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レベル0のポーションマスター ~どん底に落ちた没落貴族、レアスキルに目覚めたので自分の領地を手に入れる~  作者: 雉子鳥幸太郎


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野心家

 ――メンブラーナ領・リスロン商会。


「思ったよりも順調で何よりです」

 ギルモアが紅茶をテーブルに置きながら言った。


「……そうだな」

 葉巻を燻らせながら、リスロンは眉間を押さえた。


「何か心配事でも……?」

「いや、大丈夫だ。それよりも『NONAME(彼ら)』は大丈夫か?」

「ええ、問題ありません。初めこそ警戒していましたが……、私を見て安心したのか、今では進んで作業を手伝っております」


「そうか、ならいい。……で、スキルは調べたか?」

「はい、全員にスキルがありますが……、中でもリーダー格のフォウは『精 霊 術 師エレメンタル・マスター』の職能(クラス)、しかも『第三の眼(サード・アイ)』を開眼しています」


 精霊術師は希少な職能である。

 人間や獣人には発現せずエルフ、しかも混血のエルフ族だけが得られる職能だ。


 能力は、地・水・風・火の四大精霊の力を行使する強力な精霊術。

 さらに一部の者には『第三の眼(サード・アイ)』と呼ばれる、ブースターの役割を果たすパッシブスキルが発現することがある。


 ただ、そのような者が居た場合、即座に能力に制限が掛けられてしまう。

 純血達(彼ら)は、混血が力を持つのを好ましく思わない。 


 特にエルフ族にとって『血』とは絶対のもの……。

 決して相容れる事はないのだ。


「ほぅ……、良くアローザが手放したな」

「恐らく隠していたのでしょう。私にも覚えがあります……」


 ギルモアは目線を落とした。


「そうか、余計な事を思い出させたな、すまん」

「いえ、お気遣いは無用です」


「……ギルモア。私はどこまでいけるだろうか?」

 リスロンは木の指輪を触りながら言った。


「あの光、どうしても欲しくなってしまうのだ……。常に心の片隅で渇望という名の種火が燻っている。私は身の程知らずの愚か者だよ……まあ『野心家(アンビシャス)』の職能のせいかも知れんがな」

 苦笑しながら、リスロンは紅茶に口を付けた。


「我ら混血が純血に勝るのは……職能においてのみです。純血は王以外、平均的な能力しかない『森王守役(フォレスト・ガード)』の職能しか持ちません、私のように『暗 黒 騎 士(ダーク・ナイト)』やフォウの『精 霊 術 師エレメンタル・マスター』のような職能は――」


「それ以上は言うな」


「はっ、失礼しました……」

「今はまだ早い。まずはこの森を、そして――」

「リスロニアの再興、ですね?」


 紫を帯びたギルモアの瞳は静かに燃えている。


 かつて、エイワスもレグルスも無く、この地がひとつの森に覆われていた時代。

 森を治めていたのはエルフ族三代目の王、結界士ハイフェリオンと、始まりの栗鼠王、リヴァイン・ダイトであった。


 二人の王は長く平和を保った。

 だが、急速に力を伸ばした人間達が、エイワス王国とレグルス皇国を建国。

 瞬く間に、森は二分された。


 人間との戦いで、大半の領地を失ったハイフェリオンは、リヴァイン・ダイトに盟約の指輪を渡すと、森の深層域に結界を張り、外界との交流を絶った。


 栗鼠族は代々の王が指輪を受け継ぎ、その盟約を継承してきた。


 エルフ族と違い、栗鼠族の王は血や力で選ばれる事はない。

 これは生来、栗鼠族という種が弱く、短命だからだ。


 故にその時代、一番強く野心を持って生まれた者が『栗鼠王(スクイラル・キング)』と呼ばれる。


 見分け方は簡単だ。

 王が野心を燃やす時、その右眼もまた燃える――。


「ふっ、リスロニアか……それも悪くないな」

 鼻で笑ったリスロンの右眼は、紅く燃えるように輝いていた。



 * * *



「ん……んん……」


 目を覚ますと屋敷のベッドの上だった。


「大丈夫? 起きられる?」

 クロネが心配そうに声を掛けてきた。


「あぁ……うん、大丈夫。のぼせたのか……」

「突然ぶっ倒れるからさー、皆で運んだんだよ?」


「悪い、ありがとう……って、えっ⁉」


 あれ? 俺、全裸ですけど?


