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第七話 働いてみた。



 自分の謎能力について調べていて”スキップ”なるものに触れたら、いつの間にか夜が明けていたでござる。

 ……どういうことだってばよ?


[ミユ:ユウ兄おはよ……ユウ兄が生きてる!? 夢じゃないよね!? 夢じゃないよね!?]

[ユージロー:あ、ああ]


 ミユさんや、事実徹夜明けの人間の肩を掴んでグラングラン揺らすのはやめて下されしんでしまいます。

 というかテキストウィンドウ邪魔臭い、オフにしよう。


「ユウ兄私思ったんだけど……」

「うん」

「……もうこの町で一生暮らさない?」

「え」

「だって、ユウ兄この町の外出たら死んじゃうし……私ユウ兄が死ぬところなんてもう二度と見たくないもん」

「ミユ……」


 ああ、ああああ!

 なんて、なんて兄想いの妹なんだミユ!

 お兄ちゃんは嬉しい!

 

「そう、だな。それもいいかもしれないな」


 そうだよ、そもそもこの町から出れない時点で詰んでいるじゃないか。

 ならこの町で可愛い妹と一生を終えるのも――



* *



「ダメですが?」

「ですよね」


 気づくと俺は女神さまの部屋にいた、ということは――


「睡眠不足で俺死んだのか……」

「いえ寝落ちしてるだけです」


 この部屋気軽に来れ過ぎだろう。


「前に言った通り、あなたが魔王を倒さないというのなら妹様は返……本来の転生先の現代に送りますからね!」

「マジ、ごめんなさい。とはいっても、弱すぎる俺はどうすればいいのか分からないんだが」

「確かに、まさか妹様のテレポーテーションでチュートリアルをスキップしてしまうとは……」


 やっぱりそうだったのか。


「教えてくれよ女神さま! これじゃあんたの勇者ダメダメリストが更新されちまうよ!」

「そういう事言わないでください! こう見えても気にしてるんですから!」


 こう見えてもって言うか知ってるし、ステータス画面で丸わかりだし……女神さまをタッチしてみると。


 [自分の送り出す勇者が尽く活躍しないのを気にしている]


 ほかステータスと共に、そんな悩みなども表示されるのだ。

 超便利、この呼ぶならば……そうだな……”ギャルゲースキル”のステータス確認画面!

 ちなみに以前来た時にはスリーサイズと見た目との乖離でパッド入りを言い当てていた。


「……いいですか勇者様。経験値とは敵を倒すことだけでしか稼げないわけではないのです」

「と、言いますと」

「つまりは――そこら辺の岩を壊しても微小ながら経験値が出るのです!」


 岩を壊す経験ってなんだ……。


「ともかく! あらゆることでレベルというのは上げられるものです、小さなことからコツコツとですよ――」



* *



「ユウ兄、おーい?」

「ハッ!」

「……どしたの?」

「寝てたらしい」


 おそらくは事実徹夜明けのコンディションと女神さまの呼び出しのダブルパンチで寝落ちしてしまったらしい。


「とりあえず……ご飯食べにいこ?」

「あ、ああ」


 そうして俺たちは宿を出て朝食を食べに向かった。





 しかし俺のせいでこの町から進めないとなると、この町で俺は経験値を上げなければならないらしい。

 もっともこの町には結界? とやらが張ってあるらしく、モンスターの類は侵入できない平和な地となっているのだ。

 だからこそ女神さまの言ったようにそこらへんの岩でも壊さないと経験値はたまらないようだ。


「まいどありー」


 考え事をしながら、異世界トーストと異世界ハムエッグを食べ終えた。

 正直異世界要素が分からないのだが、パンに関しては品種改良によって生み出されたという”一斤食パンの成る木”から獲ったものを切って焼いたものらしい。

 異世界ハムエッグに関しては異世界チキンから獲れた新鮮異世界エッグと、異世界豚を加工した異世界ハム……いや、普通に美味いけど異世界って付ければいいものでもないと思うのだが。


 そして支払いもまたミユの稼いだお金からと思うと、やっぱり情けない。

 ……この町で経験値を稼ぐ方法を考えるとともにお金を自力で稼ぐ方法を考えなければ。

 店を出て歩いた先にあった”ジャヌコ 異世界ゼクシズ支店”と書かれた一見普通の商店風にしか見えない店の前に貼られていた張り紙に――


「ミユ、俺働くよ」

「ええっ」


 俺が見つけた張り紙はジャヌコのバイト募集の知らせだった……よし、働くぞ!




