酒場『双児宮』
すいません!
予約投稿が出来ていなかったみたいで、少し遅れた投稿になります!
強盗を王都警備隊の人間に引渡した後、二人は予定通りイルミのバイト先である酒場『双児宮』に向かっていた。
「……なにか怒ってる?」
「どうして?」
「全然喋らないから」
「あ、いや、ちょっと、自分が情けなくて……別に怒ってはないよ」
「情けない……?」
彼女に悪気がないのは分かっているが気にかけられると、イルミの惨めな思いを余計加速させた。いっそレオンのように悪意を持って見下してくる方が無視するだけでいいので楽なのにとイルミは思う。
イルミが気にしなくともシャミアが無視出来ずに、昼休憩のような事になるのだが。
今もまだシャミアとレオンは仲良くルーマスの補習を受け、グッタリしている所であるがイルミが知るよしもなかった。
「――と、着いたよ」
メインストリートから少し外れ、人の通りがまばらになった、所謂、穴場のような立地に酒場『双児宮』は建っていた。
イルミがドアを開けて入ると、店内は橙色の明かりで照らされており、カウンター席とテーブル席がいくつか置かれ、一般的な酒場の内装のようであった。
「いらっしゃい――ってイー坊じゃねえか。どうした今日はやけに早いな?」
「え! イー君もう来たの? 何々、どうしたの?」
店の店員と思わしき男女二人がイルミに詰め寄ってきた。
「うん、ちょっと時間が空いたから、早めに来たんだルディ兄、リディ姉」
「そうかそうか、そんなに早く俺に会いたかったイー坊、可愛い奴だな。なあリディア」
「イー君が可愛いのは当たり前よ、というかイー君は私に会いに来てるのよ、ルディア」
「あん?」
「はあ?」
イルミが着いて早々にメンチを切り合う二人。
「二人に会いに来てるんだって。だから喧嘩しないで……」
イルミは慣れたように二人の喧嘩の仲裁に入る。
「よかったな、お前にも会いに来てるって」
「よかったわね、アンタにも会いに来てるって」
合わせた目を逸らし散らせた火花が消える。
「……顔が同じ」
「「ん?」」
コーデリアの言葉に声が揃う二人。
「あ、とそうだね、こっちの、お兄さんがルディア・アンドレシア、お姉さんがリディア・アンドレシア。見て分かるように双子なんだ」
顔が同じ。
コーデリアが言ったように、酒場『双児宮』の店員であるアンドレシア兄妹の顔はそっくりであった。ただ、兄のルディアは栗色の短髪であり筋肉質な体つき、妹リディアは髪の色は同じだがセミロングで女性的な部分かかなり強調されていた。
「おいおい嘘だろ? イー坊がシャミア以外の女の子を連れてきやがった!」
「え! 嘘! うわ、綺麗な子! アナタなんて名前なの? イー君とどういう関係?」
同じ顔二つがコーデリアに迫る。
「私はコーデリア・サスフィール。イルミのパートナー」
「ちょっ、だから!」
「キャー!! イー君やるじゃん!」
リディアが黄色い歓声をあげ、盛大にはしゃぐ。
「これは、違――」
「なんだよ隅に置けない奴だな。ずっと、特訓ばっかで、そっちは興味ないのかと思ってたのによー」
ルディアはイルミの肩に手を回して軽く小突いておちょくる。
「だから――」
「テメエらいつまでクッチャべッてんだ!! いい加減仕事しねえと、その口切り落として、美味しく調理して食わせるぞ!!」
「「ごめんなさい!!」」
厨房の方から猛烈な大喝が店内に響き渡り、さっきまでイルミとコーデリアの周りに纏い付いていた兄妹は驚異的な早さで自分の仕事へと戻った。
店内にいた客はコーデリアのみがその怒声に驚いており、それ以外は平然と各々の空間を満喫している。
「たく、せっかくの料理が冷めちまうだろうが」
頭をガシガシ掻きながら厨房から二人と同じ色の長い髪を一本に束ねた女性が出てきた。
「ん? なんだイルミか。えらく早いじゃないか。もう仕事するのかい?」
「こんばんはルリさん。先に仕事というか相談事なんですけど……」
ルリと呼ぶ女性に後ろにいるコーデリアの姿を見せた。
「ふーん……ま、とりあえずカウンター席に座ってな。まずは飯を食ってからだ」
一度出てきたのに、またすぐ厨房の方へとルリは引っ込んでいく。




