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ヨグの大航海 〜孤島の戦闘民族は国造りをしますっ  作者: バッド
1章 航海の始まり

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16話 再度の出航をしよう

 ボードに表記されるのはこんな感じ。


『ルフ島』

ルルイエ王国

資金5678万TP

毎月維持費:1597万TP

多種鉱石埋蔵量99972637

レベル30/999

土壌レベル30/999

魔汚染レベル76/100

人口:30240人

設置施設

豪族宮殿、TP変換神殿、樵小屋、製材所、大工工房、港レベル10、船ドッグレベル10、軍学校レベル10、兵舎レベル10、学校レベル10、鉄鉱山レベル10、鍛冶工房、多種工場、醸造所、酒場レベル10、レストランレベル10、市場レベル10


 半年間でかなりの設備が整った。島には畑が大きく広がって、森林がちょっと切り開かれたし、多くの家屋が建てられた。


 誰も住んでいないのは寂しいので、虚像がチラホラと暮らしている。特徴としては醸造所を作ったところと、多種工場を作ったところだ。そして、物を取引する市場ができたところかな。


 これにより、ガラスも作れるようになり、家に窓ガラスがついたし、作ったお酒をガラス瓶に入れることもできた。服も家具も色々な物が増えたのである。


 賑やかな市場は歩くだけで楽しい。客を呼び込む店員の声や、値引き交渉をするお客、何を買おうかしらと迷う親子連れとか、多くの人々が行き交い活気があるから、自然とウキウキしてしまう。


 まぁ、殆どはコアさんと虚像なんだけどね。それでも嬉しいものは嬉しいのだ。

 

 僕は埠頭に置かれている木箱の上に座って、ふんふんと鼻歌交じりにボードを見て満足していた。だいぶ国として育ってきたんじゃないかなぁ。


「ヨグ。そろそろ出航だって。乗船の時間よっ!」


「あぁ、了解。もうそんな時間なんだ」


 ボードを消すと、声のした方に顔を向ける。そこには海軍士官服を着たシュリが立っていた。シワ一つない青の制服を着たシュリは褐色肌の艷やかな肌に映えて、とってもかっこいい。


 スラリとした肢体には、制服がよく似合っていて、活力という塊が封じ込められているようで、見ていて元気を分けてもらえる気がする。


 気をつけないといけないのは、躍動感溢れる少女はすぐに制服をボロボロにしちゃうところだから、予備は大量に作ってあった。


 軍学校を卒業し、学校も卒業したので、少し理知的に見える。実際に礼儀作法はしっかりと合格点をとったのだ。


 ちなみに学校まで卒業できたのは僕とシュリだけだった。父さんたちは礼儀作法で合格できていない。ちょっと難しいらしい。というか、修行をするか、酒を飲むか、狩りにばかり行っているせいだと思う。僕とシュリは毎日3時間も勉強したのだ。とっても大変だったよ。


 テストの時に、セッセとお酒を差し入れしていたルフさんも少し関係があるかもしれないけどね。


 前回の出航条件から変わっており、学校卒業も加わったために、僕とシュリだけが海軍入りしたのだ。


 他国に侮られないようにとのリスターの忠告から決めた。たしかに荒っぽいだけだと、僕たちの国が下に見られるからね。


 港には点検の終えた精霊艦隊と帆船が停泊していた。ザザンと波に揺れて、帆船はバタバタと帆をはためかせている。3隻の帆船を建造したのだ。マストが5本の巨大艦である。慣熟航行も終わり、出航を待つだけで、水兵たちが忙しく働いていた。


