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ヨグの大航海 〜孤島の戦闘民族は国造りをしますっ  作者: バッド
2章 驚異にして脅威の国の始まり

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46話 米を溢れさせよう

 ガルドン王国の王都、ガルドンポートはかつてない景気の良さに潤っていた。


 埠頭には各地の船が訪れており、巨大な貿易港であり、多くの船が停泊できるように作られているはずの港には船がひしめき合い、停泊できない船が沖合いで待機している。


 少し前までは空だった倉庫街は、どの倉庫も品物で満ち溢れて、道路の隅に蹲っていた仕事のない難民たちは今や荷運びや宿の仕事などに就き、もはや仕事のない者などどこにもいない。


 近海を航海する船が、船員を探して怒気を伴った雄叫びのように、叫び声をあげて人員不足を解消しようと募集している。


 近海から商売のチャンスだとやって来た商人たちは空荷でくるわけではないために、多くの売り物を持ってきており、様々な品物が出回る。


 市場は肉や野菜、果物が店前に並び、パンの香りが漂い、押し合いへし合いするように、多くの人々が行き交い道を歩くのが苦労していた。


「いらっしゃい、いらっしゃい、ここの砂糖は本物のルルイエ王国の砂糖だよ! 混ぜ物一切なし!」


 痩せぎすで怪し気な雰囲気を醸し出す屋台の店主が麻袋を見せて、客が疑わしそうに顔を歪めて眺めている。


「本当かい? 小麦粉でも混ぜてるんじゃないだろうな? 安すぎるぞ」


「そんなこたぁないよ。あんた、最近来た口だろ? ルルイエ王国はなぁ、溢れんばかりの砂糖を売りに来たから、今は価格がだいぶ下がってるのさ。だから屋台の俺でも仕入れることができたんだよ」


 市場に開いている屋台で、麻袋に詰まっている白い粉を砂糖だよと売っている店主に、疑わしそうに客が粉を見て、口元をへの字に変える。


「嘘をつけ。ルルイエ王国はこれまでよりも運んできた砂糖はたしかに多いが、他の品物を持ってきたからそんなには価値は下がっていないはずだ!」


「おっと、裏の伝手ってやつがあってね……」


「衛兵さん、あいつです! 小麦粉なのに砂糖って言って雑な売り方してる人!」


「やべえ! 粉隠れの術!」


「あっ、こら、まて! ゲフンゲフン、こいつっ!」


 槍を持った衛兵が客らしき男に連れられて通りの角から現れて、店主は素早く小麦粉をばら撒くとあっという間に逃げる。粉まみれになって、衛兵が捕まえようと駆け出して、大騒ぎにもなっていたりもする。どうやら偽の品物を売る怪しげな者たちも増えてきたようだ。


