2 若気の至り
彼は私のひと夏の体験の相手だ。
あれは7年前。大学4年の私は友人に誘われるまま、海へと遊びに行った。目的は学生最後の夏の思い出作り。友人は彼と別れたばかりで、私は彼氏いない歴が年齢という残念仕様。友人には私に彼が出来ないのは、素がいいのにおしゃれに気を使わないからと言われていた。
でも私は自分を知っている。こんな野暮ったい地味娘を好きになる人はいないと思っている。最悪、幼馴染みがお嫁さんに貰ってくれるといっているから、売れ残ることはないだろうと踏んで、お気楽に過ごしていた。
でも友人はそれじゃあ駄目だといった。その夏、友人に連れられて、ビキニを身に着けてビーチにいた。そんな私達に声を掛けてきた2人組。かなりイケメンで女に不自由してなさそうだと思った。そんな人がナンパ?
と、思ったけど友人がOKしてしまったので、4人で過ごすことになった。彼らと過ごすのは楽しかった。話題も豊富で彼らは学生ではなく働いていると言っていた。さり気なく奢ってくれて、友人は当たり前のように受けていたけど、私は全部出させるのが申し訳なかった。
その日私達はホテルに泊まる予定だった。彼らも同じホテルに泊まっていた。夕食も一緒に取り、そのままホテルのバーで飲んで、気がつくと私は彼の部屋にいた。初めての体験に慄く私をやさしくリードして教えてくれた。
予想以上の痛みに涙を流す私に、彼は「処女なのか?」と呟いていた。
朝、彼が目を覚ます前に目が覚めた自分は偉いと思う。携帯に友人からメールが来ていた。私は身支度を済ますとそっと部屋を出た。ロビーには私の荷物を持った友人が待っていた。私達はフロントでお金を払い、友人はまだ部屋で寝ている人がいるからとフロントに言いおいて、ホテルを後にした。
帰りは2人して無言だった。友人に何があったのか知らないし、私も何があったのかは言わなかった。