第9話 部員紹介とラブコメ
今回は日常パートと部員の簡単な紹介です。
内容は雑な自覚はありますが、自分の中でプロットやキャラはいっぱい作っているため、部員をまとめておかないと誰がいるのかわからなくなりそうなのでこのような形でまとめました。
「女子野球部ってレベル高いよな」
昼休みに教室で男子野球部の春川透と昼食を摂っていると、透が唐突にそんなことを言い始めた。
「ん? まあ確かに夜空は下手したら全国でもトップレベルだし、伊澄は去年の日本代表、陽依も代表手前までいってるからな」
すごい選手は多い。なんでこの学校にそんな選手たちが集まったのか不思議ではあるが、確かにレベルは高いとは言える。
しかし、透が言うことはそう言う意味ではなかった。
「そうじゃない!」
透は机を叩くと今にも「うがー!」と言い出しそうな雰囲気で詰め寄ってくる。
「大星先輩はちょっと変わってるけど美人だし、瀬川さんもクールで高嶺の花って感じだし、姉崎さんもめちゃくちゃ美人ってわけじゃないけど愛嬌あって一緒にいたら楽しそうだし、同じクラスの神崎も地味だけどまあまあだし」
「あー……」
そういうことか、と巧は話の意図を掴んだ。……陽依と司に関してはややディスってるような気はするが。
透は悔しそうに机に突っ伏する。教室の端の方から司の視線を感じたがこれは気づかないフリをしておく。
「マネージャーの二人だって、佐久間さんは可愛い系だし、本田先輩は美人系だし、本田先輩みたいなマネージャーにドリンク作って欲しいし良いプレーできたら褒められたい!」
「うわぁ……」
ここまで欲望全開に来られると流石に巧も引いてしまう。言いたいことはわからなくもないが、そういうことは心の中で留めておく方がいいだろうに……。
男子野球部にもマネージャーが多数いるため、間違ってこのことが伝わると顰蹙を買うだろう。
「実際のところどうなんだよ? 気になってる子とかいないの?」
「いないな」
これは事実だ。
確かに女子ばかりの中に一人だけ男子という状況は、男子高校である巧はドキドキしてしまう場面は少なからずある。それでも練習中はそんなことを考えることはない。
「面白い話なんてないぞ?」
そもそも野球一筋で恋愛をしたことのない巧に、この手の話題はこれ以上のことは出ない。
「じゃあ普通に戦力としてはどうなん? さっき言ってた大星先輩とか瀬川さん以外の人たちとか」
「そうだなぁ……」
色々とスタメンを考えたりすることはあったが、まだ特徴を掴めていない人たちもいるため、一度整理をする。
まず部員の人数だが、三年生は一人、二年生が七人、一年生が六人。マネージャーが三年生と一年生で一人ずつだ。
三年生の大星夜空。右投左打。ポジションはセカンド。男子野球部キャプテンの砂原大地の幼馴染で中学時代は二、三年生時に日本代表にも選ばれている。
マネージャーの本田珠姫は元々左投左打だったが、怪我で右投左打のファースト専門となっている。珠姫は巧の幼馴染で、チームは違ったが小中学校は同じだった。
二年生は藤峰七海、諏訪亜澄、結城棗、千鳥煌、佐々木梨々香、水瀬鈴里、月島光の七人だ。
七海は右投右打のサード。安定感のあるバッティングと守備で安心感のある選手だ。
亜澄は右投右打のファースト。長打力はあるがミート力に乏しく、七海とは対照的な選手とも言える。
棗は右投右打のピッチャーと外野手。スタミナはあるがやや安定感に欠ける。野手としても守備型の選手だ。
煌は左投左打の外野手。バッティングは苦手でパンチ力はない。足はそこそこあり外野の守備力においては夜空に次いで二番目に上手いと言っても過言ではない。
梨々香は右投右打の外野手。基本的に気まぐれな選手でいつも眠そうにしている。長打力はあるが、打率はそこまで良くなく守備もそこそこだ。
鈴里は右投左打のセカンドやショート。煌と似ており、バッティングは苦手だが内野の守備力においては夜空の次に上手い。