 一ヶ月前にはなかった活気がそこにはあった。人々の熱気は街を活性化させて、多くの人々で賑わっていた。


 だが────。


 少しばかり問題も発生していたのである。


           ◇


 僕たちはガルドン王国に再びやって来た。準備は万全で、大量のお米と飯盒、認識票。そして、最後に僕とシュリ専用のアウターアーマーも持ってきていた。


 そして、今は屋敷のお庭で実践をしてもらっている。


「うーん、えっと、ヨグ王子様。これがお湯を吹き出さなくなれば完成なんですよね?」


「うん、飯盒からお湯が吹きこぼれなくなったら出来上がりだね」


 庭には竈がずらりと並び、ぱちぱちと薪が燃えて、20個近い飯盒が置いてある。熱せられた飯盒はブクブクとお湯を蓋から零れ出しており、ただいまご飯を炊いている最中だ。


 ここには僕、シュリ、ルフさん、ペレさん、よーこちゃん、そして大航海ギルドに雇い入れた難民の少女だ。両親や他の人たちも雇ったけど、今はギルドの建物にいる。


 難民の少女の名前はイータさん。前髪パッツンで垂れ目の気弱そうなおとなしめの少女だ。でも、本当は結構思い切った行動をとれる強い人だ。


 今はしかめっ面でじっと飯盒を見つめている。余所見をすると飯盒がなくなるとばかりに熱心なので、ほんわかしちゃう。


 飯盒はグツグツと煮えており、段々と泡が減っていく。そろそろ出来上がる頃だと思う。僕も飯盒で炊くのは始めてなんだけどね。


「これって美味しいのかしら?」


「飯盒で炊いたご飯は無敵。ペレが太鼓判を押す。お焦げが最高の美味。白米の味を楽しむためにカレーは論外。せっかく炊いた白米の味がわからなくなるのに、なぜカレーにするのかわからない。ここはご飯のお供にするべき。そもそも飯盒で炊くという行動は希少なことであり、普段は食べられないのに、全てを台無しにする選択肢はどうなのか、学校のセンスがが疑われる」


「ぺ、ペレ、いつもと違い随分と饒舌ね」


 シュリが小首を傾げて疑問を口にすると、ふんふんと熱気を伴わせて、ペレが熱弁する。その瞳には炎が見えて、いつもとは全然違う。


 その姿に圧されてシュリが後退ると、当然といった顔でいち早く零れているお湯が止まった飯盒を手に取るペレさん。


 そして、見たこともない真剣な表情で宝箱を開けるかのように、大事そうにパカリと蓋を開けた。モワッと湯気がたち、艷やかなお米が姿を表す。


「できた。ここは慎重に慎重にご飯のお供を選ぶべき」


「あ、僕知ってるよ。美味しんガールでご飯のお供を食べる話があったんだ。えっと……ネギ味噌だっけ?」


「あれはたしかに美味しそうだった。しかしご飯をメインにするのは間違っている。あくまでもサブにして、メインはご飯が味を引き立てるもの……それは」


「それは?」


「お味噌汁! 今日のご飯は白米とお味噌汁で決定!」


 クワッと目を開き、ペレさんは竈の一つにかけてあった鍋の蓋を開く。そこにはワカメのお味噌汁が入っていた。お味噌汁の食欲を沸き起こらせる良い匂いに、クゥと僕たちのお腹が鳴る。


「いただく」


 用意しておいたテーブルにつくと、ペレさんはマイ箸を構えて、飯盒の蓋に白米をよそると、おもむろに食べ始めるのであった。


 お米を口に放り込み、モキュモキュごくんと食べると、ペレさんは感動したのか飯盒の蓋を伝説の聖剣のように持ち上げて叫ぶ。


「うまいよ〜」


 なんだか口からビームを吐くかのように見えるペレさんだった。美味しそうでなによりだね。


 ………でも、ご飯のお供ってお味噌汁だけなのかな?


「あれだけ熱弁しておいて、結局はねこまんまとか………まぁ、美味しんですけどね」


「ねこまんま美味しいでしゅ! あたちは昆布の佃煮で食べましゅけど。ねむちゃんが採ってきた昆布でしゅよ」


 ルフさんが呆れて、よーこちゃんが自分も食べると、てこてこと飯盒に近づき、その一つを手に取る。


 そして、肩にかけたポシェットから、瓶を取り出すと、蓋を開けてご飯の上に乗せる。器用に箸を使って食べると幸せそうな笑みになるのであった。


「佃煮はご飯泥棒ですからね。私にもください」


「あたしも食べるわよっ」


 ルフさんとシュリも食べ始める。なんか食べ方としてあってるのかなぁと、すこし疑問だけど、まぁいっか。


「むむ、これは良いお米ですね。とても甘いです」


「お米が良い。いくらでも食べられる」


「なかなかの味ね。あたしにも佃煮頂戴」


「たくさんありゅから、いくらでも食べてください」


 わいわいと賑やかにしながら、美味しそうに食べるシュリたち。白米ってサイコーだよね!


