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ブラック企業に勤める大魔王と聖女のボロアパート伝説

作者: yokuu
掲載日:2020/12/05

 ここは魔界と聖界の狭間、名古屋。

 私鉄沿線にある郊外のボロアパートの一室。

「そおら最大火力だ!」

 小さなコンロの上では、鍋の中でぐつぐつと赤い液体が煮えたぎっていた。その様子はさながら地獄の鍋。

「あとはここに胡椒を…あ、新しいの開けなきゃ。」

 新品の胡椒の瓶を棚から取り出し、包装ビニールを剥がそうとする、が。

「あああ!!取れん!畜生!!」

「貸してみ。」

 隣からニュッと伸びた白い手が瓶を奪い、いとも簡単にぺりぺりぺり、と小気味よい音を立てて封を開けた。

「流石。封印解くの上手だね。」

「関係無いから。大魔王の爪が長すぎるだけだから。あと仕事の話やめて。」

「爪はお互い仕方ないじゃん。俺は伸ばしてないと攻撃力が落ちる。聖女は短くしてないと業務規定違反。」

「今時ネイルもできないなんて!」

 金髪の聖女は頭を抱えて仰け反った。

「大体さあ、ブラックすぎるんですよ大魔王さん。」

「わかりみが強い。」

 大魔王は胡椒を振りながら頷いた。

「誰が聖女と大魔王がルームシェアしてると思うわけ。」

 お部屋探しに来て遭遇したあの日のことはお互い忘れられない。

「いや誰も思わないだろう。はい、味見して。」

「あーん。おいしい。大魔王の城って住んじゃいけないの?」

「住めないよあんなとこ。暗いしかび臭いし。」

「リフォームしたら?」

「リコールされる。」

「つらみ。」

 せっせと皿の用意をし、大魔王はゆでていたパスタを引き揚げた。

「住めば都なんてね、限度があるんだよ。先々代は住んでたらしいけど、俺には無理。」

「大魔王も大変だよねえ。支出はないけど収入もないなんて…。」

「それを言ったら聖女だって。」

「それよ。まさか稼いじゃだめとは思わないじゃん?聖女好きで聖女になったわけじゃないのに。突然選ばれたのに。」

「それはマジで気の毒。」

「聖女は無償で皆のために尽くすから聖女なんだって。」

「誰もやりたがらないわけだよね。」

「故にね、ありがたがられる訳ですけど、結局たまに貰うお礼で食いつなぐしか…調子乗ったらすぐ叩かれるし…。」

「わかるー。」

 はあ、と二人はため息をついた。明日も仕事。大魔王は恐怖を振りまき、聖女は清める。拮抗した精霊界の情勢は変わらない。

 全然得にならない。早く辞めたい。でも、この生活を長引かせるには…。

 ((早く転職して、結婚しよ…。))

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― 新着の感想 ―
今更ながらにラブコールを送ってみます この2人の続き、気になります どうか…! ┏○))
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