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瑠璃の誕生会

 6月は瑠璃の誕生月である。誕生日当日は平日なので普通に学校だが、直近の休日に小鳥遊家が誕生日会を開いてくれるという。


「婚約者だからって誕生会を開いてくれるものかしら」

星奈に尋ねる。

「まあ、私は誕生日のディナーは必ず一緒にするけどね」

「そっか」

「ご厚意に甘えときなって。良い人たちじゃない」

「そうなんだよね」


 そう、実の家族より良い人たちだ。瑠璃の父親は昔ながらのワンマン。母親は父に追従するばかり。誕生会なんて開いて貰ったことは無い。よくも自分は普通に育ったものだ。これも友達である星奈たちのおかげだろう。


「私からのプレゼントは誕生日当日に渡してあげるから」

「本当?毎年、星奈のプレゼント楽しみなんだよね」


 そして今年は女子高生でも手が届くブランドの花柄のポーチだった。可愛い。


 星奈からプレゼントをもらった翌休日。再び小鳥遊家へと瑠璃は訪れていた。

「瑠璃ちゃん、いらっしゃい」

出迎えてくれたのは再び小鳥遊夫人だった。

「こんにちは。今日はありがとうございます」

「女の子の誕生日会なんて初めてでワクワクしてるのよ」

「嬉しいです」


 食堂に入って驚いた。至る所に可愛いバルーンや花が飾られていたのだ。そして、食堂で待っていたのは、彰君、真君だけでなく小鳥遊氏もだった。

「やあ、瑠璃さん。ゴールデンウィークは仕事が入ってしまって、会えなかったね。今日は皆で一緒にお祝いさせてくれ」

「あ、ありがとうございます」

実の父には、こんなに優しく接して貰ったことは無い。壮年の男性のやさしさに戸惑う瑠璃だった。

「瑠璃さん、いらっしゃい」

「いらっしゃいま、せ」

「こんにちは。彰君、真君」

「さあ、誕生会を始めようか」

小鳥遊氏の号令で瑠璃の誕生会が始まった。


「瑠璃ちゃん、料理の味はどう」

「どれも美味しいです。特にこのチキンのお料理」

「本当、嬉しいわ」

「お料理は奥様が・・・?」

「嫌だ、瑠璃ちゃんたら奥様なんて。お義母さんって呼んでちょうだい」

「僕もお義父さんが良いな」

「母さんも父さんも、瑠璃さんが困っているよ」

「あの、いえ、嬉しいです。是非、お呼びしたいです」

「ほら彰。瑠璃ちゃん嬉しいって」

「それは、瑠璃さん優しいから・・・」


 きっと、本当の家族の会話ってこんなのなんだろうな。本当に皆、優しい。家族と会話が弾むなんて初めての経験で、瑠璃は本当に嬉しかった。こんな経験が出来ただけ、小鳥遊家との婚約を決めた父に感謝してやっても良いかなと思うくらい。


 食事が一通り終わった時だった。

「さあ、次はお待ちかねのケーキとプレゼントよ!」

小鳥遊夫人の一声でケーキが食堂へ運ばれてきた。

「うわ、可愛い」

思わず、瑠璃は声をあげた。出てきたのは食堂に似合わぬ小ぶりなショートケーキだった。

「彰と真と一緒に作ったの」

「ケ、ケーキも手作りなんですか!?」

「真、お手伝いした!」

「真君。ありがとうね。彰君も」

「いえ。あの・・・」

彰君が少しモジモジとしたようにこちらに寄ってくる。後ろ手に何か持っているようだ

「これ、プレゼントです」

「あ、ありがとう」

渡されたのは細長い箱だった。

「開けても良いですか?」

「もちろんです」

プレゼントを開けている間、ジッと彰君がこちらを見つめてきた。

「こら、彰。そんなに見つめていたら瑠璃さんも困るだろう」

「あ、ごめん。なんか緊張して」

彰君が謝る。謝ることなんてないのに。


 出てきたのは青い石の付いたネックレスだった。

「綺麗・・・」

「ラピスラズリです。瑠璃さんの瑠璃ってラピスラズリのことでしょ?」

ちょっと得意げに彰君が説明する。

「彰ったら、ゴールデンウィークに瑠璃さんの誕生日と聞いてから、ずっとプレゼントを考えていたのよ」

「え・・・」

「母さん、そんなことバラさないでよ」

顔を真っ赤にする彰君。

「そんなに考えてくれたんだ・・・」

「はい・・・」

「本当にありがとう。嬉しい。大切にするからね」


 婚約者から貰った最初の誕生日プレゼントはラピスラズリのネックレス。婚約者が少し背伸びして選んでくれたプレゼント。

「彰君は3月が誕生日だっけ。これからプレゼント考えるね」

ちょっと、茶目っ気を出して瑠璃が言う。

「あら、良かったじゃない彰」

「瑠璃さんはセンスが良さそうだぞ」

「母さん!父さん!」

「瑠璃姉しゃん。真もプレゼントありゅ」

「あ、私と夫からもあるのよ」

「え!?」


 真君からはクレヨンで書いた似顔絵。小鳥遊夫婦からはアクセサリー用の宝石箱を貰った。

「こんなに頂いて・・・恐縮です」

「何を言ってるの。誕生日なんだから、もっと欲張って」

「気に入ってくれたかな?」

「はい。どれも可愛くて綺麗で・・・本当にありがとうございます」


 この感動を伝えきれない自分の語彙のなさが悔やまれる。只々、お礼を言うのであった。

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