9 偽りの気持ちが破れる5日前
午後になり身支度を済ますと私は急いで家を出た。幼なじみの彼が駅まで送ってくれると言っていたからだ。
私はそれが嫌で、早めに家を出たの。バスに乗ってしまえば、彼と一緒にいなくていいから。
バス停に着くというところで、クラクションが鳴った。彼かとおもい、恐る恐る振り向いたら知らない車が私の横で停まった。助手席の窓が開き課長の顔が見えてホッと息を吐き出した。駅ではなくて空港まで車で行くから、乗っていかないかという事だった。私は言葉に甘えて乗せてもらうことにした。
空港から飛行機に乗りまずは鹿児島へ。ホテルは勿論別々の部屋だった。
夕食はホテルのそばで食べた。
ホテルに戻り部屋の前で別れるはずが、課長に部屋に入りこまれた。
壁ドン状態で「何かあったのか」と聞かれた。クラクションに振り向いた時の表情が気になったと言ってくれた。
私はクラクションの音に驚いただけと答えたけど、課長は騙されてくれなかった。
心配の色を浮かべた真剣な眼差しに何も言えなくなり、優しいキスと抱擁にすべてを委ねたくなった。
理性を総動員して腕の中から抜け出して、笑顔で「大丈夫」と答えた。
まだ何か言いたそうにしていたけど、それだけで課長はひいて部屋を出て行ってくれた。
一人になった私はすぐに浴室に駆け込んだ。シャワーを頭から浴びながら涙を水滴の中に紛れ込ませたのだった。