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寝る皇子の辺境建国記  作者: オヤジ
帝国編
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第四話 寝る皇子、獣人の村を訪れる


ネルスたちの眼下には村と呼ぶには少し大きい集落があった。


「空から人が!」

「誰だ!またスペード家の奴らか!」


「ちょっとよろしいかな?こちらはアズバーン地方の獣人の方々の集落でよかったですかな?」


「だったらなんだって言うんだ!」

「またトランプ連合国奴らの差金か!」


フレデリックが問いかけると、集まってきていた住人が口々にネルス達を罵る。

余程スペード家とクローバー家は恨みを買っているようだ


「いや、我々はルードヴィング帝国皇家の者。私は前元帥のフレデリック。こちらのお方は第四皇子のネルス皇子とその従兄弟のリューク様だ。此度、ネルス皇子がアズバーン地方と忘れられた大地の領主に就任なされたので見回りに来ただけだ。」


そう言いながら皇帝印の入った書状を獣人たちに手渡すフレデリック。

そしてそれを見て本当に皇家の者だと納得したようだ。


「本物だ。フレデリックと言えば【矛盾の将】じゃないか!ようやくこの生活から解放されるのか!」


「第四皇子のネルスだ。この辺りの暮らしはそれほど厳しいのか?」


そして村長を務める老齢の男が前に出て、ネルスの問いに答え始める


「私は鼠人族のチュタロウと申します。アズバーン地方にはもともと五つの村がございました。しかし、トランプ連合国による奴隷狩りが酷く、自衛の為に全ての集落がここに集まって生活をしています。

幸い帝国領となってからは表立って奴隷狩りが行われなくなったため、なんとか人口は回復してきており、この集落には400人ほどが暮らしております。

ただ、旧トランプ連合国領からは物を売ってもらえないので自給自足で生活をしているのですが戦闘向けではない種族ばかりでここらの魔物が相手では碌に狩も出来ず困り果てていたところです。」


この村には鼠人族、栗鼠人族、犬人族、鹿人族、兎人族の計5種類の獣人たちが協力しあって暮らしていた。

帝国領となってからは積極的な奴隷狩りは行われなくなったとはいえ、相変わらず年に数人は被害に遭っていた。


「17年で約70人か。やっぱり旧トランプ連合国の奴らはクソ野郎どもだな。」


「村の状況はわかった。俺から村の住人たちに提案がある。俺はこれからロストアースに新たな街を作る。そこに移住してこないか?俺の庇護下でお前たちを守ろう。だが、いきなり現れた俺のことをすぐに信じることは出来ないだろう。

だから俺は明日、明後日でスペード領とクローバー領にいる獣人たちを助け出してくるつもりだ。その結果を見てから移住するかどうか答えを出してほしい」


ネルスとしてはいくら酷い目にあってきたとはいえ、長らく住むこの土地に愛着もあるだろうとすぐに答えを求めなかったのだが、住人たちの反応は正反対だった。


「ほ、本当によろしいのでしょうか?」


溢れんばかりの涙を流して感激する者や、拝み出す者など、誰もがネルスについていくつもりでいた


「不思議だと思ってらっしゃるかもしれませんが、我々は帝国の方には感謝しているのです。帝国領へ変わって旧トランプ連合国からの圧力がかなり弱まりました。今では幼い子どもも増えましたが、昔は本当に絶望的な状況だったのです。」


ネルスたちは今でも奴隷狩りが続いており、帝国の支配が行き届いていないかと思っていたのだが、それでも獣人たちにとっては救いとなっていたのだ。


「じゃあ詳しいことが聞きたいんだが、スペード領やクローバー領について詳しい人間はいるか?」


「そ、それなら、僕が。」


手を挙げたのはリッキーという名の小柄な栗鼠の獣人の男だった


彼は一度奴隷狩りに捕まったものの、小さい体を活かし隙を見てクローバー領から逃げ出して来た

そのためクローバー領の獣人たちが集められているところには心当たりがあると言う。


一方でスペード領では女性の獣人が集められ娼館で強制労働させられているとの情報があった。

二つの情報がもたらされた結果ネルスが下した判断は


「相手に時間を与えるのは愚策だ。スペード領とクローバー領を同時に狙う。

俺の魔法で爺とリューク、そしてチュータロウの3人をスペード領に送っていく。そしたらリュークの気配察知で獣人たちの場所を特定して解放してきてくれ。チュータロウは獣人たちへの説得を頼む。」


「腕がなるぜ」


「フォッフォッフォ、邪魔する者は皆殺しでよろしいですな?」


獰猛な笑顔を見せる2人に周囲の獣人たちは頼もしいと感じるとともにどこか背筋が冷えたような錯覚に陥る


「あぁ、もちろんだ。現場では臨機応変に動いてくれ。派手になったとしても奴らはガルガロッソ将軍の仕業だと思うだろう。そして俺の方はリッキーを案内役に2人で突入する。こっちは場所がわかってる分楽だからな」


「ほ、本当にそんな人数で大丈夫ですか?」


「心配すんな!大丈夫だぜ。こっちには伝説の【矛盾の将】ことフレデリックの爺さんがいるし、そっちはネルスがいりゃぁなんとでもなる。


「安心してくれ。失敗はない。暗くなる前に移動を済ませよう。決行は午前0時だ。」


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