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第三十八話 両手に花ってみた。

遅れてしまって申し訳ないです、全部やる気様ってやつが悪いんです。


 半日近くたきのこの森を進んでいると、明らかに空気が変わるタイミングがあった。

 それはモンスターの気配とも言うもので、これまでの平和な道のりと打って変わって、モンスター群生地帯への再突入を控えていた。

 <シルバーリング>の電波の影響が薄らいだ・無くなった場所が間近に迫っているのだろう。

 

「みんな準備はいいか?」

「うん」

「だね」

「はい」

『プル!』


 各々が俺と同じように感じ取っている、そしてマイも既に占術結果である程度の予測は出来ており俺含めて一同がそれを聞いていた。

 予め戦闘準備も済ませてある、念には念をとマイが探知出来る最長距離でいったん休息を取って俺たちは備えていた。

 だからほぼ戦闘態勢で、すぐさま戦闘に突入できるよう心も体も準備はしていた。

 そうしてここまで平和な道を歩んできたが……それももう終わりだろう。


「……行くぞ!」


 そうして実質の境界線を踏み越える―― 





「ふぅ、なんとか抜けたね」

「ああ、ミユお疲れさん」


 モンスター群生地帯は電波で弾かれていて溜まっていた部分がすごかった。

 酷い場合はモンスター同士が戦い食い合ってレベルを上げて、明らかにこの地域ではズバ抜けた強さのモンスターがウジャウジャしていた。


 少なくとも俺一人がこの地に投げ出されたら骨も残らないかもしれない。


 そんな中ミユは得意の魔法でモンスターを一掃、このパーティにおいて一番の火力がミユである。

 次いで後衛での強化・回復術を使えつつも広範囲にも攻撃を行うバランス形のミサ、そして――


「私もお役に立てましたか」

「……そりゃあなぁ」


 内心正直超役立ったと思っている、なにせ攻撃力とか火力とか関係のない――マイは”呪術”を使っていた。

 特定のモンスターを呪って殺すというもので、それがあまりにも強力で、原則モンスターは回避できないほぼ即死呪術だった。 

 同一種族のモンスターならば種族ごと呪うことで、まずは弱体化、そして時間を経て死に絶えるという恐ろしい術性能を誇る。

 たとえ仮に解呪魔法をかけたところで呪いの進行が速すぎて間に合わないだろう。

 ミサが事実上の戦闘限定後衛サポート・広範囲呪術攻撃のバランス型な一方で、マイは戦闘外でも活躍する探知系占術と攻撃全振りの呪術を扱う違いがあった、僧侶と呪術・占術使いの違いは曖昧だがそこらしい。


 マイは占術と呪術が使えると最初から言っていた。

 ミユの転生(実質召喚だけど)時点で高レベル・高魔力だったわけで、マイもまた恵まれた能力をを持って生まれたか――それともこの十年の時を要したのか。

 マイの過ごした十年という時間を時折考えてしまう。


「……お役に立ちましたか?」

「立ちました、助かりました!」

「良かったです」


 照れたり男子だからとカッコ付けて濁していたが、言葉にする以上のことはなかった。

 マイだって褒められたいし認められたい、それはマイに限らず俺もそう、至極真っ当な感覚に違いなかった。

 だから俺が内心で完結させようとしたのはよくなかった、無配慮・無神経だった、こればっかりは直していこう。


「しかしMPをだいぶ消費していました、少し腕をお貸しいただけますか」

「ああ、もちろん――って流石に密着しすぎでは?」


 マイが俺の腕を抱き寄せた結果、ボリューミーな彼女の双璧に俺の腕が埋まるちゃん。


「MP回復です。ユージロー様のMPには影響ありませんのご安心ください。こうすることで自然回復よりも効率のいいMP回復を行うことが出来るのです。病は気からというように、気持ちだけで体のバランスというのも崩れてしまうものですから。さながら単なる水よりもナトリウムを含んだ飲料の方が体内の水分と類似成分故に水分吸収を良くするように、それに倣って”気持ちがいい””心地がいい”という心情がMP吸収を促進してくれるという理屈となるようです。それ故にこのような密着行為はMP回復を行うにおいて必要なステップとなるのです」


 …………。


「なるほど」


 よくわからんがよくわかった!

