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カレー屋に行ったのに

作者: 命野糸水

   カレー屋に行ったのに


「そういえばさ、こないだマッチした女とのその後どうなったんだ」


 俺は目の前にいる友達に聞いた。前回会ったとき今度マッチングアプリでマッチした女性と会うと言っていた。その後どうなったのか非常に気になっていた。


「あーその話か。うーん。あまり話したくないんだよな」


失敗したのだな。俺はそう思った。言い方から分かってしまった。それにテンションが低い。成功したもしくは何らかの発展が見られた人はもう少しテンションを上げて前のめりに話すはずだ。


「いや、いい。話さなくて。失敗したんだろう。すまない、傷口を開くような話題を振ってしまって」


「いや、話す。傷口は開いていないし。結論から言うと確かに君が言った通り失敗した。でもなぜ失敗したのかが分からない。考えたんだが分からない。そこでだ、なぜ成功しなかったのか、君の意見を聞かせてほしいと思っていた。だから話す」


友達は強がっているようには見えなかった。ただ傷口が開いていないこと、そこまで落ち込んでいないところは良かった。


「分かった。まず前にも聞いたけどマッチしたところまで話してくれ」


「そのつもりだ。俺は社会人だから学生はまずはじくんだよ」


はじくとは選ばないことを指している。マッチングアプリ上では一枚ずつ女性のプロフィールが流れる。顔はもちろんのこと住んでいる場所や年齢、趣味や好きなことなどが書かれている。


受け手は「はい」か「いいえ」のボタンを押すことが出来、「はい」を押すと相手に通知が行きメッセージを送りあうことが出来るようになる。友達はそのプロフィール内に学生と書かれていた場合問答無用で「いいえ」を選択するらしい。


「会社員を含めて働いている人を選ぶようにしているんだけど、いいなと思う人には「はい」を数関係なく押している」

数関係なく押すことはどうやらマッチングアプリ内ではおかしなことではないらしい。


「そのなかでカレーが好きな女性とメッセージのやり取りをしてさ。お互い働いているから夜に合うしかなくて。俺が新宿におすすめのカレー屋があるからそこに行きませんかって送ったのよ」


カレーが好きという相手に合わせた選択。間違っていないだろう。

「そしたら相手から方向音痴だから新宿は止めてほしいです。別の所で待ち合わせしませんかってきて」


わがままな女性だ。俺は思ってしまった。でも同時に女性の言い分も分かる。新宿駅はダンジョンだ。迷う。ましては初めて会うんだ、分かりやすい場所で待ち合わせすることがいいだろう。


「おまえさ、新宿待ち合わせは止めておけよ。あそこはダンジョンだ。待ち合わせに向いてないよ。新宿ならアルタ前とかにしろよ」


「元な。もうアルタないから」


「いいよ、そこ直さなくて」


「とにかく話戻すけど、別の場所にしてって言われたからなら御徒町にもおいしいカレー屋があるんで御徒町集合にしませんかって返したのよ」


「初め新宿にしようとしてたんだよね。で次に御徒町は距離離れすぎじゃないか」


「あーそれは考えてなかったな。そうか、それで成功しなかったのかもな。確かにな。会社がどこにあるか知らない状態だしな。新宿は行きやすいけど御徒町は行きづらいってこともあるよな。なるほどな」


友達はスマホを触り始めた。ちらっと画面を見るとメモアプリを立ち上げていた。今の距離についてメモしたのだろう。


「で向こうからも分かりました、集合場所を変更してしまってすいませんってきて。御徒町のカレー屋で食べることに決まって」


「まぁ今のところは場所変更についてだけだな。失敗したなって思ったのは。まぁでも変更したのも相手が変えてくださいって言ったから変更しているから失敗とも言えないのか」


「そうだよ、まぁ小さな失敗かな。で当日無事会うことが出来てさ」


「ちょっとまって、御徒町のどこで集合した。分かりやすいところにした?」


「あぁそこは大丈夫。映画館前にしたから。集合はスムーズ行えたよ」


「それは良かった」


「プロフィールに載ってた顔の人がそのままきてさ」


言い方が気になるな。加工していなかった、大きなズレがなかったって言いたいんだろうな。


「で俺が好きなスープカレーの店に連れて行ってさ、そこで夜ご飯を食べたんだけどね。食べた後御徒町駅で別れて。また機会があえばよろしくお願いしますって言われたけど、それ以来連絡がないんだよな」


「スープカレーの店に連れて行ったのか」


「そうだよ。そこのスープカレー旨いんだよ」


「おまえ、それが失敗の原因だろ」


「え?」


こいつ分かっていないのか。彼女はカレーが好きって言ったんだぞ。スープカレーが好きとは言ってないだろ。カレーとスープカレーは違うだろ。


「スープカレーとカレーは違うだろ。彼女からしたらカレーを食べる気分でいたのに連れていかれた店がスープカレーだったらがっかりするだろ。思っていたのと違うってなるだろ」


「あー、そうか。スープカレーの店でもいいですかって聞かないといけなかったのか。そうか」


「スープカレーとカレーは違うもの。メモしておけよ」


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