5 許婚もどき
課長に口説かれるのを断るために、言った許婚もどき・・・。
そう私には幼なじみで親公認の許婚もどきがいる。彼と私は恋人同士ではない。今までに付き合ったこともないうえに、もちろんキスもした事がない。
そんな私達が許婚もどきなのは、ひとえに親のせい。なんか曾祖父だかがお互いの家を結びつけるために、子供達を結婚させようとしたら年が合う子供がいなかったとか。孫である我が親の時に年が近い子供がいたけど、お互いに他に好きな人がいるとかで結婚しなかったそうだ。それで、丁度同い年の私達にどうかと話が回ってきたのだ。
先祖の悲願とか言っているけど、それなら親のお前らが結婚していろよと何度か思った。口に出したことはないけど。
一応他に好きな人がいれば、その人と結婚していいとは言われているけど、28歳にもなって男っ気の無い私に、とうとう『30歳までに良い人が出来なかったら幼なじみと結婚しろ』と言ってきた。それは幼馴染みの彼に悪いからといったけど、彼は笑って「いいよ」と答えていた。
私は幼馴染みの彼のことを嫌いじゃない。だけど、彼との恋なんて想像がつかないのだ。
でも、穏やかな彼と暮らすのも悪くはないのではと思った私は、そのことは承諾した。
あくまで『30歳までに良い人が出来なかったら』ということに対してだったけど。