オールラウンダー
「フォウさん、後は頼んでいいですか?」
「ええ、もちろんです」
「ていうか、フォウ強いんじゃん……」
クロネが少しすねたように言う。
「いえ、あれが精一杯ですよ」
「むぅ……、言っとくけど、私の方が強いんだからね!」
何故か切れるクロネに、フォウさんは困惑した笑みを浮かべた。
「えっと……」
ったく、何をやってんだか……。
クロネの身体をグイッと坑道の方に向けた。
「フォウさん、すみません、あまり気にしないでくださいね、あはは……」
「いえ、私は大丈夫ですので。それよりもミルメコレオが5体になったら迷わず私を呼んでください」
「え……?」
「あの魔獣は5体以上になると群生体に変異します、単純な攻撃力等が上がるのは勿論、繁殖力と凶暴性が通常の比ではありません、非常に危険です」
「群生体……、わかりました、その時は必ずフォウさんに報せます」
フォウさんと野次馬達を背に坑道に向かいながら、俺は外套の内ポケットにある試験管で、クロネ用の錬成ポーションを作り、ほいっと、クロネに投げ渡す。
「まずは、こいつで防御力アップ+状態異常無効だな。後は相手に併せて属性付与をしよう」
「おっけー、いっただきー」
クロネがポーションを飲み干した。
「むわーっ! 力が湧いてくるわね!」
「さあ、準備はいいか?」
「もち!」
「よし、行くぞ!」
俺達は坑道の奥へと走った。
しばらくすると、広いホールのような円形の空間に出た。
周囲にはいくつもの大きなトンネルがある。
「うわー、広いね」
「ああ……」
――奥の方から叫び声が聞こえてくる。
「見~つけたっ!」
クロネが凄まじい速さで声の方へ駆けだした。
「ちょ⁉ ったく……」
俺は試験管を一本取りだし、強化系ポーションの錬成をする。
パワーポーションとスピードポーションをベースにタイムブースターを一滴付与。
これで集中力向上+体力強化+反応速度上昇+筋力増強となる。
「おぉ⁉ は、速い! 俺じゃないみたいだ!」
クロネに追いつくと、そこには白狼のメンバーの一人が倒れていた。
「まだ、生きてるみたい」
「よし、助けよう」
男を起こし、俺はハイポーションを飲ませた。
「う、うぅ……、あ、あんたは!」
「気付いたか? 状況を教えてくれ」
「た、大変だ、魔獣が四体もいる! この奥でシリウス達が戦ってる、か、加勢を頼む!」
もう四体か……増えるのが早いな。
見つけたらすぐに一体は削らないと。
「わかった、ここで待機してろ、俺が合図したらフォウさんを呼びに行け」
「あ、ああ」と、男は何度も頷いた。
「クロネ、四体らしいぞ、行けるか?」
「んー、いけるでしょ? 私、またレベル上がってるし」
「い、いつの間に……」
「テッドとやり合った時にね、今は149になってるわ」
「ま、マジか……」
『グォォオオオオオオーーーーーーー!!!!』
凄まじい咆哮が坑内に響く。
「急ごう!」
「ええ!」
奥に走ると、巨大な魔獣とやり合うシリウス達がいた。
フォウさんの言うとおり、身体の前半分が凶暴な獅子で、後ろ半分は巨大な蟻……、何とも形容しがたい不気味なフォルムだ。
「クッ! 怯むな! シンは背後に回れ! フランク、ガードだ! レイはフランクを回復し続けろ!」
へぇ、なかなか良い連携だな、指示に対する反応が早い。
流石はAランクだ……。
だが、前に二体、後ろに二体。
こりゃ加勢しなきゃ死ぬな。
あ、そうだ! 丁度良い、彼奴らで、ちょっと試してみるか。
「おい!」
俺はシリウスにポーション銃を向けた。
「お、お前ら……何をしてる! 逃げろ!」
「いや、助けに来たんだが……」
「ここは俺達が食い止める! 命を無駄にするな!」
シリウスは真剣に叫んでいる。
あ、うん……、気持ちはありがたいんだが……。
ていうか、意外と良い奴なのかも知れない。
「ねぇ、クライン、どうする?」
「とりあえず、ちょっと試していいか?」
シリウスがさらに叫ぶ。
「早く、逃げるんだ!」
俺はシリウス達を観察する。
腕の出血は……もう血が止まってる、大した事はなさそうだ。
それよりも、右足を庇ってるようだ。
下手したら折れてるか?
盾役は大分押されてる、恐らく防御力が僅かに足りていない。
回復役の魔法で補っているが、落とされるのは時間の問題だ。
ってことは、盾役の防御を上げれば、回復役が別の補助魔法を使えるだろう。
魔獣の後ろにいる奴は……無傷っぽいな、後回しにしよう。
「んー、ハイポーションくらいかな……」
俺はポーション銃を握り、引き金を引いた。
シリウスの身体が一瞬、緑色に輝く。
「⁉ え、な、何だ⁉」
立て続けに、盾役にプロテクトポーション、その背後で回復を掛けている男にはマジックポーションを撃つ。
「うぉ! 何だこれ⁉」
「すごい……魔力が湧いてくる」
二人とも、突然の事に驚いているようだ。
「何それ! すごい便利ね?」
「ああ、もしかしてって思ったんだが、この銃はポーションの『効果』を飛ばしているみたいだ」
「おい! 何をした⁉」
シリウスが大声を張る。
あの様子だと、十分、回復しただろう。
「いいから、気を抜くな! 後ろの二体は任せろ! お前達は前の二体を足止めしておけ!」
「な――、何を⁉」
唖然とするシリウスを無視して、俺はミルメコレオに銃を向けた。
「魔獣相手だと、気が楽だ」
――サンダーポーション×濃度3倍。
通常、サンダーポーションは低位レベルの黒魔術師が使う『雷撃』と同等の雷を発生させるのだが、これは限界濃度まで濃縮した俺のオリジナル。
自分でも驚く程の、凄まじい破裂音と閃光が迸った!
いける、俺は確かな手応えを感じていた。
中位~高位レベルの黒魔術師が放つ『雷撃葬』に匹敵する威力。
これなら、前線から後方支援までこなせるオールラウンダーになれる!
『グォオオーーーー!!!!』
一体は木っ端微塵に砕け散ったが、もう一体は残っていた。
思ったよりも、銃の使い勝手が良い。
何より、ポーションの濃度で強弱を付けられるのは発見だ。
戻ったら、ベルカに礼を言わないとな。
『グガルルァァアア!!』
ミルメコレオが俺に向かって突進してきた。
試験管を装着し、銃を向けようとすると、
「クライン! 次はわたしっ!」
言うと同時に、クロネはミルメコレオに向かって突進した。
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