 でもイータさんの反応がみたい。イータさんへと顔を向けると、皆が食べ始めたので、自分も食べようと見様見真似で蓋にご飯をよそう。箸は使えないのでスプーンだ。


「えっと、それじゃあ私も食べますね」


「うん、どうぞ」


 周りの人たちが美味しそうに食べているので、美味しいのだろうと、期待に満ちた顔でパクリ。


 モキュモキュと咀嚼して、うーんと眉根を寄せる。予想していた味と違っちゃった模様。


「えっと美味しいです」


 作り笑いをして、とっても微妙な表情だ。どうやら美味しくないらしい。


「気にしないで、正直なところを教えてほしいんだ。このお米を売り出す予定だからね」


 ニコニコと笑顔で安心してもらう。お米を売るにあたり、この国の人たちの本当の感想を教えてほしいんだ。


 僕を見て、もじもじとしてイータは感想を口にする。


「えっと………あの……甘くないし、えっと、味がなくて柔らかくて、匂いも少し苦手かなぁと……」


「む、この炊きたての匂いを嫌がるとは、イータはお米の良さがわかっていない!」


 正直な感想を言うイータへと、ペレさんが険しい表情でずずいと詰め寄る。その勢いに涙目となるイータさん。ペレさんのお米好きなのは驚いたけど、少しイータさんが可哀想なので、間に入って制止する。


「ペレさん、たぶんイータさんの反応が普通なんだよ。予想していたでしょ」


「むぅ………たしかにそのとおりだった。けれども、それはそれ、これはこれ。お米の美味しさをアピールする」


「たしかに『な、なんだこの味はっ! 初めて食べましたけど美味しいです』と、手を震わせて、滂沱の涙を流し、感動して感激して夢中になって白米を食べてほしかったところです」


 不満なペレさんが頬をぷっくりと膨らませて、ルフさんも同意して、よくわからないことを口にする。そんなに感激する美味しさじゃないでしょ。毎日食べることのできる素朴な味だしね。


 でも匂いも駄目かぁ。予想していたけど、一番困るパターンだ。


 どうしよう。これだとお米が売れないよ。炊いたお米は皆に配ろうと思っていたけど、止めておいた方が良いかなぁ。


 うむぅと困る僕に、シュリが白米を頬張りながら箸を振り意見を口にしてくれる。


「カレー粉と一緒に国に売るしかないんじゃない? ほら、軍に売り込む作戦よ」


「あぁ、たしかにそのとおりだけど、正直なところ売れるか微妙だよ。カレー粉は高いしね」


 香辛料は高い価値があるんだよね。日本にカレーが流行った方法は使えない。


「あの……このお米っていうものは安いんですか?」


「うん、安いよ。だから売れると思ったんだけどなぁ」


 おずおずと言ってくるイータさんへと、肩を落としながら答えると、それならばと意見を口にする。


「それなら売れるかもしれません。小麦粉って、今は高いんです。あんまり美味しくないですけど安ければ国は買うと思います」


 あ、やっぱり予想通りになっているんだ。小麦粉が足りなくなってるのね。


「一週間前に北部へとスルドル王子が軍を率いて向かっていったので」


「え!? もう軍を編成したの!」


 ちょっと予想外だ。……なにがあったんだろ? どうやらお城に行かないといけないみたいだ。


 大量のお米を在庫にしないためにもね!


 飯盒のお米は全部おにぎりにして配ったよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに知り合いのチリ人は白米をそのままで食えず、マヨネーズとソースかけて食ってました。まったく白米に対する冒涜だな!(普通に美味しかったです)
[一言] どんな匂いでも慣れないと微妙あるある。 くさやとかに比べたら全然普通だけど。
[良い点]  のん気に美食家ごっこしてるヨグくんたちを他所にガルドン王国は既に内乱勃発のヤバい展開に(^皿^;)この温度差よ♪ [気になる点]  ご飯のお供に“汁ぶっかけ飯(一部地域名:ねこまんま)”…
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