日記
ずっと入院生活を送り続けている、静香。
彼女の病院での生活とは、どのような物であったのか。
それを見る為に、今回は日記形式でそれを伝えていこうと思う。
静香がつけていた日記を、ここに載せてみようと思う。
日記
主演:青水静香
6月○日。
初めて私は、この病室に入院した。
原因は、ガンらしい。
けど、早期に発見出来たのが幸いしてか、命に別条はないらしい。
後4か月程はかかるけど、一年とか二年とか、長い間入院しているわけではないらしい。
けど、テレビとかでよくガンについてのテレビがやっていたりするけど、まさか自分がなるとは思ってもみなかったことだ。
……みんな、元気にしてるかな?
(中略)
7月○日。
夏休みに入りかけたとある日。
早乙女さんが見舞いに来てくれた。
「元気?」という問いに対して、「はい」と答える私。
その後、何食わぬ日常会話をしてその日を過ごし、
「じゃあね!」「はい。またいらしてくださいね」「もちろん!」
こんな会話をして、その日は来客は誰もこなかった。
けど、早乙女さんの話に出てきた「けんた」って言う人は、どんな人なのだろうか?
(中略)
9月○日。
9月も終わりに近付いてきたその日。
この病院に、急患が運ばれて来たらしい。
らしいと言うのは、この話はいろんな人から聞いた話だからだ。
実際に私が見たわけではない。
確か、私と同じくらいの年の男の子ということだったけど、どんな人なんだろう?……ちょっと不謹慎だけど。
(中略)
9月×日。
運ばれて来たと言う話を聞いた次の日。
特にすることもなかった私は、空を見に屋上へと向かった。
フェンス越しに見える景色は、とても青かった。
雲一つない空だったと思う。
もうここまでくると、私は退院出来るのを待つのみだ。
そんなことを考えていたその時。
私は―――一人の男の子に出会ったのだった。
始めに見た時は、優しそうだなという印象を受けたが、実に印象通りの人だった。
どうやら彼は記憶を失ってしまったらしく、自分の名前すらも、人伝に聞いただけらしい。
名前は確か……『木村健太』君。
早乙女さんが言っていた『けんた』って、この人のことなのかな。
9月△日。
私の心の中で、次第に健太君の存在が大きくなって来ているのが感じられた。
健太君の笑顔が、頭から離れない。
健太君のことしか、考えられない。
でも、健太君のことを考えると、体が熱くなる、心臓がドキドキと喧しい程に音を鳴らす。
この気持ちは、一体なんなのだろう?
でも健太君はその日、退院した。
(中略)
10月○日。
やはり健太君のいない生活は、前と同じで静か過ぎて、寂しい感じがした。
たまに屋上に行っては、来てることを期待してみるのだが、結局来ない。
こんな寂しい生活をしていたのかと、実感してしまった。
(中略)
1月○日。
年が明けて間もない時に、私は倒れた。
理由は肺炎だったので、普通に治療をしていれば治るものであった。
そしてその日、私は見舞いに来てくれた健太君に、告白した。
健太君に対する私の想いが、爆発しかけていたからだ。
答えとして返ってきた言葉は、「……ごめん」だった。
その時私は悟った。
私は、健太君にフラれたのだと。
けれど、最後に一回だけ、キスをさせてもらった。
最初で最後のキス。
私は恐らく、もうキスをすることはないだろう。
何故なら、私は健太君以外の男の子を、好きになれそうにないからだ。