「更なる挑戦」 プロローグ 「噂話」
大会の次の日、イルミは昼にルーマスから放課後に学長室へ行くように言われ、今日の授業が全て終わってすぐ、学長室へと向かっていた。
どうやら大会の事後処理らしいが、まだ何かあるのだろうかとイルミは思う。
それより、学長室に呼ばれたという事は祖父が学院に戻って来ているという事でもあった。
祖父に会える事を嬉しくも思うが、重大な任務であったにも関わらず大会の事後処理くらいで学院に戻ってくるのを少し不思議にも思うのだった。
「来たかイルミ」
学長室の前に着くとルーマスが扉の前に仁王立ちで立っていた。
「学長が待っておられる」
「あ、はい」
何故、先生が? と、疑問に思うイルミだったがドアをノックする。
「おう、入れ」
低くしわがれたレオヴァンの声が部屋の中から聞こえてくる。
「失礼します」
と中に入るとそこには既にコーデリアがレイヴァンの前に立っていた。
「ようイルミ、久しぶりだな」
「お久しぶりです」
コーデリアの手前、祖父に対する接し方を抑え、学長に対する口調でイルミは対応する。
二人が揃ったところでレイヴァンはイルミとコーデリアの顔を見て
「とりあえず大会の優勝を祝わせて貰おうか。おめでとさん。流石、俺達、自慢の孫共だって言いたい所だが学長の立場として贔屓した言葉を送るのは良くねえだろうから、良く頑張ったなとだけ言っとくぜ」
もう、ほとんど孫への言葉を送っているようなものであった。
しかし、この祝福の言葉だけを言いに来るためだけに来た祖父は自分達を呼び出したのかとイルミは思うが、しっかりと続きがあった。
「でだ、優勝したお前らに優勝商品を渡そうと思うんだが――」
そういえば優勝商品がある大会であった事をイルミは思い出す。学長室で大会について聞かされた時も、掲示板のお知らせにも確かに商品について述べていたが、それが何なのか書かれていなかったため、存在感が薄く忘れていた。
「中々良い物を用意したんだが、少し問題があってな――」
――問題?
何故、優勝した商品に問題なんてあるのだろうか。
「俺の不手際で一つしか用意出来なかったんだ。悪いな」
「悪いなって」
それなら別の物でも二つ用意出来る物を渡せばいいはずである。タッグのチーム戦で一つだけしか物がないのは、釈然としない。
「ま、ジャンケンでも何でも好きに――勝負してくれ」
勝負という言葉を強調して言う、その言葉の真意をイルミは理解する。
「商品が何かは知らない、でも私は別にいらない」
コーデリアは遠慮し、優勝商品をイルミに譲ろうとする、が
「いや――勝負をしようリア」
それにレイヴァンはニヤリと笑う。
「勝負?」
「シャミアが大会の時、戦う前に言ってた事を覚えてる?」
「……?」
何の事か分からないコーデリア。
「戦って勝った方と決勝戦だって言ったんだ。だからまだ――本当の決着はついてない」
レイヴァンはイルミに機会をくれたのだ。
「だから僕と――模擬戦で勝負しよう」
コーデリアと戦う機会を。
「私とイルミが……?」
「うん」
ずっと考えていた。学院の全ての人間を認めさせる方法は何かを。
そしてコーデリアと過ごす中で日々、ある思いを募らせいた。
――リアと勝負をしたい。
学院一の実力者だと言われている彼女に勝つ事、それは何よりも明確な強さの証明であり、一番手っ取り早く実力を認めさせる結果であった。
「……実は私も――イルミと戦ってみたかった」
「えっ?」
意外な台詞であった。
イルミを守ると誓ったコーデリアが、守るべき相手と戦いたいと思っていたとはイルミにも予想外であった。
「聖騎士は誰よりも強くないといけない。私はイルミとも戦ってその証明をしたい」
レオンとの戦闘を一番間近で見ていたコーデリアがイルミに対しての見方を大きく変えられてしまった。
三週間前までイルミを守るだけの存在だと認識していたコーデリアをイルミはついに肩を並べる存在であると認めさせたのであった。
「それでいいな? 模擬戦のレベル制限はジークにどうにかさせる。お前の実力を何人もの教師共が大会で見てたはずだ。反対する奴はいないだろうよ」
今までは学長の孫とは言え、レベル1のイルミを模擬戦に参加させるのは否定的であり、一部の教師しかイルミの実力を知らなかったのだが、もう多くの教師がレベル1の彼の実力を認めざるを得なかった。
「その話はここまでとして――課外授業の話だ」
レイヴァンの目がいつになく真剣な目に変わる。
「ここに戻ってきたのも、お前らにそれを伝えるためだ」
どうやら本題はコッチの話であるようであった。
「スマン、お前らに討伐して貰う予定だった一億以上の経験値の魔物が――何者かによって倒された」
「え……」
レイヴァンが言った事をどうにか理解出来るように脳内で変換しようと、思考を巡らせるが、言葉の通りの意味にしか捉える事が出来なかった。
たった一匹で世界の力関係を崩壊させてしまう程の経験値を持った魔物である『スーカ』。それが倒された。
そして、世界はその事件をキッカケに倒壊への道へとゆっくりと傾き始めるのであった。
大会が終わった日から、学院内で密かにある噂が立っていた。
レベル1でありながら学院トップの生徒達と互角に戦った人間がいると。
多くの生徒は半信半疑でその噂を聞き流し、どうせそんな訳がないと、たかを括っていた。しかし、噂はそれだけではなく、どうやら近日、その生徒が学院最強の少女と決闘をするらしい。
そんなの無謀な挑戦だと噂を聞いた人は皆が笑った。ただ本当に、万が一でもレベル1の身で勝つとすれば、一体どんな人物だというのだろうか。
噂は噂であり、本気にはしない。しかし、徐々に真実味を帯び始めているその噂に生徒達はそのレベル1の生徒について興味持ち始めていた。
だが、学院に流れる噂はそれ以外にもあった。
世界各地の凶悪な魔物達が何体も倒されているのだという。それも――たった一人の人間によって。
その人物のレベルは100を優に超え、その圧倒的なステータスで人々の危機を救っているという。
それこそ、馬鹿げた噂だと笑うが、もし本当にそんな存在がいるとすれば
――次世代の【勇者】の誕生である
そんな噂が実しやかに囁かれるのであった。
続きの構想はあるのですが、ここで一章の完結とさせて頂きます。
見切り発車で書いたため、所々、設定や話の構成がグダグダになっていたように思えるため、続編を書くとすれば、一度この作品をブラシュアップしたものを投稿してからにしようと考えております。
最後まで読んでくださいましてありがとうございます!
簡単にでも感想を書いて頂ければ、それ程嬉しい事はないのでよければ、よろしくお願いします。
本当に読んでいただき有り難うございました!!




