シンデレラを読み聞かせていた子がやけにざまぁ展開に詳しい
「昔々、あるところにシンデレラという女の子がいました」
我が家では寝る前の読み聞かせが習慣になっている。
今日はシンデレラの絵本だ。
「たのしみー!」
こどもは何度か聞いているはずだが、初めて聞くかのようにうれしそうに聞いている。
我が子ながらなんていい子なんだ。
「じゃあ、続きを読むね。シンデレラは継母や義理の姉にいじめられていました」
「ドアマットだね。はやくざまぁを見たいな」
「!?」
なんか急に専門用語を交えて続きの展開を煽るようになった。
全然いい子じゃなかったわ。
こどもの成長は早いと言うから、こんなものかな。
「シンデレラは汚れた服しか与えられず、継母や義理の姉のために家事をさせられていました。ある日、王子様の結婚相手を探すためのパーティが開催され、国中の女性が招待されましたが、シンデレラは継母から参加を許されませんでした」
「パーティ追放だ! キャッキャ!」
パーティ追放ってそんな意味じゃないと思う。
確かにパーティからは追放されているけれど。
「シンデレラが一人寂しく掃除をしていると、おばあさんが訪ねてきました。おばあさんは魔女だったのです。以前親切にしてもらったお礼にと、シンデレラは魔法をかけてもらいました。汚れた服はドレスに、かぼちゃは馬車に、ネズミは白馬に変わりました」
「ここからざまぁが始まるんだね!」
こども向けの絵本にざまぁとかないと思う。
「十二時には魔法が解けてしまうから、戻って来るんだよ、とおばあさんに送り出してもらい、シンデレラもパーティに参加しました。遅れてきたシンデレラに王子はひとめぼれし、ダンスを一緒に踊ります。楽しいときは一瞬で過ぎ去り、十二時の鐘が響きました」
「継母は? 義理の姉はどうなったの?」
この子、ざまぁを求めすぎじゃない?
「シンデレラが好きになった王子さまは他の女性には目もくれませんでした」
「ざまぁ! キャッキャ!」
教育に失敗したかな。
「さて、鐘が鳴ったことに気づいたシンデレラは慌てて駆け出します。魔法が完全に解けてしまう前に家に帰らなければなりません。走っている途中でガラスの靴が片方脱げましたが、気にしていられません。バタバタと急いで家に戻りました」
「それから? それから?」
「シンデレラはそれからいつも通りの生活に戻ってしまいました。ただ、王子さまは、名前も聞けずに去ってしまった美しい女性のことが忘れられません。残されたガラスの靴がぴたりと合う人を探していました」
「ざまぁはあるかな?」
ざまぁはこども向けでは削除されているよ。
「継母や義理の姉がガラスの靴に挑戦しますが、当然のごとく合いません。王子様の家来が念のためシンデレラにも靴を履かせるとぴたりと合いました。『あなたが探していた女性だ』と王子様が迎えに来ました。シンデレラは王子様と結婚し幸せに暮らしました。おしまい」
「ざまぁが足りないよ! 継母と義理の姉をもっとひどい目に遭わせよう!」
うちの子には、そんなに人間の闇に毒されないでいてほしかった……
「ざまぁがないと眠れないよ! 民衆にパンとサーカスを!」
本当に誰から教わったの、この子……
「じゃあ、残酷な話をするね。継母や義理の姉はガラスの靴よりも足が大きかったので、当然足は入りません。どうしても王子様と結婚したかったので、かかとをナイフで削り落としました。『痛い痛い!』といいながら、しかし足はぴったりとはまったので、ドヤ顔で王子の従者に見せつけます」
「きゃっきゃ!」
「当然失格となり、唯一の手掛かりであるガラスの靴を汚したことでそのまま逮捕されてしまいました。おしまい」
「もっとひどい目に遭ってほしかったけどまあいいや。おやすみ」
こどもは、そういって眠った。
眠った子を見て、「小説家になるぞ」に投稿している追放ざまぁ小説を書き始めた。血は争えないのか、私の小説を発見して読んだのかはわからないけれど、これ以上ざまぁを求めるなら、寝るときに読むものが絵本から「なるぞ」の小説になってしまう。
私の「なるぞ」のアカウントが見つかるのも時間の問題かもしれない。
カモフラージュで書いている「なるぞ」のアカウントは最悪ばれてもいい。
私が本当にバレたくないのは、「なるぞ」じゃなくて、戦斧擬人化ゲームの夢小説なのだ。
履歴に残らないよう細心の注意を図り、アカウント管理もばれないようにエニグマを使って暗号化する。
こどもに夢バレざまぁをされないよう、これからも気を付けていこう。
終




