3 気付かれないと油断した
その時の彼に7年も経って再会するとは思わなかった。幸い彼は私に気がつかなかったようだ。
それはそうだろう。あの時の私といまの私は違い過ぎるもの。あの時の私はショートヘアで黒髪だった。いまは肩を越すセミロングに茶髪だ。お化粧もバッチリしているし、何より服装が違い過ぎる。あの頃はおとなしい面白味のない服装をしていたけど、今は程よく流行を取り入れたファッショナブルな服装をするように心がけているもの。
だから私は油断をしたのだと思う。
6月も末になって課長との親睦会が開かれた。やってきた理由が理由だし、体制が整うまでにそこまでの時間を要したというか。
親睦会は大盛況だった。イケメンで独身ということで、他の課からの参加者が多かったからだ。うちの課は・・・課長のサドっぷりに毎日泣かされているから、たとえイケメンでも課長のことはごめんだ! となっていた。
本当に仕事のことには手を抜かない。来て早々それぞれの班の研究しているものの、詳しい進行状況を出せと言われたのは、ちゃんと把握してくれようとしているのだと、好感を持った。それが内容を読み込むと、それぞれの研究に対するダメ出しが始まった。課長が納得するまで説明させられて、ほとんど毎日喧嘩腰で会話をしたもの。
だから、親睦会の二次会から三次会に移動する途中で、腕を掴まれて近くのビルの中に連れ込まれた時には息が止まるほど驚いた。エレベーターに乗り二人きりになると抱きしめられてキスをされて・・・。
一瞬そのまま流されそうになった自分に気がつき、着いた階のバーの椅子に座った所で、ひそかに自分を叱咤した。