 帆船を横目に精霊艦へと二人でぴょんと飛び乗る。僅かな揺れもなく、高い安定感がある戦艦だなぁ。


「お待ちしておりました。陛下。シュリ様」


「お久しぶりです。また、お願いしますね」


「練習航行以来ね。よろしくお願いします!」


 甲板にて艦長が出迎えてくれて、シュリが頭を下げる。こういうところはきっちりしている幼馴染なのだ。


「あ、これ差し入れよ。サンドイッチの詰め合わせね」


「ありがとうございます、シュリ様」


 しかも差し入れを用意する良い子だ。既に練習として乗ったことがあるので、慣れたものである。シュリは基本気立ての良い子なんだけど……。


「ちょっとテロップおろしてくださいよ、テロップ!」


「ルフを見たのはあれが最後だったわね……」


「誰がボケろと言ったんですか! 私が登れないじゃないですか!」


 埠頭でぴょんぴょんジャンプするルフさんに空を見上げて悲しげな顔になるシュリ。まぁ、今のはルフさんが悪いかもね、うん。本当の名前ってなんだっけ? タラップ?


 まぁ、お笑い芸人は放っておいて、ブリッジに行こうかな。


 ブリッジは以前のように綺麗に掃除されており、僕は提督席に座る。


「もぉ、さっさと飛び乗りなさいよね」


「そろそろ私の力を理解しましたよね? ジャンプだけで、戦艦の甲板まで飛び乗れる脚力は自分はありません」


 結局引き上げて上げたらしく、二人で言い合いながら入ってくる。苦笑しながら、デスクのモニターをタッチして、艦内の前面モニターを表示させる。


 精霊艦隊以外に、5本マストの巨大帆船が停泊しているのが映し出された。慣熟航行は終わっているが、風頼りの古いタイプなので、何度見ても沈没しないか不安に感じてしまう艦だよね。


「今回は、あの帆船をフォローしながら航行するので、皆よろしくお願いしますね」


 提督帽を被り直して、真剣な顔でお願いする。あの帆船はダミーのために用意したんだけど、運ぶのが大変そうなんだ。持ち上げて運ぶことも考えたけど、壊れそうなのでやめました。


「だいたい三週間は航行に必要かと思われますミャン。壊れないように細心の注意が」


「むむ、とても可愛らしいペットですね、陛下。私が艦内ではしっかりとお世話をします。さぁ、私の頭の上にお乗りください」


 最後まで言えずに、リスターを見た少女オペレーターが豹みたいに掴みかかり、サッと風のように自分の席に戻っていった。リスター大人気だね。ジタバタと暴れるリスターを絶対に離さないように、尻尾を掴んでいたりします。


 頭の上に乗せてご満悦な少女オペレーターはおいておいて、作戦内容を確認する。伊達に半年間勉強してきたわけではないんだよ。


「壊れないように気をつけるのが、今回の第一ミッションだから」


 第一目標は壊さずに、前回発見した島へと向かう。


 第二目標は、ガルドン王国へと帆船に乗り換えて訪問する。


 こちらの技術力を見せないためだ。精霊艦隊は、レベルが高すぎて、帆船と技術格差がありすぎるからね。


「御先祖様の忠告がなければ、油断してたか、慢心していたかも。でも、見えない力に気をつけないといけないからなぁ」


 数や経験、そして魔法の力とまだ見ぬ他の王国は、隠されたカードをたくさん持っている。どちらがカードをどれくらい隠しておけるかが勝負となるだろう。


 ガルドン王国だけではなく、他の王国もあるなら、警戒しすぎて悪いことはない。


「うーん、たしかに戦闘民族を作った間抜けな御先祖様ですが、言っていることは間違いありません。自分もこの世界のことはほとんど知りませんからね。孤島に住んでる封印されていた方が良かった戦闘民族とかいるかもしれませんからね」


