プロローグ 〜語られることのない出来事〜
8月29日/誤字脱字の修正。話のズレを修正
「はぁ...はぁ...くっ...そ」
心臓の音が自分の呼吸が耳のすぐ隣に聞こえる。限界の体を一歩また一歩と無理やり体を動かせる。そんな状態で青年は自分の今の状況を整理しようと必死だった。
あたりを見渡すと世間でいうとこの絶景がそこには広がっていた。生い茂る森に積もる雪が静かな銀世界を作り出している。聞こえるのは自分の荒々しく上がった息、「ザッザッ」と降り積もった雪を踏む音のみ。まるで自分以外の生命を感じさせないほどそこは静かだった。
だが青年は知っているこの世界に自分以外の生命がいることを、その生命が生命を狩り取ることを......。
故に青年は走っていた。自分の命を狩られないために、恐怖と寒さでおかしくなりそうな体を無理やり動かし走...逃げていた。純粋無垢な瞳から。
「なんでっ...なんでこんな事に...俺がなにしたってんだよ。ここはいったいどこなんだ!?」
震える体をさすり叫びたい気持ちを抑え白い息と共に体から外に吐き出した。隠れるように座っている木陰の下は銀世界に当てはまらない綺麗な褐色の赤色が真っ白な雪を染め上げていた。
「とにかく...今は隠れる場所を探そう、雪の上は足跡がつくからすぐに俺の場所がバレる。大丈夫他のやつに気を取られてまだそこまで動いてない...はず」
自分に言い聞かせるように言うと、青年は自分の息がだいぶ落ち着いたことも同時に確認し、音が目立つこの静かな場所で必死に音を消そうと無意味な動きをしながら雪が積もってない場所を探す。
(それにしてもここはどこだろうな。日本...じゃねーな北海道で育った俺でもこんなでっかい森は見たことない。ならーー北極とか?行ったことないからあれだけど雪=北極みたいなとこあるしでもこんな木が生えてるもんなのか?ペンギンもいないし...)
「あれは...穴?いや洞窟か?」
やけに落ち着いてやけにバカっぽい思考で考えながら歩いて行くと目の前に小さなん洞窟を見つけた。人がちょうど入れるぐらいの入り口からは真っ暗で奥が確認できないがその暗さからある程度奥域があるのを感じる。そして中で人が嫌悪を抱くであろう生物が腐ったような臭いが漂ってくる。
「うっ!?...なんだよこの臭い酷すぎる...でも行かないとあいつにバレるだろうし雪が降ってる今なら足跡も上手くいけば血も隠せる...行くか...」
選択の余地がなく、青年は片手で壁に触れ壁伝いに真っ暗な道をただ進んだ。地面はある程度ごつごつ岩肌を感じるが目が利かなくてもある程度進んでいける程度だった。
「臭いもだいぶ慣れてきたな鼻が麻痺してやがるそれにしても結構長いのか?...ずっと真っ暗なままだし、どこまで続いてんだよ。ちくしょースマホ落としてなけりゃーなライトとかでもう少しまともに動けんのに」
ある程度進み後ろを振り返ると、先ほどの入り口から漏れた外の光がだいぶ小さくなっていた、距離にして約400mほどだろう。
また入り口から逆の方を向き歩いていると真っ暗な視界にうっすらと明るい光が見えた。
「光だ!よっしゃ!やっと出口だ...いや出口だったらあんな臭いするか?。よく考えたら行き止まりの可能性の方がたけーじゃねか。あーなんで入る前に気づかなかったんだ俺...そんだけ焦ってたってことか?...まぁどうせ少し隠れるつもりだったし頃合いを見て来た道戻ればいいだけだ...大丈夫」
一人口が多い青年は愚痴とも励ましともいえる言葉を吐きながらその光に導かれるようにゆっくり進んで行った。進んでいると歩くだけで暇だったのか、ふと頭にいくつかの疑問が浮かんだ。一つ目はこの臭いの正体は一体なんなのか。二つ目はどうしてよく考えもせずこんなとこに入ってしまったのか。そして最後の疑問は...。
「!?!?”#;*ウッ”#;*オェーーー.......はぁはぁーーなんだよこれ...なんなんだよ!!」
光の正体は小さなロウソクだった。一つではなく5〜6個あるそのロウソクが今までの道とは違い小さな空間を把握できる形で配置されており。その空間の中心に一つ目の疑問の答えがあった。
