15話 将軍をスカウトしよう
酒場をレベルアップさせて、街のレストランに変えた。酒場は『レストランレベル10』と『酒場レベル10』にレベルアップ先があったから、150店舗を半分ずつ分けてレベルアップさせました。
そして、僕とシュリ、ルフさんはジュースを飲みながら、光る画面を眺めている。
『将軍』はダウンロードコンテンツにもあった。きっとチートな性能のユニットなんだろうね。
一覧には様々なタイプのユニットが表示されていた。意外なことに人間タイプではないのも多い。機械人形タイプや動物タイプ、植物タイプに不定形タイプもあった。これは多すぎて迷うパターンだ。
どうしようかなぁ……。
「ここは女の子にしませんか? ダウンロードコンテンツのボーナスなので、通常は島内のレベル相応しかスカウトできませんが、いきなりレベル100の将軍をスカウトできます」
説明の時は凛々しいルフさんが女の子タイプを薦めてくるけど、シュリが僕の肩に乱暴に顎を乗せて口を挟んでくる。サラサラの髪の毛があたってこそばゆい。
「このタコの頭をした将軍にしない、ヨグ? 隣にいると頼りになりそうよ」
そして、ろくでもない将軍を薦めてくる幼馴染である。
「頼りになるというか、邪悪にしか見えないけどね」
いきなり出会った人に攻撃されそうである。不定形生物はフイルターしておこうかな。
とはいえ色々とあるが、表記に疑問がある。これどうやって見るの?
『武力レベル』、『知力レベル』、『魅力レベル』としか表記がない。なんとなくはわかるけどね。
「見たままです。『武力レベル』は力、魔力などが高い猛将タイプ、『知力レベル』は知性、内政力などが高い文官タイプ、『魅力レベル』は外交、軍の統率力などに関係する外交官タイプですね」
「なんだ、『魅力レベル』は美しさとか可愛さじゃないのね」
僕の手を握ってコンローラーを動かしながら、女キャラをフィルターさせているシュリが意外だという顔になる。たしかに『魅力』というから同じことを考えていたよ。
「それだと全然役立たずになるじゃないですか。ゲームだと劉備はイラネ、関羽と張飛だけで良いやと、辺境に劉備は捨てられるパターンですよ」
「なんとなく劉備さんの可哀相な立ち位置はわかったよ。ということは、軍を率いるには『武力』と『魅力』の両方が必要なんだね。でもレベルがいまいちわからないんだけど?」
コテリと首を傾げて疑問を口にする。レベル表記っていまいちピンと来ないんだよね。
ルフさんは、僕の質問になるほどと頷くと、レストラン内を見渡す。そして、立ち上がると親子連れに声をかけて、ジュースを飲んでいる5歳の幼女を連れてきた。南に住んでるねむちゃんだ。
「では、一般的な平均武力がどれくらいのレベルかをお見せしましょう」
何をするのかなとねむちゃんはルフさんの顔を見上げている。ルフさんは頭に手を添えると小さく呟く。
『解析』
ねむ
武力レベル:86
知力レベル:1
魅力レベル:392
固有スキル:『天元頑丈』※防御力がパッシブで100倍になる
「は、やめて。他の人を探しますね」
すぐに表記された画面を消すと、ねむちゃんを親御さんの元に戻して、親子連れを探して今度は赤ん坊を連れてきた。
だぁだぁと嬉しそうに手を伸ばす赤ん坊へと意外にも慣れているのか、優しく抱っこをして、『解析』を使用する。
赤ん坊
武力:レベル15
知力:レベル1
魅力:レベル82
固有スキル:『漫画召喚』※こち鶴を全巻召喚可能
「このように普通の平均な武力レベルは高くて15程度なんです。ですが、将軍はレベル100なんです。素晴らしいと思いませんか?」
「うん、素晴らしいね。固有スキルって意識しなかったけど、実は生まれた時から持ってるんだね!」
意外だよ。『外なる柱』に触れて覚えるんじゃないんだ。
「聞いたことのない漫画だから、この子は当たりのスキルねっ! 漫画召喚できないかしら?」
赤ん坊のぷにぷにほっぺをつついて、シュリが言うけど、意識して使うには『外なる柱』に触れないと駄目な予感がするよ。
「そっちじゃなくて、武力レベルですよ、閣下。ちなみに自分の武力レベル5です」
「赤ん坊のレベルを見せられてもわからないよ? ルフさんは赤ん坊以下ということ?」
「ツッコミにもう少し優しさをください。まぁ、自分のか弱さを理解してもらえれば幸いです。ちやほやしてくださいね? 優しくしてくださいね? これからは赤ん坊よりも優しく扱ってくださいね?」
どうやら自分のか弱さを教えるためだった模様。フフンと胸を張って嬉しそうだ。赤ん坊って、無理じゃないかなぁ。シュリがにやりと笑ってるし。
「とはいえ、武力は役に立たないことがわかったから、知力か魅力だけど……知力かな? 僕の仲間には内政とかが得意な人はいないし」
皆、ヒャッハーと魔物狩りに行っちゃうしね。基本は脳筋なんだ。魔法使えないし。
魔法が使えないか弱い僕たちでも、外の世界でやっていける知恵が欲しいんだ。これからはいきあたりばったりでの行動はしたくない。
一覧を見ていくと、意外なことに知力100はいない。最高でレベル99だ。たぶん平均的にレベルを振り分けられているからだろう。
