表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/47

朝の日課

 目が覚めると見慣れない天井がそこにあった。


 起き上がり、部屋に一つだけある窓から外を見ると、まだ薄暗かったが、そろそろ朝日が出てきそうな風景が見えた。部屋の中を見渡すと、寝ていたベッドに机、それと収納棚がある。一ヶ月の間だけ住まわせて貰うには十分な家具が置いてある部屋であった。


「……イルミはまだ寝てるかな」


 昨夜は着替えた後、店の外にあるという、ルリ達の家までイルミに案内して貰い、トイレやシャワーなどの各部屋の割り振りなどの説明を受け――今日は疲れただろうから、とそれから自由となった。


 初めての経験で、疲れもあったのか、シャワーをして部屋に戻ってベッドの上に寝転んだ瞬間、コーデリアは深い眠りについたのだった。


 それでも、しっかりと毎朝起きている時間に目を覚ますのは彼女のキッチリとした性格が現れていた。寮は学院の敷地内にあり、起きるにはかなり早い時間なのだが、彼女はその学校へ行くまでに空いた時間で自己鍛錬を毎朝行っていた。


 基本的に外に出て軽い運動をするのだが、今は慣れない街にいる。外に出て何か問題を起こしたくないと思い、慣れるまでは部屋の中にいようと、コーデリアは簡単な体操とストレッチを始める。


 ステータスには直接関係しなくとも、こういった体を整える行動というのは大切であり、それが重要である事をコーデリアは理解していた。


 一時間近く入念に体を動かすと、起きた時には薄暗かった外も明るくなっていた。少し物足りなさを感じながらも汗を流すために、シャワーを貸して貰おうとタオルと着替えの制服を持って部屋を出た。


 廊下に出て真向かいにあるイルミの部屋にコーデリアは聞き耳を立てた。


「…………」


 特に物音を感じない。


 まだ寝ていると判断し、コーデリアは一階にある浴室に向かう。


 ルリ達の家は、二階に各々の寝室があり、共同の生活空間は一階となっていた。普段は三人住みの家だと考えると少し広すぎる建物のように思えた。


 寝ている人達を起こさないよう、物音を立てずにそっと歩いて、一階にある浴室にコーデリアは辿り着く。そして浴室に繋がる脱衣所のドアを開けると――


「……へ?」


 そこには綺麗な白い肌には似つかわしくない割れた腹筋や多くの傷跡が体中のあちこちに見られる、小柄な少年――イルミの裸があった。


「キャーー!?」


 イルミの口から女の子のような悲鳴が上がる。


「おはようイルミ、起きてたんだ」


 同級生である異性の裸を見てもコーデリアはまるで動じずイルミに挨拶をする。


「お、おはようじゃなくて、ドア閉めてよ!」


「私も今から入るんだけど?」


「なら尚更だよ! すぐに着替えるからちょっと待ってて!」


 ドアを力強く閉める。


 そして、数十秒で着替えたイルミが脱衣室から出てくる。


「……どうぞ」


 イルミの顔が少し赤くなっているが、湯あたりをした訳では無さそうであった。


「ありがとう」


 イルミと入れ替わるようにしてコーデリアが脱衣所の中に入る。


 ドアを閉め、服を脱ぎながらさっき見たイルミの裸の事を思い出す。


――凄く体を鍛えていた……。


 小柄でひ弱そうな男の子に見えていたが、中身はかなり鍛え上げられていた事にコーデリアは少しだけ驚いていた。力の基礎ステータスはあくまで身体能力への補正であるため、筋肉を鍛える事は無意味ではなく、イルミが本当に出来る限りの努力をしようとしているのかもしれないとコーデリアは思う。


 それに、もっと気になったのは、あの(おびただ)しい数の痛々しい傷跡であった。


 一体何をすればあれだけの傷が残るのか、イルミがこれまで何をしてきたのかにコーデリアは興味を持ち、気持ちの良いシャワーのお湯が体を伝っていく中、勇者を目指す彼という人物ついての印象をコーデリアは早くも再考するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