「死んだ人がなんでこんな洞窟に...しかもこんなに」
疑問の答えは死臭、しかも人間の。青年はこの洞窟に来るまでにいくつかの死に直面してる。だが走りながらにチラッと目に入るぐらいだったしその時は逃げるのに必死でそれどころじゃなかった。だけど今は違うその動かない憎悪はしっかりと青年の目の前にあり。その虚ろな目はしっかりと青年の目をとらえてるかのよう。一人や二人じゃない何十人。中には人だとわからないようなグチャグチャに形がかわってしまってるものもあり。そこには数え切れない死体で部屋が満たされていた。
「ウッ!...あぶねぇまた吐くとこだった。臭いからしてやばいもんだと思ってたけどまさか人だったなんて全然笑えねーよ。はやくここからでねーとやばそうだな隠れれると思ったのにくそ!...あっ?なんだあれスマホ?」
死体の手元にはスマートフォンのような形をしたデバイスを見つけた。画面がついていたため目に止まったそのデバイスを。青年は恐る恐る死体から取ることに成功し、その死体含め殆ど自分と同じ年頃だと格好を見て気づいた。死体は黒のブレザーや学ランなど色んな種類の学生服を着ている。中には私服っぽい人もいたがそこまで歳が変わらないのは予測できる。
「なんでこんな年齢が近いんだ死体がここまで歩いたとも思えねーし。もしかしたらここに連れてきた奴の趣味って可能性もあるけど...そういやここで目が覚めた時も周りは俺とたいして変わんない奴ばっかだった気がするな。そんでこれはスマホーーでもないな。なんも表示されてねーし壊れてんのか?そういえば俺がこの変な場所で目が覚めた時にもこんなんあったけな」
「スッーーーグチュッバキ...ガルルルゥゥゥ」
(........へ?)
一瞬だった。音もなく忍び寄ったその影は青年が振り向く前に青年の頭と首をさよならグッバイさせていた。スローモーションのように青年はこの生首状態をとてもゆっくり感じていた。これが死ぬ前に起こるといわれる、走馬灯ってやつなのだろう。青年の目にはうっすらと頭のない自分の姿が見え空中で廻る視界の中に見えたその純粋無垢な瞳は青年が生きてきた中でもっとも死に近い恐怖だった。そして青年は残りの0.3秒で二つ目そして最後の疑問の答えがわかっていた。
二つ目の答えは青年が悪運の強いただのバカだったからそれだけマジでそれだけだ。
そして最後の疑問...それはなぜここまで青年の名前がこの物語で語られなかったのか。それは青年が名前も知られず消えていくモブだったからなのだろうと誰にも語られることのない話なのだろうと頭だけの青年はそのメタな思考で自分がこの話の主人公ではないと気付く。同時に地面に転がり考えるのを止めた。
「ボトッ...」
青年の頭が地面に落ちたと同時にその目からは生命を感じなくなっていた。足元に転がってきたそれをただ純粋無垢なその目で見ている一人の少女。高揚する心を表すかのように真っ赤に染まった頭巾は純粋無垢な目を持ったその子を包み込んでいた
「ふふ...これで最後ねー少し楽しめたけどまだ全然足りなーい!今度のもつまんなかったなーまた次に期待しよっか!ねー!バレリー♪」
「次は...どんな子が来るのかなぁー...あはは楽しみぃー♪」
静かな銀世界には一人の少女と獣しかおらずその体は真っ赤に染まっていた。
「いっぱい遊んでいっぱい王様にお話持って行こうねー!でもー王様きっと喜んでくれいんだろうなー...いつもと一緒で」
きっとこのお話も誰にも語られない、誰の心にも残らない。そんな事を考えながら上機嫌に歌を奏でてスキップしながら森の中のお家へ帰っていったとさ...。
「ふんふ〜ん♪狼さんは〜食いしん坊〜大好きなのは少女のお肉〜真っ赤な真っ赤なお〜肉...」
初めての作品です夢で見てとても面白いと思って文字にしてみました。オチがなんかパッとしないんですが。とにかくプロローグ的な感じでできたかなって思いますwなにかアドバイスあればなんでも言ってくださいよろです。