PPG:無駄設定(2):海軍の日々
史実では建造されなかった船が建造されてたり、建造されてた船が建造されてなかったりします(^^;
【ネーヴァル・デイズ(海軍の日々)】
さて、1930年代の冒頭には【ロンドン海軍軍縮条約】なるイベントもある。
実はこれ、史実でも太平洋戦争の要因の一つとしてあげられるいわく付の軍縮条約なのだが…
この世界ではアメリカの属国という認識が一般的なプロイセンも当然ながら参加を命じられて列席していた。
実はプロイセン、この条約でどんな悪条件でも飲むつもりだった。
というのも世界不況から経済が立ち直り始めたばかりで対米輸出が命綱、戦後の国防軍の再建は陸軍と空軍を優先した為に海軍は手付かず状態、しかもポツダム条約に盟約されていた海軍保有制限を盾にして、駆逐艦やフリゲート艦、コルベットを中心とした水雷戦隊と魚雷艇(Sボート)群位しか保有してなかったのだ。
正直、この当時のプロイセンにとって戦前/戦中のような大海軍の建造は夢想に過ぎず、現実的に考えれば重荷にしかならなかった。
☆☆☆
しかし、世界とは無情な物なればこそ…
この場でアメリカはプロイセンの対米比率で55%の艦艇保有を主張し、英仏は40%に抑えるように主張した。
この時、武官として会議を傍聴していたエーリヒ・レーダー(後のプロイセン海軍司令官)は背中に寒気が走ったという。
「嵌められた…」
と。
つまり、米国は有事の際は子飼いのプロイセンに領海防衛や制海権の確保に通商破壊のみならず、必要ならば大西洋の掃海や船団護衛をさせる為、本格的な海軍再建をするように命じてる…そうとしか判断できない内容だったからだ。
そう、確かに既に強力な海軍力を保有していた日本にとっては軍縮会議だったかもしれない。
近海防衛部隊しか持たないプロイセンにとっては紛れもなく海軍再編への圧力…【軍拡会議】だったのだ。
☆☆☆
結局、プロイセンは対米比率5割の水上艦艇(ただし、英仏が戦時中に痛い目にあった潜水艦保有は4割に制限)の保有枠が可決された。
胴元である米国の命令であれば仕方ない…
10年で再建するように裏で言われた(圧力をかけられた)プロイセン関係者の背中は哀れな程に丸まり、煤けて見えたという…
かくて第二次大戦後半戦(欧州ステージ)において赤色艦隊から目の敵にされたプロイセン海軍の誇る巨艦群…
米国戦艦と砲弾が共通化する為に41サンチ(16インチ)47口径長砲2連4基8門搭載のビスマルク級戦艦のビスマルク/ティルピッツ。
28サンチ55口径長砲3連3基9門のシャルンホルスト級巡洋戦艦のシャルンホルスト/グナウゼウ。
アメリカ空母の影響を多大に受けて史実と大幅に異なる内容を持つグラーフ・ツェッペリン級装甲正規空母のグラーフ・ツェッペリンとピーター・シュトラッセ等は、実はプロイセンの本意ではなく、アメリカの外圧によって産み出されたのだった。
無論、8隻のアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦やエムデン級軽巡洋艦も例外ではない。
だが、恐ろしい事に…
この海軍再建プランをアメリカに提出した時、フランクリン・デラノ・ルーズベルトがプロイセンに本来求めたのは、少なくともこの2倍の艦艇だった。
これを聞いた時のプロイセンの連銀総裁ヒャルマル・シャハトはその膨大な予算に派手にぶっ倒れ、今で言う軍需大臣だったフリッツ・トートはひきつけを起こしたという…
その時に臨時に仕事を代行し頭角を表したのが、二人の娘である秘書を勤めていたフリデリカ・シャハトとラプンツェル・トートだったと言われている。
故に史実では存在しなかった"2隻の空母"が生まれる事になる。
フォン・リヒトホーフェン級正規空母
フォン・リヒトホーフェン/マックス・インメルマン
グラーフ・ツェッペリンで確立した装甲空母ではなく、アメリカから供与されたヨークタウン級の設計図を元にそれを簡易/拡大させた空母。
ぶっちゃけ史実の"エセックス"級。
プロイセンの本音は、「すんません。建造に金がかかり過ぎる戦艦の建造は勘弁してください」という訳で、建造費が戦艦よりは低くまだ潰しの効く空母を選んだという経緯がある。
名前は第一次大戦の超有名エース・パイロットからとられた。
実戦配備は大戦末期だが、空/海軍合同のサンクトペテルブルグ(レニングラード)海洋/長距離複合空爆作戦【ヴィーテンデヘール作戦】をはじめ多くの作戦に参加する事になる。
また、海上打撃兵力の不足を補う為に、カール・デーニッツをリーダーに従来の通商破壊作戦用ではなく純粋な対艦攻撃用Uボート(攻撃型潜水艦)の開発命令が出ている。
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PPG世界における海軍の状況
