オリエンテーション旅行の裏側
これを読む前に、まず『私立相馬学園 〜a daily life〜』を
読んで頂けると、数倍面白さが増すかもしれません。
私立相馬学園と里川高校による、合同オリエンテーション旅行が、4月中に行われた。
その2日目、相馬学園の生徒達は、ハイキングに出かけていた。
これは、そのハイキングの時に里川高校の面々が何をしていたのかを描くお話である。
ハイキングの裏側 主演:早乙女愛
オリエンテーション旅行で、私は健太と再会出来た。
とてもうれしかった。
そして、自分の想いを健太に告げる時が来たと思った。
私は、宿で健太に出会った時、告白しようとした。
けど、その告白は、見知らぬ人の邪魔によって、阻止された。
分かってて話しかけて来たのか、何も知らずに話しかけたのかは分からないけど、とにかく
邪魔された。
でも、それでよかったと思ってる。
もし、あの時、健太君からの返事が『No』だったらと考えると……。
友達という関係を崩したくはなかった。
けど、その先まで行きたかった。
……なんだか、矛盾してるね。
怖かった。
関係が崩れてしまうのが、怖かった。
だから、これでよかったんだと、私は思う。
だからこそ、いずれはきちんと告白しなきゃいけないんだ。
私は、告白が出来なかったその日、布団の中でそう考えた。
「ねぇねぇ、好きな人とかっているの?」
同じ部屋で泊まっている人が、私にそう尋ねて来る。
こういう旅行とかでは、お馴染みの質問だ。
「えっと、この学校には、いないかな……」
「それじゃあ、他校にはいるの!?」
「どんな人?教えてよ!」
こういう時の団結力というのは、時に恐ろしいものである。
私はあっという間に、1対4という勢力図を見せつけられてしまった。
「ま、まぁ、他の学校には、いる、かな」
「それでそれで?」
私に次の言葉を催促してくる。
何というか、その勢いは、凄かった。
「優しくて、かっこよくて、強い人なんだ……って言ってて自分が恥ずかしいよ〜!」
「お〜!」
部屋の人達は、そんな私を見て、何やらうなづいている。
ま、まずい……。
「そ、それよりも、美紀ちゃんは誰かいるの?好きな人」
「私はいないよ。それより、愛の話、もっと聞かせてよ」
切り返し失敗……。
その後、私は、先生からの呼び出しがあるまで、ずっと聞きだされていた。
その後。
「あっちの学校はハイキングか。こっちは飯盒炊飯だって言うのに」
クラスメートの一人が、そう愚痴る。
そう、このオリエンテーション旅行は、いくら両校合同だからといっても、同じことをする
わけではない。
今は、うちの学校は飯盒炊飯で、相馬学園はハイキングに行ってるらしい。
だというのに、誰か一人足りない気がするのは気のせいかな……。
「ああ、気のせいじゃないよ。何か、直樹の奴がいないっぽいよ」
「直樹君が?」
何考えてるんだろう……(注:分からない人は、私立相馬学園 〜a daily life〜の
その24〜28を参照)。
「何してんだろう……」
「気になる?」
「全然」
即答だった。
「そりゃそうだよね。愛はなんて言ったって……ね♪」
「う、うん……」
もはや広まっているみたいだ。
名前はギリギリ気づかれてないみたいだけど。
もしこの学校に情報屋がいたとすれば、かなりまずいことになるけど、さすがにそんな人は、
「まぁ、名前はまだ分からないけど、情報屋として、必ず見つけるわ」
いた……。
「ちょ、そんなことで本気にならなくても……」
「いいっていいって、気にするな」
「何を!?」
「とにかく。私は名前を調査するとしますか……個人的には、木村健太辺りが怪しいけど」
「な、何で?」
ビックリした。
どうして健太のことを知ってるんだろう……。
「情報屋を甘く見るな。身辺調査は基本だぞ」
「無断で私の身辺調査しないでください」
思わず敬語を使ってそう言っていた。
「あはは。気にしない気にしない」
普通気にすると思う。
「ま、近いうちに見つけちゃうんだから、覚悟しなさいよ」
ああ、きっとすぐに分かっちゃうなと、私はこの時思った。
「そんなわけで、これからもよろしくね、愛」
「うん、こちらこそ」
私達は、手を握り合った。
集会は、両校合同で行われる。
そして、今は相馬学園側の先生が、話をしていた。
「以上で、ミーティングを終わります」
あ、今終わったっぽい。
「まぁ、忘れて正解だろうな」
「主犯格は吉行でしょ」
どこかから二人の会話が聞こえてくる。
言うまでもない。
吉行君と健太だ。
「おい」
その時。
ふと、誰かに呼ばれるような声が聞こえた。
けど、その相手は、私ではなく、健太だった。
健太の周りに、人がたくさん……って私の愛好会の人達だ。
「おいおい、健太も変なのにモテるみたいだな」
「これはどう考えても違うでしょ!!」
吉行君の言葉に、健太がそう突っ込んでいる。
ん?
何で健太だけ呼び捨てなのかって?
それは、健太とは、幼い頃からの幼馴染だからだよ。
「会長によりますと、この男、付き合っている女性がいながら、愛ちゃんにまで手を出しているとのこと」
「愛ちゃんにまで毒牙を向けるとは……なんてひどいやつなんだ!」
「いや、別に僕誰とも付き合ってないんだけど……」
健太、今フリーなんだ。
これはチャンスかも……。
けど、その前に、今は健太を助けないと……!!
「健太君に近寄らないで!!」
「って愛!?」
健太の前に、私は立つ。
すると、隣に、
「健太君から離れてください!!」
「ってかなえさんまで!?」
あの人も立っていた。
確か、お風呂で知り合った人だ……。
……健太のこと、好きなのかな、やっぱり。
「そうか……お前はそこまで優柔不断だったのか」
「この女たらしめ!!」
「日本男児の恥だ!!」
「主人公補正反対!!」
「ええ!?そ、それは誤解だよ!!」
「問答無用!!」
「歯ぁ食いしばれ!!」
「え〜!?またこの展開なの〜!!」
結局、健太は追いかけられる羽目になったみたい。
努力した意味、なかったかも……。
そして、私の好きな人の名前が、木村健太だって言うことがばれたのも、その数日後のこと
だった。
さてさて始まりましたお祭り企画。
私立相馬学園 〜another tales〜の始まりです。
愛「で、今回は何で私が選ばれたの?」
それはですね。
その55時点で一番出番少ないのが、あなただったからです。
愛「私、影薄いのかな……」
そうではないのですが、どうも他校の生徒っていう点が邪魔して……。
愛「うまく話が作れない、と」
そういうことです。
ちなみに、番外編でも、しばらくは主役張ることないので、悪しからず。
愛「え〜」
はいはい。
あ、予定していたタイトルと一部変更する場合もございますので、お気をつけて。
愛「それじゃあ次回もよろしくね〜」
いつ更新されるか分かりませんけど(おい)。