光は右投右打の外野手。内野も守れるが、内野に関しては安定感がない。守備力はそこそこだが、足はチーム内でもトップだ。ただ一番打者として起用できるほどの打撃力はない。
そして一年生。瀬川伊澄、姉崎陽依、豊川黒絵、黒瀬白雪、椎名瑞歩、神崎司の六人だ。
伊澄は右投右打のピッチャーと外野手。陽依は両投両打のオールラウンダー。
二人は幼馴染で小学生の頃はもう一人仲が良い子がいて三人でいつも一緒にいたらしい。
中学のシニアでは別々となり、陽依は夜空のいたシニアに入っている。高校では同じ高校に進学したかったため二人で勉強をしたようだ。
黒絵は左投右打のピッチャーと外野手。ピッチャーとしてはストレートしか投げれないがスピードがある。野手としてはパンチ力はあるがそもそもボールがバットに当たらないと極端な選手だ。
左投というところは、野球を始めた頃に左利きである親のグローブしかなかったため、その頃から右利きでありながら左投らしい。
白雪は右投左打のショート。バランスが取れた選手だが、あと一歩パンチ力が足りないため打率は良くないが、四球を狙うため出塁率は良い。進塁打やバントなどチームプレイが得意だ。
瑞歩は右投右打のサードとファースト。二年生の亜澄とやや似たタイプの選手でパンチ力はあるがミート力がない。それでいて亜澄よりもやや安定感に欠けるといったところだ。
最後に司。右投右打のキャッチャーだ。バッティングもそれなりに良く、守備力も肩の強さもキャッチャー向きだ。
それに加えて性格が嫌らしい。リードも嫌らしい。
伊澄と何度か対決している中でキャッチャーを務めていたが、どちらかというと司に苦しめられていた。
マネージャーの佐久間由衣は選手ではない上に会話も少ないため特に言えることはないが、明るく優しく親しみやすいといったところだ。
「まあ、こんなところだな」
それぞれ特徴があるため、夜空や伊澄、オールラウンダーでどこでもできる陽依やポジションの兼ね合いで司はほぼレギュラー当確としても悩むところだ。
安定感のある選手はそれなりにいるが、逆に言えば突出していないためさらにレベルの高い安定感のあるチームに負けてしまう。
多少のリスクを取って突出した選手を起用するか、負ければ仕方ないと割り切って安定感を求めるか、難しいところである。
巧の説明を聞き終えた透は黙ったままだ。いや、なにかぶつぶつと呟いている。
「羨ましい!」
呟いているだけかと思ったら唐突に叫び始めた。正直めんどくさい。
「高校生だから彼女欲しいんだよ! 悪いか!」
「悪くないけど俺に当たるな」
こんなこと言っているうちは彼女ができないのではないか、と思ったが、煽ることになってしまうので、言わないでおいた。
しかし、この状況をどうにか脱することはできないか。幸いすでにご飯は食べ終えているため、席から離れることは容易だ。ただトイレと誤魔化してもついてくるだろう。
巧は唯一の希望である司の方に視線を向けた。
方向的にお互い教室の前方を向いているため、司はこちらを向いていないが、やがて視線に気づいたのか振り向いてくれた。
あからさまにめんどくさそうな表情を浮かべたが、司はため息をつくと席を立ちこちらに向かってきた。
「巧くん、練習のことで聞きたいことがあるからちょっといいかな?」
「あぁ、いいぞ。透、また後でな」
巧はさっさとこの場から離れたいと思い、そそくさと席から立ち上がった。
「裏切り者ぉぉぉ!」
先ほどよりも悪化した透を放置して、巧と司は教室から出た。
「巧くんも大変だね」
憐むような冷ややかな目線が刺さる。
「彼女欲しい病気なんだよ、きっと。あれがなければいいやつなんだけどな」
野球の話もそうだが、学力的にも同レベルなのでわからないところは聞ける。
「恋愛ねぇ……。まだわからないなぁ」
司も巧と同じく野球一筋だ。二年生組はわからないが、伊澄や陽依も野球バカと言っていいほど他のことには無頓着なので、恋愛事には興味なさそうだ。
巧のラブコメはまだ始まらない。