PPGの物語冒頭時には1939年8月15日〜1941年12月8日まで続いた【太平洋戦争(第二次世界大戦前半戦)】において既に日本はアメリカに敗北(条件付き降伏)しており、また開戦が史実より2年以上早かったせいで主に日本側が十分な【航空機搭載型対艦兵器や戦術の研究開発】が出来なかった為に、この戦いで航空機により撃沈された大型艦(戦艦、空母)は存在しない。
故に世界は未だ大艦巨砲主義が海軍の主流としてまかり通っている。
アメリカ
戦艦
ノース・カロライナ級4隻
サウス・ダコタ級6隻
以上は、16インチ45口径長砲を3連3基9門搭載し、レーダー統制砲撃すら可能な30ノット近い速力を発揮する太平洋戦争中に登場した10隻の米国"新造戦艦"群である。
戦艦すらも"量産"するアメリカの底力には、全く恐ろしい限りだ。
これに加え、ほぼ同数の条約前建造の旧式戦艦群が2線級部隊として存在していたのだから凄まじい。
何れにせよ、既に物量において日本が勝てる相手では無かった。
また、太平洋戦争終結後は旧式戦艦は全て退役となり、以後は10隻に加えて新たに建造される6隻のアイオワ級と4隻のモンタナ級、シャルンホルスト級を参考に建造された4隻のアラスカ級巡洋戦艦に48年までに切り替わる予定。
ちなみにアイオワ級は43〜45年に毎年2隻ずつ就役していった。
つまりアメリカは第二次大戦後は20隻の戦艦と4隻の戦艦で世界の海の覇権を確保するのだろう。
空母
レキシントン級正規空母
6隻
ヨークタウン級正規空母
6隻
レンジャー級練習空母
1隻
大艦巨砲主義まかりとおるPPGの世界においても、空母戦力に手を抜かないのも米国だろう。
ワシントン海軍条約の時の大統領が民主党だったせいか、あるいは第一次大戦での発言力が増したせいか、アメリカはレキシントン級巡洋戦艦6隻全ての空母改装枠を得る事に成功した。
更に条約明けには最初から正規空母として建造したヨークタウン級4隻を同時建造、また対日戦の勃発により2隻の追加建造が認められた。
この時代の米軍空母の役割は、対艦兵器というよりむしろ海洋からの対地攻撃(空襲)がメインであり、艦隊戦においてはむしろ索敵や着弾観測あるいは軽防御艦艇の漸滅を担当するようだ。
その為に満足な性能の物が開発できなかった雷撃機は半ば登載せず、極端に言えば登載機の半分が戦闘機/半分が爆撃機というような編成になっていた。
実際、米国海軍航空隊がもっとも猛威を振るったのは、日本本土への焼夷弾爆撃である。
沿岸部は艦砲射撃による集束焼夷砲弾で、内陸部は艦上爆撃機による集束焼夷爆弾により日本は半ば灰塵となった。
つまり、アメリカは10隻の最新鋭戦艦とほぼ同数の旧式戦艦、12隻の正規空母で日本と戦い、勝利したのだ。
戦後は、グラーフ・ツェッペリン級のような装甲甲板を持ちながら、同時に従来と同等の航続距離とそれ以上の航空機登載量数を持つ、一足跳びのスペックを持つ空母の開発に躍起になっており、太平洋戦争の終結で計画は鈍化したが1950年に装甲甲板に斜め飛行甲板、蒸気カタパルトにサイドエレベーター、RCSを兼ね備えた"近代的超大型空母"、8隻が同時建造されレキシントン級を退役(内4隻は日本に、2隻はプロイセンにそれぞれ譲渡)させた基準排水量55.000t級の【フランクリン・デラノ・ルーズベルト】級に結実する。
☆☆☆
イギリス
イギリスはCETO(欧州十字教条約機構)に宗教的…いや、政治的な理由で加盟してない為に戦争による出費はなく、比較的順調に命綱である海軍の拡充を続けていた。
戦艦
ネルソン級戦艦×2(ライオン級の就役と同時に退役)
キングジョージV世級戦艦×6隻(史実に加えデューク・オブ・エジンバラが追加)
ライオン級戦艦×4隻(ライオン、テメレーア、コンカラー、サンダラー、1943〜44年に竣工)
ヴァンガード級戦艦×2(ヴァンガード/ヴァリアント。48年に竣工。18インチ45口径長砲2連4基8門、基準排水量68.500t)
1930年代後半から40年代末期にかけて建造された【12隻の新造戦艦(マジェスティック12)】がこの時代の英国の象徴的海軍力となる。
ちなみに、キングジョージV世級の就役に合わせロドネイ級以前の戦艦は退役している。
名目的にはプロイセンへの対抗という事になっているが、明らかに過大であり、かなり明確にアメリカを意識していた事が伺える。
また、太平洋戦争の早期開戦により大和級が戦列に加われなかったPPGの世界において、アメリカが50年代末期にノース・カロライナ級の代替として建造した最後の戦艦シリーズ【テキサス級】が出てくる迄は、イギリスは人類最初にして唯一の18インチ砲戦艦保有国だった。
