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「あ、ザイド様……」


 突然現れたザイドに対して怯えた表情をリーズは見せる。


「あれは誰? リーズさん?」


「あ、あの方は、私の……パートナーです」


「え?」


――パートナーは失格になったって……


「リーズ! 早くこっちに来なさい!」


 イルミは疑問を口にする前にザイドの声に遮られる。


「ごめんなさい、イルミ君!」


 そしてそのザイドの言葉に、イルミを押し倒したリーズは立ち上がってザイドの元へ逃げるように走っていく。


「イルミ! その子を逃がさない方がいい!」


 より早く状況を理解したコーデリアがイルミに警告するが、困惑するイルミはすぐに動けずリーズはザイドの所へと到着してしまう。


「どういう事?」


「騙された。あの子のパートナーは失格になってない」


「え、でも、それじゃあ?」


 何故リーズはザイドの一撃からイルミを助けたのか。それはパートナーであるザイドも分からないようで、リーズに問い詰める。


「説明してください、リーズ。なぜ彼を助けたのです?」


「い、イルミ君は他の人と違って、私に酷い事をしようとしなかったから……」


「つまり、彼に情が沸きましたか……なるほど……」


――バチンッ! と、ザイドはリーズの頬を引っぱたき、その衝撃でリーズが地面に倒れる。仲間の攻撃でも関係なくリーズのHPバーは減少する。


「誰のおかげで冒険職を目指せていると思っているんだ、このグズが! 言われた事も出来ねえようなら、また奴隷としての日々に戻るか? ああ!?」


 ザイドは口調を崩してリーズを罵りながら、倒れたリーズを何度も蹴る。


「も、申し訳……ありません」


 じりじりとHPバー減っていき、リーズは蹴りを耐えるように体を丸めて謝罪する。


「な、何をしてるんですか!?」


 目の前で知り合いが痛めつけているのを見て思わずイルミはザイドに怒鳴りつける。


「ん? ああ、失礼。駄目な私のパートナーを躾けておりまして」


 イルミの声に反応したザイドは口調が戻り、リーズを蹴るのを辞める。「うう……」とリーズは呻き声を零す。


「躾け……?」


「そうです。リーズは私の従者ですので、彼女がミスをすれば躾けをするのが私の役目なのです……それに、彼女を心配するのはお門違いでは? リーズはアナタを騙そうとしていたのですよ?」


 パートナーが失格になったと言って、油断させた所で隠れていたザイドの攻撃で奇襲をかける。


「それはアナタがそうしろとリーズに言ったからですよね?」


 普段のリーズを見ていて、彼女は自分から人を騙すような人間ではない。例え人に言われても騙せるような人間ではないと、イルミは思っていた。


 それでも、イルミを騙そうとしたのは、リーズとザイドの間に何か特別な関係性であるようであった。


「まあ、私の命令ですが、騙そうとした事は変わりませんよ。リーズ本人は確かに人畜無害な子ですから。誰も疑おうとはしませんしね。まあ、初撃を与えて確実に先制を取るための作戦だったのですが、全く、敵を助けるとはどういう了見ですか……それはアナタも同じですけど」


 一人でいるリーズに心配を掛け、リタイアを進めたイルミも同じように敵に情けをかけた事になる。


「まあ、いいでしょう。どちらにせよ、アナタ達のグループにはサスフィール嬢がいる。今の一撃をアナタに当てたとしても、苦戦は必須でしょうしね」


 それは他の生徒と同じでイルミが『レベル1』である事を知っている言い方であった。


「では、始めましょうか……リーズ、早く立って私に強化魔法(バフ)をかけなさい?」

「は、はい……ザイド様」


 支援職(サポーター)の仕事は主に味方の強化である。しかし、レベルを上げる事が困難であるため支援職(サポーターに完全に寄せて熟練度を上げる人間は少ない。しかし


「【ツイーク】【レーゼン】【アンビーク】【ロンゲル】【グレイレア】――」


「詠唱なし……!」


 その光景にコーデリアは息を呑んだ。


 支援魔法も他の魔法の例に漏れず、詠唱が必要であるはずなのだが、リーズはそれを全て破棄し、魔法を使う。


「リーズは私のサポートをさせるためだけに幼少期から訓練させております。つまり、彼女は生粋の支援役サポーターなので、このくらいは当たり前に出来ますよ。時間があれば詠唱もさせるのですが、そんな暇はなさそうですので」


 話しながら、その見た目に合わない大剣をザイドは振りかざす。


「さてと、このくらい強化すれば、私でもまともにサスフィール嬢とも戦えますかね」


 強化(バフ)が施されたザイドを見てコーデリアが


「私が彼を引き受ける。イルミはその隙に支援役(サポーター)を」


 ザイドもリーズが狙われる事を警戒するはずのため、そう簡単にはいかないだろうが、イルミにもそれが最善の策であるように思えた。でも――


「ゴメン、リア。ちょっと我侭言っていい?」


「我侭?」


「あの人は僕が倒す」


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