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第四話 回復してみた。



 しかし腹も膨れたし情報も得ることが出来た、大変満足である。

 それから街をぶらぶらして「また明日から頑張る」という兄妹意思の一致により店巡りは明日からとして、俺たちは借りている宿の部屋に戻って休むこととした。

 

「寝るか、おやすみ」

「ちょっと! なんで普通に椅子で寝ようとしてんの!?」

「いやだって、そのベッド一人用だし」


 一応ベッドのサイズとしてはクイーンサイズほどあるのだが、それにしても妹を椅子で寝かせるとか言語道断だし、妹と一緒に寝れば俺の理性の保証が出来ない。


「ほら、一緒に寝るよ」

「いや、いいって……」

「”バインド”」

「ちょ」


 あろうことかミユは俺の手足に拘束魔法をかけた上でベッドの上に放り投げ、隣に寝ると言いだしたのだ。


「もし今後もゴネるなら、また明日もバインドだからね」

「はい……」 


 ミユはなんというか真面目というか律儀というか、優しい子なのだ。

 さすが世界一可愛くて、世界一好きな女の子なだけはある。

 そして偶然にも手足の拘束によって俺がミユに手出しすることはできない、これなら俺が生殺しで済むだけというもの。

 よかったよかった…………ああ、ミユのちょっと香る汗の匂いイイ……興奮して眠れないかと思えば、意外とぐっすり眠りにつけたのだった。



* *



 夢を見る。


 しかし、こう妹のミユがいるだけで俺は幸せで仕方ないのだ。

 もしミユを連れてこれなかったら鬱っていたかもしれない、この選択は正しかったと胸を張って言える。


 ……というか正直世界を救うとかどうでもいい、隣にミユがいるだけで割と世界とかどうでもいい。

 いっそこの異世界でミユとのんびり農業生活でもして、スローライフを送りながら家庭を築くのもいいかもしれない。

 そうすれば俺だって死なないし、ミユが危険な目に遭うこともないだろう……これは名案かもしれない。

 魔王の話などをコナから聞いて、ちょっとやる気が出てきた気がするが――所詮気のせいなのだ。

 よし、明日からどっかで働きながらマイホームでも探すか!



「そうはいきますか! 上総ユージロー様!」



 そう夢に見ていたと思っていたら、突然俺の脳内に響き渡るような聞き覚えのある声。


「なにサボろうとしてるんですか! 転生特権だけ踏み倒す気ですか!?」

「いや、だって俺が魔王倒すとか無理じゃん」


 いやなんとかなる、とか言ったけど現実はやっぱりなんとかならない気がする。


「なんでですか! 魔王の娘の世代だからこそ、女性攻略に長けたあなたを召喚したと言いますのに!」

「話によれば全盛期の魔王手前位の強さらしいじゃん、おいおい瞬殺だよ」

「そうですが……だからこそあなたには期待していません!」


 ぶっちゃけすぎだろ、てか期待してないんかーい。

 そして魔王の娘の強さはせめて否定して。


「期待してないなら俺頑張る必要ないじゃん……」

「だから! あなたが攻略した女子たちで戦うんですよ!」


 ……だから俺ってことかよ、元ギャルゲー主人公で女の子を攻略した経験があるからこそ――異世界で強い女の子を攻略して集めた上で、魔王軍と相対すると。


「……まさか、この宿屋の店主も対象なんてこと?」

「それは分かりませんが、一応あの人何気に元王国軍のS級僧侶ですよ」


 マジかよ、すげえなミサさん。


「ともかく! あなたは魔王を打ち倒す為の女の子を集める役割なのです! 分かりましたか!」


 ギャルゲー主人公でしかない俺とはいえ、女子頼りのパーティとかカッコ悪い……。

 というか流れ的にパーテイ最弱の「あいつ狙っておこーぜ」って狙われて即死する未来しか見えない。


「分かりません! 俺はこの町で愛する妹とスローライフします!」

「ああ……なんでこんな方を選んでしまったのでしょうか、大体転生特典の妹様もアイシア先輩が召喚しようとしていた転生者を横取りする形になってしまったのに……今度飲み会でどんな顔して会えば……」


 女神さま同士で飲み会いしてるのかよ、割とフレンドリーな職場なんだろうか。


「なら諦めてください! 俺は妹と幸せに過ごします!」

「分からずやですね! ……なら、いいでしょう。もし魔王を倒す気が無いのなら――妹は返品させてもらいます」

「おい」


 それは女神さまと言っても言っちゃいけないことだろう……!