「ちょ、皆で運んだって言ったよな?」

「え、うん、そうだよ」

「もしかして……裸のままか?」

「そりゃそうよ、温泉で倒れたんだもん。あ、獣人の子達が()()()()()をつついて遊んでてさー、もうみんな爆笑だったの、くくく……」


 クロネは思い出して笑い転げている。


 さ、最悪だ……。

 だが、助けてもらった手前、何も言えない。


「ま、まあ、いいか……」

「それよりクライン、バロウズさんが起きたら部屋に来て欲しいって言ってたよ―」

「バロウズさんが? 何だろうな……」


 俺は服を着替え、身支度をすませる。

「ちょっと行ってくる」

「ほーい」


 *


 バロウズさんが泊まっている部屋を訪ねた。


「おぉ、どうじゃ? 調子は?」

「ええ、もう大丈夫です」


「くくく……、それにしても、あんなに笑ったのは久しぶりだ」


 必死に笑いを堪えている。

 これは当分、酒の肴にされそうだ……。


「で、どうしたんですか?」

「あぁ、あの温泉について相談しようと思ってな。色々と皆で話し合ったのだが、入浴料を取らずに、村の名物として無料で開放するのはどうだ?」


「無料で?」


 人を集めるためだろうか?

 だが、大勢の人が訪れるようになると、掃除や管理も大変だと思うが……。


「正確に言えば、無料の(てい)だな。近くに大きな宿泊施設を建て、そこのスタッフが同時に温泉の管理も行えば一石二鳥というわけさ」

「なるほど、確かにそれなら……」


「まあ、最初の枠組みは大きく考えておいて、やっていく内に改善していけば、自然と良い形に落ち着くだろう」

「そうですね。あ! 実は薬湯が色々ありましてね」


 俺はバロウズさんに色々な種類の薬湯を紹介した。


「なんと、これは良い! 全て言い値で買い取ろう」

「え……そんな、悪いですよ」


「何を言っておるのだ、それだけの価値があると踏んだからだよ。その代わり、他には売らずに村の売りにしよう。まてよ……、湯治も出来るとなると長期滞在の客も見込める、ということは整体師のマッサージサービスも有りだな……」


 やはり商売人だな。

 もう次の商売を考えてる……。


「そうだ、その薬湯だがクライン以外に作ることは可能か?」

「んー、まあ、材料も一般的な薬草が殆どですし……薬師か錬金術師の方なら作れるかと」

「なら、こちらで薬師を用意する、クラインは製法を教えてくれ。そうすればわざわざクラインが作らなくても済む、報酬は毎月売り上げから一定額を払う、どうだ?」

 

 確かにそれなら手間もかからないし、助かるな。


「ええ、ではそうしましょうか」

「よし! なら早速手配しよう」


「あ、バロウズさん、ちょっと訊きたいんですが、このくらいの容器って作れたりしますか?」


 俺は収納袋から、小さなガラス瓶を取り出した。

 カイルから頂いた荷物の中に入っていたもので、元々は香水が入っていた瓶だ。

 これくらいの小瓶に水を入れて携帯しておけば、いざという時に役立つし、戦闘にも使える。


「これは香水瓶だな……」

「ええ、装飾なんかは必要なくて、大きさがそのくらいなら良いんですけど」


 ちょうど握れば手に収まるサイズ。

 これをコートの内側にでも差しておけば、使い勝手が良いはずだ。


「わかった、知り合いの硝子工房に声をかけてみよう」

「ありがとうございます、よろしくお願いします!」


「なぁに、礼を言うのはこちらの方だよ」

 俺はバロウズさんと握手を交わした。


ちょっとでも興味を持ってくれた方、

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よろしくお願いします!


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