まさかの11回目
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「初めましてましてッ、この度は子爵家のご令嬢様との縁談を賜り、恐悦至極でございます!!」
お見合い当日、我が伯爵家に足を運んだ今回のお相手は、大変に緊張されていた。
なんだかおかしな敬語で話し、落ち着かない様子で付き添いの両親をチラチラと見やる。
その両親さえも、普段関わることのない貴族とのやり取り、それもお見合いの席でどう振る舞えば良いかわからないようで冷や汗をかき、目を白黒とさせていた。
事前の説明では、ある程度繁盛している商会ではあるが、あくまでも平民向けのお店であり、まさか貴族からの縁談が舞い込むとは思ってもいなかったのだろう。
貴族令嬢が平民と結婚することは、ままあることだが、それは大恋愛の果ての結婚であったり、貴族相手にも引けをとらない財産を築いた商家との政略結婚が普通だ。
まさか伯爵家からごく普通の商会へ、縁談が持ちかけられる等、梅雨とも思わなかっただろう。
顔を上げることもできずに只管恐縮する一家が気の毒になる。
彼らが貴族に対するマナー等も知るよしもないことはわかっていたし、知らず知らずのうちに無礼なことをしても咎める気など更々なかった。
「どうか顔を上げてくださいませ。こちらこそ縁談を受けてくださり感謝しております。」
私が声をかけると、ようやく跡取り息子様は顔を上げてくださる。
その顔を見て「おや?」と思う。今までに無い方だっと思った。
公爵令息のように華やかな容姿ではなく、伯爵令息のように理知的でもない。騎士団長のご子息のような男らしさもなかった。
これまでの婚約者達は、タイプは違えど皆一様に整ったお顔立ちをされていた。
だが今回のお相手は見苦しさこそないものの、一見すると地味なこれといって特徴の無い顔立ちをされていた。
ふとマデリーンの方を見ると、如何にも興味なさそうな顔で、新しい婚約者の顔を見ようともしていなかった。
流石に今回は食指が動かないようで、さり気なく私と同様にマデリーンを見ていた両親もホッとした顔をしている。
改めてお相手の顔を見る。やはり特徴の薄いお顔だ。
強いて上げるのであれば、狐のように弧を描く細い目と、鼻の頭に疎らに散るそばかすが可愛らしいと思う。
まじまじと見過ぎていた為か、お相手の方は困った顔をして頭を掻いた。
「申し訳ありません。このような地味な見た目で……、華やかな世界のご令嬢にはもの足りないでしょう?」
眉をハの字にして、なんの非もないのに謝罪する彼は、私よりもほんの少し背が低い。
その頼りな下げな表情と、貴族令息なら決して見せないだろう弱音にきゅんとしてしまった。
可愛らしい、支えてあげたい!!
その思いが胸にこみ上げる。
地味であろうが、背が低かろうが、平民だろうが関係ない。
地味というのなら私もそうだ、貴族令嬢なのに華やかな……、と形容されるような見た目はしていない。
良くて素朴、褒め言葉かどうかは分からないが、親しい友人からは化粧映えしそうと言われる。
彼の横に立つ自分を想像すると、随分としっくりとくる。
良い家庭が築けそうな予感さえした。
「いいえ、とっても素敵な方だと思います。私こそ、とても華やかとは言えませんもの。」
本心から来る言葉を口にすると、首をブンブンと横に降って否定される。
とてもお綺麗です、自分には勿体ないです!!と慌ててとって付けたように褒める様子が可笑しくてクスクス笑うと、彼も照れたように控えめに笑う。
最初こそはどうなるかと思った顔合わせだったが、最後には和やかな雰囲気に終わり、無事に婚約を交わすことができた。
マデリーンだけは信じられない物を見るような目を向けてきたけど、まぁ彼女には平民との結婚等驚くものだったのだろう。
流石に今回の婚約者にはマデリーンは粉をかけてこなかった。
私はそのことにホッとしつつ、彼との仲を深めるべく、商会に頻繁に顔を出した。
お客様を驚かさないように比較的に質素なワンピース
で商会に顔を出していたが、彼と彼の両親は伯爵令嬢が足を運ぶような立派な場所ではないと、酷く慌てていた。
いずれ家族になり、店にも顔を出すかもしれないのにと言うと、ご令嬢を働かせる訳には行かない。
結婚後は家で優雅に暮らして欲しいと遠回しに言われる。
私はそんなことは望んでいない。家族として協力してやっていきたいと口にすると、渋々商会に顔を出すことを許してくれた。
貴族の令嬢の気まぐれと思われていたのかも知れない。
最初は腫れ物に触るように丁寧に扱われていたが、段々と私を認めてくださったのか、お客様への接客を許され、今では店員としてくるくると忙しく動き回っている。
婚約者は少し帳簿付けが苦手なようでそのサポートもしていた。
一緒に働くということは、仲を深めるのにとても有効だ。これまでの婚約者とは桁違いに、今回の婚約者との仲は良好だと思う。
貴族同士の建前を含めた会話をする必要もないので、お互いの好みや考え方等をあけすけに話せたのも良かったのかも知れない。
後、ひと月もすれば、私は貴族の学園を卒業し、彼も平民の学校を卒業する。
そうすれば直ぐにでも籍を入れようて話していた矢先………。
11回目の妹により婚約者の略奪が起こったのだ……。
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