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第29話 二年生と一年生① 成長と衰退

 一年生と二年生の試合は初回からいきなり動き出した。


 先攻の二年生チームは初回から一点を先制する。一番の春海がヒットで出塁すると、二番の友梨奈が内野ゴロの間に春海が進塁。続く三番の七海がヒットを放ちランナー一塁三塁となり、四番の恭子が犠牲フライで一点先制という展開だった。


 ピッチャーは伊澄だったが、流石は二年生と言ったところだ。しかし、その後の五番の流を冷静に打ち取った辺り、伊澄も流石と言える。


 それに対して一年生チームは二点を返し逆転した。一番の琥珀は当たり前といったようにヒットを放ち、二番の奏が意表を突いたセーフティーバントを決める。そして打たれたら打ち返すといったように伊澄はツーベースを放って一点を返し、ランナー二塁三塁となったところで四番の明日香があわやホームランの当たりの犠牲フライでもう一点を追加した。


 二年生チームのピッチャー、棗も失点を引きずらず、五番の雫と六番の夜狐を打ち取った。


 二回の表に入ろうとしている状況だが、すでに打ち合いが始まっていた。


「ねえ、巧くん」


 攻守交代を行い、何球か投球練習を行ったあと、試合をじっくりと観察しながらふと何かに気がついた美雪先生に声をかけられる。


「なんですか?」


「一回もそうだったけど、さっき二回が始まる前に伊澄ちゃんと陽依ちゃんが胸を叩いてたけど、何か理由とかあるのかな?」


 美雪先生が言っているのは回の始まりに伊澄と陽依がお互い向き合って拳で胸を二回叩いていたものだろう。


「たぶん二人のルーティンだと思いますよ」


 記憶が正しければ以前の試合でも二人は同じことをしていた。恐らくどちらかがピッチャーの際に行うと決めているのだろう。


「あー、なるほど。私はそんなに気にしたことなかったけど、学生の時の同じバスケ部の子もそういうのしてたかも」


 実際にルーティンを大切にしている選手は多い。打席に入る際に右足、もしくは左足から入るとか、ピッチャーがグラウンドに入る際にどちらの足から入るとか、あとは打席前に肘や肩、顎などを触ったりなど。もっと言えば試合前には何か決まったものを食べるなどもそうだ。


 調子が良い時にしていた行動と同じ行動を取る願掛けのようなものだ。


「ちなみに巧くんもルーティンあるの?」


「大事な勝負の時とかはグローブとボールの土を払ってロジンを指に付けるくらいですね。そこまでこだわりもないので」


 そもそもあまり気にしたこともなかった。投球前の動作自体良くあることでもあるが、集中する際には決まった動作をしていたというだけなので、正直ルーティンとは言えないかもしれない。


「あ」


 こうやって話しているうちに二年生チーム六番の魁にあんだを安打を浴びている。球数もそれなりに粘られているようで、やや苦しいところだ。


 しかし、伊澄は落ち着いている。問題はなさそうだ。


「伊澄ちゃんがすごい選手だっていうのはわかるけど、実際どのレベルなの?」


 美雪先生の問いかけはやや難しいところだ。あくまでも客観的な意見にもなるし、選手の能力が数値化できるわけではないため、どのように言えば良いのかわからない。


「そうですねぇ……」


 夜空は圧倒的にこの合宿メンバーの中ではトップだろう。走攻守の総合的なことを客観的に判断しただけだが。それに次ぐのは琥珀だとも思う。


「明鈴はもちろん、水色でも恐らく主力選手ですが、光陵だと当落上ですね」


 それでも甲子園出場校でレギュラー争いができるというのはすごいが、光陵の野球部は新設されてから日が浅いということもあって選手層が薄い。


「一年生限定で県内であればダントツで伊澄がナンバーワンピッチャーですね。ただ、強豪国に入ってたら期待の一年生ということでベンチ入りできるかもしれないってところでしょう」


 トップレベルの二年生よりは下だが、それなりというレベルの二年生と比べると上だ。上位も打てるが、どちらかと言えばピッチャーと守備がメインだと考えている。


「明鈴で限定するなら夜空に次いでナンバーツーですね。打撃だけでいくなら伊澄と七海で比較が難しいかなってところです」


 守備で言えば煌が伊澄と同等かそれ以上だが、やや判断に困る差ということと打撃の貢献が伊澄の方が圧倒的なため、ここは触れないでおく。


 美雪先生は「へー」と言って実感は湧かないようだ。


「まあ、順当にいけば二年後には日本代表でもおかしくはないですね」


 もちろん高校で伸びる選手も多いため確実とは言えないが、今後ストレートの球威や変化球のキレ、もしくは守備力の向上や打撃でもホームランが増えでもしたら基礎能力を鑑みるとありえない話ではない。


「すごい子なんだねぇ」


 日本代表と言ったらなんとなくすごさがわかったようで、納得の表情を浮かべる。


 そうこうしているうちに伊澄は七番の梓を三振、八番の光をライトフライと打ち取っている。


「まあ、ピッチャーとして個人的に言うなら、水色の三年生の平河さんとか、琥珀とかと一長一短って感じですね」


 ストレートの球威だけなら秀が一番だ。打ち取る技術が高いのが琥珀、打ち取る技術もあり三振も奪えるのが伊澄と言ったところか。なんなら純粋に球速だけなら黒絵が一番だし、センスや将来性を感じるのは夜狐だ。


 伊澄は九番の棗から得意のカーブで三振を奪い、ベンチに戻っている。


「問題は今後、完成度の高い変化球をどう進化させるかですね」


 すでにカーブの球種やキレの完成度は高い。さらにキレが増すことはあるとしても、その後現状維持のままであれば衰退しているのと一緒だ。他の選手が成長すればその分成長しなくては置いていかれるのは明白だ。


 美雪先生との会話の結果、巧はそのことに頭を悩ませることとなった。

試合は始まったのに会話パートだよ!

会話しながら試合進めたかったんですけど、会話してるのに試合が進まないのはおかしいのでこの形となりました。

試合パートでは今のところ見どころよりも分析がいいかなと判断しました。

次の話からは試合パート増えつつも急ぎ足でやっていこうと思うので、合宿編終わってからを楽しみにお待ちいただけたらと思います!

もちろん合宿編もあといくつかイベントがあるのでそちらもお楽しみください!

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