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空母
アーク・ロイヤル
ユニコーン
イラストリアス級×8隻(全艦、格納庫拡張作業済み)
アーク・ロイヤル級以前の空母は航空機の大型化に追従出来ずに退役し、空母はイラストリアス級(史実ではインプラカブル級相等の改装を全艦受けている)が主力となっている。
空母は少なくとも数だけではアメリカと比べても大きくひけをとるものではなく、第二次大戦という巨大戦争に参戦せず(日本は南侵前にアメリカにぶつかっている)に膨大な戦費捻出を抑制した事により、イギリスにはこれだけの余力があった。
戦艦にも同じ事が言えるが、この時代の英国戦闘艦が世界に威力を示したのは、戦後の数々の植民地戦争であり、使われ方も対地攻撃空母がメインだった。
また、イギリスに次世代空母が生まれるのは第二次大戦後に20年以上経ってからである。
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その他の列強各国の海軍力
ソビエト
ポーランド侵攻が史実より2年以上遅い1941年12月24日(いわゆる"サタンクロース")までずれた為に【ソビエツキー・ソユーズ】級に建造中止命令は出ておらず、1944〜45年の完成を目指し同時建造されている。
また、旧式とはいえガングート級戦艦3隻を保有(史実と違い名称変更は行われてないようだ)
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フランス
史実と違いドイツ(プロイセン)の侵攻が無い為に比較的堅実に艦隊を拡充させつつある。
PPG開始の43年で既に、
ダンケルク級巡洋戦艦×2
リシュリュー級戦艦×3
を就役させていて、更にガスコーニュ級戦艦3隻も建造中。
大戦中に都合8隻の戦艦を配備し、何気に日本が敗戦により脱落した当時としては、実は世界3位の戦艦保有数(CETO内1位)を誇る海軍国という側面があります。
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イタリア
PPGにおいては、【CETO(欧州十字教条約機構)】の発起国だけあり、少なくとも赤色相手には戦意は【ヘタリア】と呼ばれない程度に高い模様。
ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦×4
何気にプロイセンより戦艦保有数が多いイタリア海軍(笑)
ちなみにヴィットリオ・ヴェネト級より古い戦艦は、同級の就役に合わせて退役、軍全体としての維持コスト削減を図った。
ここでは億が一(笑)、PPGに需要があって連載になったとしても、まず出番が無さそうな海軍にスポットを当ててみました(^_^;)
いえ、本当にお遊び設定なんですが(笑)
お楽しみ頂けたなら幸いですm(__)m
PPGでは、物語開始当時では航空機で撃沈された大型艦(戦艦、巡洋戦艦、空母)は存在しておらず、【重装甲化した浮游目標に対して最も有効なのは砲撃である】という考え方が支配的です。
艦隊戦における空母の役割は、【敵をいち早く捕捉し通報/追跡、火力支援に着弾観測】がメインとされてるようです。
実際、太平洋戦争では日米双方の空母搭載機が中型以下(巡洋艦以下)の艦艇を撃沈したり、撃沈は無理でも煙突を破壊して速力を落とさせ艦隊から大型艦を脱落させたり、あるいは装甲化されてない場合は極めて脆弱な空母の飛行甲板を大破させて使用不能にさせたりと一定の効果と価値が認められたので、特に米国海軍では【現状では不可能だが未来では航空機による大型艦の撃沈も可能になるかもしれない】と結論します。
また、まだ遠くの島々から日本本土を直接空爆できる戦略爆撃機が未発達なこの時代、日本本土を半ば焼け野原に変えたのは、戦艦からの集束焼夷砲弾と艦上爆撃機の集束焼夷炸裂弾の二つの【クラスター・ナパーム】であり、米国は海から主要陸上拠点への距離が短い島々では、戦艦による"戦略砲撃"が有効であると再認識したようです。
なのでアメリカは空母の建造も尽力しながら、日本からの様々な資料を入手した後に、更に大艦巨砲主義の新たな可能性を見出だしたようですね(^^;
☆☆☆
そしてプロイセンは、予算不足で戦艦建造増加が容易ではない為に、空母/航空機/潜水艦を中心とした、皮肉を言えば予算が無かったからこそ史実の【戦後の現代海軍】をいち早く形成する事ができたようです。
プロイセンは国防が基本なので、無理に敵戦艦を沈めなくとも追い払えれば十分だし、ましてや戦略砲撃で敵拠点を焼き払ったり、艦砲射撃の支援の元に上陸戦なんてのは、誰も考えてないのでしょう(笑)