プロローグ:想像の産物
はじめまして、暁菫と申します。この度は閲覧いただき誠にありがとうございます。
物語を始まるにあたり、簡単なプロローグを書かせていただきました。
かつて、人々の想像はただの夢だった。
現実に影響を与えることのない、心の中だけに存在する穏やかな幻想――そう信じられていた。
だが、その幻想が現実の形を持ち始めたとき、世界はその形を変えた。
最初に報告された「顕現」は、20XX年、××県の小さな村だった。
身長30センチほどの小柄な人型の生命体が、傾きかけた頃の田畑に現れた。肌は褐色、顔にはサンタのような皺があり、その静かな目が田を一つずつ見渡すように動いていた。農作業中だった村人たちは恐れつつも、その姿をただただ見守ることしかできなかった。
その小人が現れた年、村では記録的な豊作を迎えた。
「小人が豊穣を予言した」との噂は瞬く間に広まり、豊穣の神として崇め奉られるようになった。
しかし、それが「祝福」としての空想生命体の一面に過ぎないことが判明するのは、ほどなくしてのことだった。
○○府のスーパーマーケットで報告された、もうひとつの「顕現」。
それは、身長3メートルを超える巨躯を持つ、一つ目の「鬼」だった。灰色の肌、鋭い爪、そして黄色く光る目。頭頂部には30センチほどの黒い角が突き出し、その姿は恐怖そのものだった。
鬼はスーパーマーケットに侵入すると、次々と中にいた人間を襲い、殺害した。
警察が通報を受け現場に到着した時にはすでに鬼の姿はなく。
現場に残されたのは血の海と、無惨に引き裂かれた棚や壁。その光景は、あまりに非現実的であるがゆえに現実の重さを増幅させ、目撃者たちの心に深い恐怖を刻みつけた。
空想生命体――それは人間の無意識の奥底にある、強い欲望が現実に顕現したもの。
小人のように希望をもたらす存在もいれば、鬼のように破壊と死をもたらす存在もいた。
空想生命体の出現と同時期に、「イマージ」と呼ばれる特殊な力を持つ者たちが現れた。
イマージとは、空想生命体に唯一対抗できる力である。空想生命体が顕現する原因が「人間の無意識」である以上、通常の武器や手段ではそれらに歯が立たない。だが、イマージを持つ者だけが、空想生命体に立ち向かい、その存在を制御したり、消滅することができる。
空想生命体の発生を止めることはできない――なぜなら、それは人間が想像する限り、生まれ続けるからだ。
祝福か、呪いか――その問いに答えはまだ出ていない。だが、ひとつ確かなのは、人々の想像が希望と絶望の両方を生むこの世界で、「イマージ」を持つ者たちが唯一の対抗手段であるということ。
そして、この世界は人に言う。
「ソウゾウは希望であり、罪である。」
第一話は、一緒に投稿しましたので是非ご覧いただければ幸いです。