選択は結構難しいな、これ。
「とすると……これかなぁ?」
一つのキャラを選択する。この子は『知力』レベル100だ。迷わずにポチリと選択する。
僕の目の前に白銀の魔法陣が描かれていく。複雑なる文字が描かれていき、複雑なる幾何学模様が作られると、パアッと光る。
白銀の粒子が魔法陣から吹き出して、魔法陣の中心に集まっていくと、一つの形を作っていく。
そして、光がおさまったら、そこには僕が選んだキャラがちょこんと座っていた。
「ミャアはリスターというみゃん。王様、今後ともよろしくみゃんみゃん」
そこには白銀のもふもふな毛皮を持ち、紅いルビーを額につけているリスがいた。手乗りができる小さな動物だ。
リスター
武力:レベル54
知力:レベル100
魅力:レベル82
固有スキル:『風操作』
くしくしと前脚で顔を洗うリスターの姿はとっても可愛らしい。鼻をヒクヒクと動かして、尻尾をぶんぶん振ってくる。
「キャー、この子可愛らしいわ! ヨグの新しい秘書に相応しいわねっ」
「ナチュラルに私を首にしないでください。とはいえ、リスターとはなかなか良い選択です。この子は頭の良いキャラですからね」
リスターをシュリが目を輝かせて抱き上げると、そのもふもふなお腹に頬を押し付ける。たしかに可愛らしい将軍だよね。ルフさんも太鼓判を押してくれるし、問題はなさそうで、胸をなでおろす。
これでも少し不安だったんだ。コーメーと、どちらにしようか迷ったけど、リスターで良かったかな。
シュリの手から逃れると、リスターは風を纏わせて空を飛ぶと、僕の肩にちょこんと乗る。おぉ、とってももふもふだ。
「王様、リスターがこれからは縁の下の力持ちとして、お支えするミャア。ミャアはミャアミャアとお手伝いするミャア」
「よろしくリスター。僕の名前はヨグだよ。これからは頼りにさせてもらうね」
人差し指を差し出すと、前脚で掴んできてフリフリと振ってくる。何、この生き物。可愛すぎるよ!
だが、可愛らしいのは見た目だけのようで、目を細めるとリスターはこれからの展望を口にしてくる。
「ミャアの献策その1。まずは半年間は国作りに邁進するミャア」
「なんで? このまま出航じゃ駄目なの?」
「前回他国と交渉した時から、時間が経っていないのは不味いミャア。近くに国があると悟られる可能性があるミャンよ。航路が完成すればひっきりなしに新たなる船がおとずれてもおかしくないけど、初めての交易から時間が経っていないのはおかしいミャン」
なるほど、確かにそのとおりだ。御先祖様も、島の位置がバレないようにと強く忠告していた。
「それに、まだまだ王様は教育が足りないミャア。ミャアは『学校』の設立を求めるミャン。そこで礼儀作法や帝王学を学ぶミャン」
「わかったよ。それで半年間?」
「人口ももっと増やすミャン。半年間あれば、島内レベルは30までは上げられるはず。国力を上げて虚像だけでも貿易とかをできるようにするのミャン。レベル30までは簡単に上げられるのが、このゲームの特徴ミャンね。せめて3万人は人口が欲しいと具申するミャア」
ふむふむ。それならば戦闘民族の僕の仲間たちも軍学校を卒業できるだろうし、良い案だと思う。それに、その間に色々と施設も作れるだろう。
今度は砂糖や胡椒じゃなくて、二次産業的な物を取引したい。僕の国が侮れないようにしないとね。
「この子、ルフよりも役に立つんじゃない? 随分と計画的だし、秘書はもういらないんじゃないかしら?」
「それは役割が違うからですよ。わかってないですね! 私はヘルプ的な存在なんです。痒いところに手が届く美人のお姉さん的な存在。わかります?」
ムキーとシュリへと噛み付くように抗議するルフさん。シュリはニヒヒと笑っているので、からかっているのだろう。
「それじゃ、『学校』を作るんだね?」
「はい。『学校』ができれば高等技術を扱える人ができるので服や小物など様々な物を作る『多種工場』や『魔法技術』が手に入ったあとの『魔法大学』にすんなりと入学できますミャ。国家の地力を作るのは必要ミャンミャン」
「ガーン! ちょっとネタバレをしないでくださいよ。それは私が後々でドヤ顔で説明する予定だったんですから!」
「ルフよりも役に立つリスターミャン」
「どうやら新たなる敵が現れたようですね! ちょえー!」
スンスンとリスターが鼻を鳴らして、説明をしてくれると、ルフさんが怒って飛びかかった。リスターはチョロチョロと駆け出して、ルフさんの手を逃れる。
ちょっと待ちなさいと、ルフさんが追いかけていき、レストランを飛び出して行った。あの調子だと、捕まえることはできなさそうだけど、まぁいっか。
「それじゃ、施設を作っていこうかなぁ」
「一緒の学校に通うのね! 少し楽しみねっ!」
熱の入った瞳で見てくるシュリの頭を撫でながら、微笑み返す。たしかに学校は楽しみだ。帝王学とかどういう勉強なんだろうね。
僕は新たなる施設に期待で目を輝かして、ボードを開くのであった。
◇
………そして、半年間が経過した。
 