「俺のミユを物みたいに言うんじゃねえ! そのパッド入りスリーサイズを世界にバラすぞ!」

「なななななな、なんで分かったんですか!? そんな能力与えたつもりないですよ!?」


 ……ん? このギャルゲーパラメータとかいうのは転生特典ではなかったのか……。

 しかしこの胸部が主張している容姿も、パッドによるものとは……まぁそれはそれで悪くないけど。


「とにかく! ユージロー様が魔王を倒せないなら妹の特典はなかったことになりますから、いいですね! ……あと、本当にバラさないでくださいね。ああ、ちょっと――」



* *



 そうして夢から覚める。

 あの女神汚い手を使ってきやがって……!

 俺が魔王を倒さないなら妹をなかったことにするだって……ふざけろ。


「はぁはぁ」

 

 いいじゃねえか! やってやろうじゃねえか!

 こうなりゃ手あたり次第に女子攻略して妹軍with俺で魔王を討ち取ってやろうじゃねえか!

 待ってろ魔王、俺の毒牙にかかることを楽しみにするんだなあ~?


「ユウ兄……」


 しかしさっきから聞こえるミユの喘ぎ声はなんだろうか、お兄さん興奮しちゃうよ?

 まぁなんにせよ手足の拘束で何も出来――んんん?


「ユウ兄、すきぃ」

「ちょ、ミユ? なにしてんの!?」

「わかんない、でもこうしないと切なくて苦しくて!」


 俺はベッドに寝かされている、足も拘束されているが――手の拘束は解かれている。

 そして俺の手はといえば――


「きゃっ」


 服をまくりあげて控え目な膨らみかけのミユの胸の上に俺の手はあった……どゆこと?

 更に俺の腰回りに感じる重さはミユのものだったらしい、ということは今ミユは俺に馬乗りに……!?


「ちょっと待てミユ! マジでどうしたんだ? まさか……欲求不満なのか!?」

「そ、そんなんじゃないし!」


 いや、この状況でそれを否定するのは無理があるというか――しかしこの絹のような肌触りでいてふよふとした感触に、一点のコリコリとした部分、まさしく妹様のお胸様である!

 この時の俺の視界に映るミユが僅かに光っていることが分かった、これは直感的にステータスに異常などがある際に分かるものらしい。

 空いている片方の手でミユのステータスをチェックすると――


「あっ、あぁ!」


 ミユのステータス欄の、MPゲージが殆ど底を尽きかけていた。

 爆裂魔法に転移魔法に拘束魔法で魔力を使い切っていたらしい、しかし食べて回復とならないということはどうすればMPゲージが回復を……ん?


 そう、よーく見るとMPゲージが増えているのだ。

 どうしたことだろうと思い、俺がなんとなく意図せずミユに胸を揉むと――


「い、いやぁっ」


 幸せ心地な感触と共にゲージがグンと増えた。

 …………。


「なぁミユ」

「あ、あによ」


 ミユはといえば息も絶え絶え、頬を紅潮させていて瞳も潤んだ様子で答える。


「もしかしてえっちなことでMP回復するとか……そんななのか」

「え、そんなわけ――そんなわけないはずなのにいいいいい」


 どうやら異世界チート魔術師の妹は、えっちなことでMPを回復しなければならないらしい。


「……俺相手は嫌か?」


 するとフルフルと首を横に振るミユが続けて――



「ユウ兄じゃなきゃ、やだ」



 うおおおおおおおおおおおお!

 …………女神さま最高かよ、妹様最高かよおおおおおおおおおお!

 ちょっと頑張って世界救ってくる!

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