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授業の時間

「お前らー冒険職希望だからって勉強が必要ないと思ってんなよー?」


 気だるい口調で女性教師が黒板前で話している。


「特に【魔法使い(メイジ)】とか【僧侶プリースト】みたいな魔法系の職業(ジョブ)の奴らは、『学者』系の技能は必須だからな。じゃー、リーズ」


「へゃい!?」


 飛び跳ねて席から立ち上がるリーズと呼ばれる気弱そうな桃色(ピンク)の髪色をした少女。


「いや、そんなに驚くなよ……まあいい、五歳のガキでも分かる問題だ。ステータスについての説明を簡単にしてみろ」


「あ、あの、質問が大雑把過ぎて……」


「あん?」


「いえいえ! スミマセン、スミマセン!?」


 ペコペコ何度も頭を下げるリーズ。


「いや、別に怒ってないから。じゃー、とりあえず基礎ステータスの各種の説明を頼むわ」


「か、各種ステータスですか? えっと、き、基礎ステータスは5つあって、「力」「耐久」「敏捷

「知恵」「器用」があって、それらが上がると――」


「力」  物体に加える力が増える。


「耐久」 体が頑丈になる。


「敏捷」 アジリティが上がる。


「知恵」 魔法や特定のスキルに補正がかかる。


「器用」 特定のスキルに補正がかかる。


「で、よ、よろしいですか?」


「ん? まぁ大丈夫だろ、多分。ありがとリーズ、もう座っていいぞー」


「あ、はい」


 リーズは静かにスカートの裾を気にしながら着席をする。


「まあ、知っていると思うけど、「知恵」が上がっても頭がよくなるわけじゃない。「器用」が上がっても武器の扱いが上手くなるわけじゃない。あくまでスキルや魔法に補正がかかるだけだから注意なー」


 基礎ステータスの基本中の基本。


「じゃあ、職業については、って――シャミア!」


 目を鋭く光らせた女性教師は寝ている柑橘色(オレンジ)髪の少女に向けて白墨(チョーク)を飛ばす。


「あたぁっ!?」


 投げつけた白墨(チョーク)が少女に当たり、粉々に砕けて床に落ちる。


「な、何するんすかエルシア先生!?」


「寝てるからだバカ」


 エルシアと呼ばれた女性教師は眼鏡持ち上げて言う。


「い、いや、私ってほら拳聖を目指しているんで、座学は別に――」


「まー確かに拳聖みたいな脳筋職に「知恵」は必要がないなー」


「で、ですよね?」


「だけどお前、集団戦術の成績さっぱりだったよなー? そういう脳筋バカは連携がとれず孤立して早死にするんだぞ?」


「うっ」


 分かり易くうろたえるシャミア。


「いい機会だ。大切な話だから、お前ら、よく聞いとけよー」


 しばらく教室内を見回してエルシアは講義を始める。


「いいか? 戦術の他にも環境学やモンスター学なんかの知識、まー学院(うち)はそれらを「理科」として一括(ひとくく)りの授業で教えているが、それらを詳しく知っておくと、冒険先で役に立つ事がある」


 エルシアは黒板に「ステータス」という文字を大きく書く。


「確かに冒険職はステータスの重要性が高い。当然だ、ステータスが低ければ自分よりも圧倒的なステータスを持つモンスターにはダメージすら入らない。これが、レベルアップが重要視されている理由だ――だけど」


 「ステータス」と書かれた横に「知識」の文字を半分くらいの大きさで書く。


「それは知識を疎かにしていい訳ではない。危機的な状況や予想外の事態に陥った時、自分の命を救うのはステータスよりも知識だ。これはよく胸に刻んでおけ」


 そして、「技術」という文字を「知識」の下に同じくらいの大きさで書く。


「更にだ。自分のステータスよりも高い敵を相手取る時、必要なのが知識と技術だ」


 その二つが書かれた場所をコンコンと叩く。


「これらはレベルが上がる程大切になってくる。まだステータス差がそのまま実力にでやすい学生の間は納得しにくい話なのは分かるが、ま、今から準備しておいて損はないってわけだ。いいか、シャミア? お前の場合、ステータスも技術も学生にしては申し分ないが頭が弱い。【拳聖ハードストライカー】を目指すのは結構だが、強くなるには勉強も必要だって事だ」


「み、耳が痛い……いや、でも先生」


「なんだ、まだ文句か?」


「いえ、今の話は、それはもう感動したんですが――それでも冒険職の学校に国語の授業は必要なんでしょうか?」


 恐る恐るといった感じで、控えめに質問する。


「それも同じ理屈だ。国語は読書や会話に必要な能力を育める。さっきみたいに、私が簡単な説明をお前らにして貰うのは、考えを伝える能力を伸ばすためだ。学びに無駄な事は一切ない」


「な、なるほど」


「いや、冗談抜きにマジで大切なんだかんなー? 授業を止めてまで私が熱弁している理由を考えとけよ。分かったか、お前らー?」


 ふう――と、一呼吸を置き


「じゃっ、授業を再開するぞー」


 そして気だるそうなままの声でエルシアは授業を再び始めるのだった。


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