「丁寧な物言いで、私たちをディスらないでよね。そのために礼儀作法を学んだし。意外と苦労したのよっ!」


 ルフさんが頬に指をつけて小首を傾げると、シュリが空いた椅子に座って嘆息する。たしかに勉強で一番苦労したのが礼儀作法だったけど………。


「上品な所作なら、問題ないですぜ。だって他国も同じ礼儀作法なんかあるわけないですからね」


 操舵士さんが、ケラケラと笑いながら口を挟む。


「ええっ! そういえばそうねっ! それじゃアタシたちの苦労は無駄だったの?」


「でも、上品な所作って、結局礼儀作法を覚えていないとできないし、無駄じゃないと思うよ」


 やっぱリ予想通りの反応を見せるシュリへと慰めて座り直す。


「では出航しますので、全艦に指示を出してください」


「了解です、それでは抜錨せよ。目標ルルイエ第一補給港!」


 僕の指示に頷き、艦長がブリッジに声を響かせる。


「あゆはむあむさー。全艦しゅつけむき」


「了解。出航しますぜ!」


 サンドイッチを頬張っていた幼女オペレーターが全艦へと連絡をして、操舵士さんが楽しそうに口角を釣り上げてレバーを倒すのであった。


          ◇


 結局、17日目にようやく補給基地へと到達した。難しい航行ではなかった。嵐は精霊艦が感知できたし、魔物も一匹も出てこなかったので、平和そのものだったからだ。


「陛下、やはり何者かが侵入したようです」


「そうですか……ここはルルイエ王国だって伝えたのになぁ」


 とはいえ、なにもないかと問われれば、そうではない。


 水兵コアさんたちが、島に上陸した後に調査したんだけど、明らかに人のいた気配が残っていた。


 焚き火をしたのだろう、僅かに不自然な跡や小屋へと入り込んで調べたのだろう足跡があったのだ。


「まぁ、立て札を立てていたわけではないですし。本当にここに人がいるのかを確認しに来たのでしょう」


「ここで暮らしていたら、第一村人発見よねっ!」


 ルフさんの言うとおりだ。それに小屋には何もない。家具どころか竈もない小屋だからね……中に入った人もさぞかしがっかりしただろう。


 少し残念そうにするシュリが、埃の積もった箇所を鋭い目つきで確認する。人差し指で埃を掬い、足跡のある部分と見比べて、僕へと顔を向けてくる。


「ざっと2ヶ月は暮らしていたみたい。立ち去ったのは一ヶ月ぐらい前よ」


「きっとここが補給基地になっているか、確認しに来たんだミャン。結構長い間暮らしていたから、ゴミも溜まってるミャー」


 少女オペレーターに抱えられたリスターが、小屋の脇に積み重なっているゴミを見て教えてくれる。僕も見てみるが、たしかにそんな感じだった。


「特には小屋は荒らされた気配はない。それにガルドン王国の兵士が常駐もしていないということは、僕らに配慮したんだ」


 顎に手をあてて、この状況を推測する。近海で他国に取られた補給港だとすれば、普通なら黙ってはいない。軍学校でも学んだんだよね。自国に近い重要拠点は絶対に確保するようにって。


「結構離れているから、重要拠点と思わなかったんじゃない? それに私たちは待っても来なかったし」


「半年間の期間を空けたのが良かったようだよね。すぐに訪れたら面倒くさいことになっていたかも」


 戦略、戦術は大切だと軍学校の先生コアさんは教えてくれたけど、こういう細かいところまで考える必要があるということかぁ。


「それじゃ予定どおり着替えてから帆船で出発しよう」


「アイアイサー!」


 制服は脱いで、用意しておいた服に着替えないとね。他国ってどんなところだろう。ワクワクするや!


           ◇


「ところで、少女オペレーターさんはいつまでついてくるの?」


「転職します。オペレーター兼リスターさん係です」


「はぁ………」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字の報告です >>テロップおろしてくださいよ →タラップ [一言] お父さん達も無理やりついてきたら良かったのに
[良い点]  他者を侮らぬ慎重な判断で動き、充分に隠れ蓑なアンダーストーリーも準備良し!(^皿^;)ただ読者視点のメタい眺めからはなろうテンプレの「石橋を叩いて叩いて叩き崩し石橋の横に新たに4車線規模…
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