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12 台風が連れてきた一夜

 ホテルに着いたら、フロントのところでタオルを渡された。私達みたいに全身ずぶ濡れの人が多いからか、用意してくれていたみたいだ。


 鍵を受け取って、部屋へと向かう。部屋に入った私は別の意味で緊張をしていた。


 課長は移動の間に濡れてしまったから、私に先に浴室を使うようにと言った。この前の様にささっと出てこようとせずにちゃんと温まるように言われた。


 この前よりは少し長めに体が温まるようにシャワーを浴びて出てきたら、課長はいなかった。


 だけど、すぐに課長が現れた。コンビニに買いに行ってくれたようで、袋を持っていた。


 課長がシャワーを浴びている間に食べていていいと言われたけど、そんなことができるわけがない。


 出てきた課長は私が手を付けていないことに、苦笑をしていた。食事を済ませて、冷蔵庫からビールを取り出して私に渡してくれた。


「今回の出張で手ごたえがあった。お前のおかげだ」と、ねぎらわれた。

 私はその言葉に「本当ですか」と聞いた。

 頷いて「何か褒美でも出したいくらいだ」と言われ、私はごくりと唾を飲み込んだ。


「それならば」と言って課長の腕に手を置いた。

「ご褒美をくれませんか」と腕を抱え込むように抱きついた。


 課長の瞳には戸惑った色が見えた。


「本気か」「はい」


 私の返事に課長の瞳の色は欲望の色へと変化した。


 体が浮いたと思ったらすぐにベッドへと落とされた。すぐに情熱的なキスをされて、昔課長に教えられたとおりに腕を課長の首へと回した。


 もう、課長から与えられる熱しかいらない。そう思いながら課長に身を任せたのだった。


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