クリスマスパーティー
年の瀬ともなると、大人も学生も忙しい。特に、雲雀丘家はクリスマスパーティーの準備でてんやわんやである。普段なら「またこの季節か」と淡白な瑠璃も、今年は小鳥遊家が来るとあって気合が入っている。
「で、ドレスを選んで欲しいと」
「うん。母は父の手伝いで相手にしてくれないし」
星奈を伴って買い物に出てきた瑠璃。要件はクリスマスパーティーで着るドレスだ。
「彰君がくれたラピスラズリのネックレスが合うドレスが良いな」
「おぉ。婚約者とラブラブ?」
「ラ、ラブラブとかじゃないから」
いきなり何を言い出すのか。
「でも、一緒にお茶したり、出掛けたりしてるんでしょ?」
「し、してるけど・・・」
「なら、ラブラブで良いじゃないか」
「・・・」
彰君は婚約者として良い子だ。良い人だ。でも、愛してるかというと・・・
「まだ、実感ないよ・・・」
「そんなもんかな?」
「だって、小学生だよ?」
「年齢関係ないんでしょ?」
「・・・うん」
「もうショタコンとは呼ばないから」
「・・・」
ドレスはラピスラズリより淡いブルーのドレスを選んだ。
クリスマスパーティー当日。父も母も挨拶周りに忙しい。
「瑠璃さん。今日はお招きありがとうございます」
「彰君、いらっしゃいませ」
「ドレス、すごくお似合いです。ネックレスも着けてくれてありがとうございます」
本当に小学生かと思うくらいお世辞が上手。
「あの、瑠璃さん。少し向こうでお話しませんか?」
会場の熱気に少し充てられていた私は二つ返事で了承した。
テラスに居るのは彰君と私だけ。会場の喧騒が少し遠くに感じる。
「僕、8年前にも雲雀丘家のクリスマスパーティーに来たことがあるんです」
「ええ?本当」
そんな昔に彰君と会っていたかもしれないんだ。
「はい。その時、僕は会場で親と逸れてしまいました。でも、一緒に親を探してくれた年上のお姉さんがいたんです」
そして、彰君は真っすぐ私を見た。
「それが、瑠璃さん。貴女です」
「わ、私!?」
どうしよう。はっきり言って覚えてない。
「覚えてないですよね」
「・・・ごめんね」
「謝ることなんてないんです。でも、僕はその時のことがずっと忘れられなくて。今、思えばその、えっと」
彰君が口ごもる。私は黙って先を促す。
「は、初恋だったと思います。だから、この婚約の話が上がった時、すごく嬉しかったんです」
彰君が私の手を取った。
「僕、昔から瑠璃さんに恋してます。ですから、瑠璃さんも出来たら僕に恋してくださいね」
そう言って、彰君は私の手に祈るようにキスをした。
私は予想外の告白に呆然としていた。初恋?私が彰君の初恋の相手?というか、恋してくださいって・・・。
ボッ
顔から火が噴いた感じだ。私はさぞ真っ赤になっているだろう。
「あの、えっと」
「あ、答えはスグじゃなくて大丈夫です。僕、先に戻ってますね」
彰君は会場へと去って行った。私への配慮だろうか。すぐ赤くなる頬が恨めしい。
(初恋って、あの初恋だよね。恋、彰君に恋?)
一人じゃどうにもならない時は、頼りになる親友に遠慮なく頼ろうと思った。
「何それ、告白じゃない!!」
クリスマスパーティーが終わった翌日、早速、星奈に話を聞いてもらう。
「だよね。告白されちゃった」
「婚約者からの告白!良いな~私も改めて告白されたい」
「どうしよう。私、告白に答えないと」
「どうせ、婚約してるんだし。答えは決まってるじゃない」
「でも、婚約してるからYESなんて失礼でしょ」
「そりゃそうだ」
少し、話が途切れる。う~んと唸って星奈が口を切る。
「でも、瑠璃はそんなに真剣に考えてるんでしょ。それが答えじゃないの?」
「考えてるけど、好きかどうかは・・・」
「煮え切らないな~。彰君に告白されてどう思ったのよ」
「どうって・・・」
(瑠璃さんも出来たら僕に恋してくださいね)
ボッ
また顔が真っ赤になった。
「もう、瑠璃はその顔が答えだよね」
「・・・うん」
そうか、私は顔が真っ赤になっちゃうくらい、彰君のことが好きなんだ。
(どうしよう。どうやって返事しよう)
 




