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ヒロインな兄とその妹

ヒロインな兄とその妹

作者: 暢流

 「お兄ぃぃ!朝だよ!朝練ないの?」


 私がそう呼びかけると2階からドタバタと騒がしい音が響いてくる。よく聞こえないがやっべー遅刻遅刻などという独り言もかすかにきこえてくる。私の名前は相澤あいざわ みやびこうして兄の総司そうしを起こすのはもはや日課である。しばらくすると私のいるダイニングに兄が駆け込んできた。


「雅、起こすのおせぇ!もっと早く起こせ!」


「うっさい!私は何回も起こした!起きなかったのはお兄でしょ」


 私がムッとしながらそう答えると兄は舌打ちをし、テーブルの上にある朝食の目玉焼きを一口で食べ牛乳を一気に飲み干した。それからサッとジャムの塗られた食パンをひっつかむと口にくわえて玄関へと走り出した。

 私はまさかと思い玄関へ兄の姿を追う。するとそのまさかは実現されたようでパンをくわえたまま兄は玄関から飛び出していった。よく見ると玄関先においてあった弁当まで忘れている。

 今時少女マンガでもやらねぇよ。私はそう思いつつキッチンの片付けもそこそこに自分のカバンと2人分の弁当を持ち兄を追って家を飛び出した。


 私と兄は同じ高校に通っている。にもかかわらず何故私が奴を追って家を飛び出すかというと、奴には少女マンガのいわゆるドジっこヒロインな属性が付いているからである。

 

例1、近所の犬に追いかけられる。


例2、いじめっ子に目を付けられる。


例3、池に落ちる


 などなど昔からドジっこヒロインの過去編な人生を地で突っ走っていた。しかし兄は男の子。ドジっこヒロインのようにかっこいいヒーローが都合よく現れる訳もなく。助けてくれるような未来のイケメン幼なじみもおらず。未来へのフラグイベントはことごとく不発、ただの不幸イベントと化していた。

 その様子があまりに不憫だったため、仕方なく私が近所の犬を懐柔したり、いじめっ子に復讐したり、タオルを調達してやったりしたものだ。もはやどっちが年上かわからない状態である。ご近所さんは確実に私を姉と誤解していたと思われる。


 そんな状態なものだからまさにフラグたてますよと言わんばかりの今朝の状況は自称保護者として放っておけないのだ。


 そして目の前には案の定な状況が広がっている。 

 高校2年生となった兄は、華奢で女の子の様に可愛らしかった昔の容姿からは想像がつかないほどでかくなっていた。180センチ越えのバスケ部スタメン細マッチョ。妙に整った顔立ちで睨みつけられるとそれだけで萎縮してしまうわけで。前方には尻餅をついた兄と、その兄に睨みつけられ萎縮しきっている少年。道端には半分ほど食されたパンがポツンとむなしく落ちていた。


 せめてぶつかったのが女の子であれば兄の無駄にイケメンなその容姿でラブフラグがたったかもしれないのに、そこはさすがの兄クオリティー。男の子とぶつかるとか外しません。BLならね。フラグバンバンだったかもね。可哀想なお兄。

 このままでは埒があかないので私は取りあえず話しかけることにした。


「お兄。何やってんの?知らない人をそんなに睨みつけるもんじゃないよ。」


 そう声をかけると一気に場の緊張が溶けこちらを見る二人。新たな乱入者にあからさまにほっとした様子の少年。兄は不機嫌な様子で私に反論してきた。


「こいつが急にぶつかってきたんだ。俺は悪くねぇ。」


 拗ねたように唇を尖らせるが、がたいのいい17才がやったところでキモいだけだ。


「この人にしてみたらお兄がぶつかってきたんだよ。どっちが悪いとかないの。ほらほら二人とも謝って。」


そういうと兄は渋々、少年は深々とお互いに頭を下げ謝罪しあう。


「これでお互い恨みっこなしね。お兄は急がないとほんとに遅刻するよ?」


早く行った行った。そう言って兄の背中送り出すと私は改めて少年に向き直った。さすがに男の子と言うべきか155センチしかない私より10センチ程背が高い。顔立ちは可愛らしく将来が楽しみなイケメンだ。


「ゴメンね。家の兄が迷惑をかけて。悪い人じゃないんだけど不器用と言うか素直じゃないというか。」


「いえ。僕の方こそぼぉっとしてたので…。あの…ありがとうございました。」


 そう言って少年がまた深々と頭を下げてきたので私は大慌てで頭を上げさせる。


「そんなに頭を下げないで、私なんて大したことしてないんだから。その制服西高でしょ?急がないと遅刻するんじゃない?」 


 私がにっこりと笑いかけてそういうと少年は頬をほんのり染めてうつむいた。


「大丈夫です…あの僕、あずま 恭祐きょうすけって言います。もしよかったらお礼に何か奢らせてください。放課後駅の時計塔の下で待ってます。」


 そういって少年、東君は返事も聞かず走り去ってしまった。

 

 あれ?何この展開…。


「あ、弁当渡し忘れた。」


 私は取りあえず思考を放棄して学校へ行こうと通学路を歩き出すのだった。  

雅はこんな感じで兄の代わりにわんこの飼い主やらいじめっ子やらとフラグたてまくってます。なにげにシスコンの兄は気が気じゃありません。

もしかしたら続くかも?

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