 

「ちょ! マイさん、ユウ兄に何してるの!」


 しかし傍から見れば理解不能らしい行動を視認するにミユが憤った。


「疲れたので腕をお借りしているだけですよ」


 さっき言ってたのと違う……。


「それだけじゃないよね!? なんかえっちな雰囲気するもん!」

「そう思うのはミユ様がえっちなだけでは?」

「な!」


 マイ宅での意趣返しといったところなのかもしれない、そればっかりは俺としては何も言えない。

 実際便利機能を使ってマイの体力・MPゲージを見たが……彼女が平然としているだけで尽きかかっていたのだ。

 マイの使う”呪術”が強力な反面、術使用におけるMP消費だけでなく、基本モンスターからの攻撃などを受けていなかったはずのマイの体力もごっそり削られるリスキーな術なのだろう。


「じ、じゃあ私もする!」

「ユージロー様がお構いないのであれば」

「お、おう」


 ミユはもともと意地張りな面もあるので、こう煽られると乗ってしまうところがある……でもそこが可愛い。

 実際今回の戦闘でミユもMP消費していないわけがないのだ、俺に遠慮しているのか、周囲の目を気にしているのか人目を避けて”MP回復”を行う傾向がある。

 いやそりゃそうだという話なんだが、もっともミユのMP回復はこれ以上に過激なわけで、どういう理由か更に吸収効率が上がるとの本人談である。


 だからそもそも可愛い妹であるミユの申し出を断る理由も意味もないし、俺は素直に受け入れる。

 そして十年の時がそうしたのか、ほどよく寛容になったマイもまたそんなミユのスキンシップを許している故に、今の現状両腕に可愛い可愛い妹と年上系元クラスメイトの元恋人という俺がモテモテ風ハーレム野郎味になるだけでしかない。


「……私も年甲斐なく出来ればねえ」

『うらやま』


 後ろで何か言っていたが、うまく聞き取れませんでした。

 ともかく理由付けはそこまでにして、モンスター群生地帯を抜けた頃俺は両手に花状態で進むのだった。 





 片側にボリューミー、片側は発展途上な柔らかみに包まれながら歩いていると――


「おや」


 マイが何か”占術”を使って探知系の呪術を使っている時のことだった。

 ちなみに腕組み数十分だけでマイのMPはマンタンと、かなりの回復効率だった。

 マイ曰くほぼ底尽きからの全回復は、通常ならば一晩寝ないと無理らしい。

 なるほど実質的な高速充電のこれは確かに実用性……ゲフンゲフンじゃなかった有用性があるというものだ、ミユのように過激ならばさらに急速充電となる仕組みだろう。

 自分なりに理由付けするならばMPとメンタルというのは如実に関わっているのかもしれない。

 

 ……"Magic"pointと”Mental”pointで同じ頭文字"M"同士だから実質同質だったとかしょっぱい理由じゃないだろうな……?


「どうしたマイ」

「周囲に複数の女子を連れる集団というものを補足しまして、どうやら馬車もとい荷車などの移動手段を用いているようです」

「複数の女子……?」


 この世界のメインの都市間輸送は馬車を用いているらしい、というのは<ゼクシズ>で聞いている。

 それに照らし合わせるならば、現代におけるバスやトラックとなるはずだが……引っかかるのは複数の女子、という点。


「女子高のスクールバス……ってわけではなさそうだな」


 そもそも今の進行方向からして<ゼクシズ>からの交通手段は途絶えて久しいはずだった、だからこそ考えるならば今現存する交通とすれば荷物運搬業者の馬車ぐらいになるわけで。

 そう考えると臨時便でもない限り、複数女子を輸送する状況ということに異世界という偏見混じりだがキナ臭さを覚えざるを得ない。

 いわゆる、少し現代において嗜んだファンタジー創作作品の異世界にありがちな奴隷商による奴隷の移送のような――


「残念ならが私は<シルバーリング>に長い間籠っていて文化的に閉鎖された場所に身を置いていたのでわかりませんが、その女子の方々の精神面が不安定なようで、その……」


 マイの探知系占術はそんな各人が漂わせる”オーラ”なども把握し、メンタルや体調面がどうかなどが分かるらしい。

 そしてマイの言わんとしていることも分かる、つまりは奴隷商による奴隷移送便と仮定して良さそうだ。

 ……だからと言って「とにかく助けにいこう!」と言えるほど俺はそこまで善人なわけじゃない、例え罪のない人間が奴隷商によって酷い扱いを受けているとしても、仮にそこから救え出したとしても――それ以降の責任を負える気がしない。

 別にヒーローを否定したいわけじゃない、助けたあとの責任問題・アフターフォローを一切考えていないわけでもない、ただ俺にたくさんの人間の人生を背負えるほどの甲斐性も器もない……というだけの話。

 

 現代だったら助けたあと警察に任せたりすることが出来るかもしれない、ただこの世界においてはそのような自治組織が存在しているかもわからない。

 だからこそ責任を持てないであろう俺が無責任に救い出すことは考えられなかった。


「……少し様子見しよう」


 そう返したが本来助けるつもりなんてなかった。

 ただ嫌な予感というか、何かしらの勘からそのまま突っぱねるのは得策ではないような気がした結果の先送りだったのだが――



 その奴隷商集団が俺の便利機能補足圏内に入った時、女子であることを示す点が点滅するだけでなく――絞り込み機能によって家族を示す色に”一つの点”がなっていた。

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