 

 ジャヌコと名乗るだけあって異世界転生者向けの商品をどういう流通ルートか揃えており、その商品について大体しるところの異世界転生者の俺は即採用となった。

 異世界転生特典に持ってきたらしいレジスターの扱い方を覚えつつも、スーパーのレジバイトをすることになったのだった。


「今日からよろしくねカズサ君」

「よろしくお願いします」


 ジャヌコ店長は中年の男性で、どうやらこの異世界にレジスターを持ってきたのも彼のようだった。

 しかし女神さまの勇者監査も適当なんじゃないかと思ってしまう、レジ持って転生するような人間が魔王を倒すとは考えられないだろうに。

 とはいえ人当たりのいい店長の教育のもとスーパーのイロハを覚え俺は――


<レベルが10上がった!>


 どういう経験値なんだよ。

 確かに女神さまの言っていた通りではあるが……バイトで上がる経験値とは一体。


 

 こうして初日のバイトを終えた。


「ただいま」

「おかえりユウ兄、おつかれさま」

「ありがとミユ。ふぅ! 労働の喜び!」


 この異世界にきて貧弱すぎて流石に自信が無くなってきた俺に、このバイトという存在はかろうじて意義を与えてくれるものだったのだ。

 そうこうしてまた翌日もバイトに入ることになった――時間で言うところの開店時間から閉店時間まで、ちなみに七時から二十三時までである。





「そんないきなりロングで入って大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ、こう見えて若いんで!」


 モンスター相手には即死してしまうが、和解だけに一般人の平均値よりは多めぐらいに体力はあるつもりだ。

 そうして俺はレジ仕事から、バックヤードの仕事まで教えてもらい――


「休憩入っていいよ」

「あざーす」


 そうして俺は四時間ごとの休憩に入って、格安で飲み物とパンを買って昼食としていた。

 この間に出来る限りの研究をしておきたく思い、いつものギャルゲースキル画面を開いて色々イジっていたのだが手が滑って――スキップ。


「あ」


 気づくとバイトが終わっていた。


「今日はお疲れさまねカズサ君」

「え、え」

「閉店処理はしておくから先にあがってくれていいよ」

「あ、あざーす」


 そうして流れ的に店を出て、宿への帰り際に考える

 ……スキップした結果、どうやら俺は記憶こそあるが身に覚えのないことばかりの経験をしたのち昼食から一瞬にしてロングのバイトが終わってしまっていた。

 これは……もしかするとスキップしまくればレベル上げ放題・稼ぎ放題なのでは!?

 

「天才か……」


 悪い思い付きをしてしまった、これならば俺の感覚的にはこの町を出る日も遠くないかもしれない!

 そうして俺はバイトのシフトを開店時間から閉店時間までのロングのシフトを毎日入れることにした。

 さぁ、明日も頑張るぞ――



* *



「いや、ほんと。この場所には”そういうこと”で来てほしくないんですけれど」 

「すみません」


 ようは俺は”また”死んでしまったのだった。


 異世界の道を歩いていたらトラックに撥ねられたとかではなく、食あたりを起こしたとかではなく、豆腐のカドに頭をぶつけたわけではなく――


「死因は過労死です」

「ほんとすみません」


 連日バイトのシフトを入れてスキップを多用しまくったバイトは、あくまで自分の感じる時間の感覚が短く思えていただけであり、別に俺の体力がグンと底上げされたわけではなかったのだった……ちゃんとその間に経験値は上がっているものの、一方で疲れていてHPも減っているのだった。

 それに気づくことなく朝から深夜までバイトをしては宿に戻り、睡眠もスキップした結果――バイト一週間目にして死んでしまった。

 ちなみに宿屋に関してはミユのお金でまた一週間ほど更新して借りている……今は話すことではないのだが一応。


「デスペナルティでレベルも減りますし、本当に何してるんですか」

「まさか、またレベル1から……?」

「いえ、割とレベルは上がっていたのでレベルは20ぐらいで下げは止まっていますが」


 なんだ、デメリットとしてレベルが1に戻されるというわけではなかったのか……よかったよかった。


「本当に、ほどほどにしてくださいね。ああ、また始末書が……飲みの席でイジられる」


 どうでもいいけど、この女神さまは会社で肩身が狭いのだろうか。

 そんなことを想いながら――



* *



 目の前にはミサさんのダイナマイトボディ、そして安定のディープなキス。

 ……これっていわゆるリスポーン地点?


 ちなみに宿のベッドで冷たくなっているのを発見された俺がミサさんに蘇生してもらったとのこと。

 ミユにまた泣かれた上にシフトを減らされたたが……こればっかりはしょうがない。 



 それからはすべて楽をしようとせず、ほどほどに働きほどほどにスキップし十分な睡眠を取ることを繰り返した。

 おそらく邪道に違いないだろうが、俺のレベルと所有金額の数字は着実に上がっていったのだった――

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