」
「ええっ! 研究できるようになったんだ!」
『日本』に行くことができる! なんて素晴らしい。修行とご飯の美味しい世界だ。
「『魔法研究所』をたくさん建設すれば良いのかな?」
研究所をたくさん作れば、研究は進むはず!
「なぜ、腕がブレる速さでボタンを連打しているんですかぁ!」
なぜか絶叫するルフさん。一個千億TPだから、連打しても大丈夫。
「早く『日本』に行きたくて」
早く研究してほしい。それで『日本』に行くんだ。ワクワクの笑顔で伝えると、ルフさんは不思議そうな顔になる。
「あの………閣下。閣下はどの『日本』に行きたいのですか?」
「どの『日本』?」
どういう意味だろ? まるで『日本』がたくさんあるような……!? あぁっ、そういうことか。
なぜかねむちゃんを見てて、ピンと来た。
「たくさんの平行世界があるってこと?」
「そのとおりです、閣下。『日本』は無数の平行世界の中にあります。どのような世界に行きたいのか決めて向かわないといけません」
「食っちゃ寝して、修行がたくさんできる所かな。それと僕たちと切磋琢磨してくれる戦士の多いところ!」
「ほうほう。それならば……たくさんありますね。それでは平和で料理も美味しくて、ライバルがいる所にしましょうか。そのレベルの世界はいくつか絞れますので」
「はぁい」
こくんと、素直に頷く。それは楽しみだね!
「それじゃ、研究時の次元転移先は、平和な『日本』にしておきます。平和だけど、強者がいるところっと」
ポチポチとボタンを押して準備をしてくれるルフさん。それを見ながら僕は思う。
僕って、そういう設定系はあまりやったことがない。というか、ボタン連打しかしていないような気がするよ。
「まぁ、あまり気にしない方が良いですよ。設定関係って好きなプレイヤーと嫌いなプレイヤーがいるんですよ」
「ルフさんに任せました!」
ルフさんが設定した方が楽で良いよね。
「で、準備ができたのですから、これからどうします? のんべんだらりと、研究が終わるまで修行していますか?」
確かめてくるルフさんの顔をジッと見つめる。どうしようかなぁ、たしかにこれからの決戦のために修行は必要だけど……。
「北大陸と南大陸との間にある魔溜まりを破壊して、魔王を倒してまわろうよ。『海洋大同盟』が作れたから、今度は南大陸との貿易が復活すれば、もっと貿易は活発になると思うんだ」
これからはドラゴエルの妨害も入らないと思うんだ。魔王の発生って、あの人が設定していたんだよね?
「たしかに。でも、砂糖や香辛料の値段は多少安くなります………あぁ、それ以上に魔石の確保が目的ですか。それとルルイエ島の場所を誤魔化すためですね」
「うん、北大陸だけだと、魔石が枯渇しちゃうからね」
「そうですね。その連打を止めれば枯渇することはなくなると思うのですが」
半眼になって、僕の連打を責めるルフさん。だって、研究所がたくさん必要だから仕方ないんだ。
「それじゃ、また航海に出るのねっ! 仕方ないからあたしも手伝ってあげるわっ!」
修行に行かずに料理を食べていたシュリが僕の背中に抱きついてくる。
「もちろん、ペレもついていく」
「あたちもいくでしゅ!」
「魔王を倒したら、南大陸に向かいましょう」
「たくさんお菓子を持っていくでりゅ」
「新しい世界が待っているからね!」
皆が声をかけてくるので、片手を天井に翳して頷く。
「ヨグの大航海はまだまだ続くよ!」
さて、南大陸にはなにが待ってるかな? 今からとっても楽しみだよ!
一旦完結とします。読んで頂きありがとうございました。
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人形遣いの悪役令嬢を投稿しています。よろしかったらお読みください。




