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一人のつもりの少女
目が覚めると、見知った老人がいた。
「目が覚めたかね?ならば早く出ていけ。お前さんの『一人』がまっている。」
ここの長老にして、私に生き方を教えてくれた人だった。
「あの、ありがとうございました。」
それだけをいって私は、長老の家からでた。
ホテルに戻るとリドウがいた。
「遅いぞ。まったく、どこほっつき歩いてんだ。」
「リドウ、あのね、私、私さ、やっぱり行かない。ごめんなさい。」
ごめんなさい。一生を尽くすと誓ったのに。
ごめんなさい。行きたいって言ったのに。
ごめんなさい。でも、会えてよかった。
こんなに心の優しい人に、こんなに一緒にいると楽しいって思える人に、こんなに別れが辛くなるような人に。
「そっか。わかった。」
「うん。」
あれ?涙が口をふさいで今のちゃんと聞こえたかな?
その日、私は初めて知った。
この町の仕組みを。
この町は一人の子供を町の長老にするべく、生きる知恵や人との関わりやすい立ち位置などを教えるため、五歳になったときから二十歳過ぎまでをいないものとして扱っていた。
そして今は私の番だった。
あと二話程度でしょうか?
最後までお付き合いください。




