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私の星と、炎の星。  作者: 雫 のん
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第3話 不死炎鳥(フェニックス)の炎

 再び喧嘩を始めたラビジェルと龍東。しかし今度はエンジェルはその喧嘩を止められなかった。

そんな時に2人に声をかけた、、

 

 2人を制止したその少年は、《蘇復(そふく) 不死炎鳥(フェニックス)》。エンジェルも、その容姿と名前はよく知っていた。なぜなら彼は、齢6歳にしてこの星で最強と崇められているのだから。

炎のような赤色の髪、銀色に光る瞳の彼は、炎の魔法と回復、蘇生の魔法を得意としていて、自身の死後の自動蘇生や炎の火力は世界を変えるほどの力を持つ。それほどに恐ろしい存在なのだ。


「はあ?いまらびとこいつでしゃべってんだけど!?じゃましないでよ!!てかりゅーと!!」

 しかしラビジェルは読書や勉強には無縁の少女。野を駆け回り元気いっぱいにはしゃぐ彼女は、彼の恐ろしさなどこれっぽっちも知らなかった。そのため喧嘩をすぐに再開。不死炎鳥の登場に黙りこくっていた龍東も、ラビジェルに言われっぱなしは悔しかったのか、すぐさま言い返す。

その途端、明らかに周りの空気が熱くなった。

「黙れと言った。怨むな。」

彼の翼から、オーラから、手から、見たこともない威力の炎が放たれる。それは真っ赤な炎なのに、どう考えても数万度は上回る温度に感じた。

自分たちが化物でなかったら、一瞬で死んでいただろう。教室も、クラスの皆も、瞬く間に燃え出した。


「うわぁーん!!あつい!じぇるたすけてぇ!!わあぁぁぁぁぁああ!!!」

彼はラビジェルの方に向けて炎を放っていたから、1番被害を受けたかもしれない、と、エンジェルはラビジェルの方に駆け出そうとした。

「らびちゃん!だいじょ…」

「こいつに、近づくな」

しかし、冷たい声がそれを防いだ。その声で走るのを止める。これ以上の被害を出さないのも大切だから。

「…!」

泣いているラビジェルを放っておかないといけないことが悔しくて悲しくて、エンジェルは目に涙を浮かべた。

(らびちゃん…!ごめんね…ごめんね…!今すぐ回復しにいきたいんだよ…)


 ラビジェルのすぐ隣にいた龍東のことを案じて、ふと彼の方に目を向ける。良かった、自身の回復も十分済ませているし、教室の炎も消そうと奔走している。

その行動を見て、ラビジェルのことも回復させてくれればいいのにと思ったが、多分彼にも不死炎鳥の睨みが効いているのだろうと思い、ラビジェルのことは諦めることにした。


 諦めることにした。


 諦めた?


違う。らびちゃんはまだ泣いてる。痛みに苦しんでる。

それを私は完全に放っておいてない。

私はまだ、らびちゃんを案じてる。心配してる。

今すぐにでも、駆けつけたいと思ってる。


(自分の身を案じてる場合じゃないでしょ!)


クラスをパッと見たとき無龍の姿はなかったから、多分違うクラス。周りの子のお喋りを聞いた感じ、入学式で回復魔法を披露したのは私と彼だけだった。


らびちゃんを助けられるのは今、私しかいない!


決意をして、駆け出した。ラビジェルの元へ。

「らびちゃんごめんね!今なおすから!」

 急いでかける治癒魔法。淡くて温かな光をラビジェルにかけると、火傷跡が癒えていくのがわかる。

てっきり不死炎鳥はすぐに炎を放つと思っていたが、不思議なことに何もしてこなくて、黙ってこちらを見つめているだけだ。自分には誰も背かないとでも思っていたのだろう、背かれて驚いたのだろうか。

魔素の限りの治癒を行うと、ラビジェルはそのまま眠りについた。それを確認して、エンジェルは不死炎鳥の正面に立つ。










 物心つく前から、不死炎鳥はほとんど全てにおいて完璧を越えるようなの天才だった。この星では5歳ぐらいからはできて当たり前な家事が苦手なところと、不器用な性格を除いて。

 得意料理は炭。炎のオーラで料理が焦げたり材料の混ぜ加減が悪かったりで、何を作ろうとしても炭になるのだ。箒などの掃除道具は力が強すぎて掴むとポロリと壊れるし、洗濯をしようとすると服が破けて大変だ。

ペンや箸等は壊さないよう加減ができるようになったが、家事はいつまでたっても慣れない。


 正直な気持ちを伝えるのが苦手だ。自分が知っている言葉の半数以上は、同い年では理解できないヒトがほとんどで、普通に喋っても理解してもらえない。それに言葉の読み取り方なんて人それぞれだから、意思の通りに相手に伝えるのはどれだけ学校の勉強ができたって難しい。素直な気持ちを真っ直ぐに伝えるには、天才と崇められすぎて生まれたプライドが邪魔をする。

 言葉は噛み砕いて、それでいて意思ははっきり伝わるように、自分のプライドは傷つかないように、と日々頭を使っている。それでも限界はあって、どうしても意思通りに伝えられないことだってある。


 今回もそうだった。本当は、少しおとなしくしてくれればそれで良かったのに…


 天才の度を越える不死炎鳥は、耳もヒトの何千倍もよく、周りのちょっとした雑音ですら騒がしくてたまらない。それが席の近くの大声の喧嘩だったら…

いち早く、苦しさを少しでも和らげたかった。それでかけた言葉が、「うるさくしないでほしい」を強くした「黙ってほしい」の命令形、「黙れ」。


そして、その言葉を言った後、聞き入れてくれなかった2人に怒りがこみ上げて、意識がプツンと途切れた。


 人格が入れ替わる。


 目の前のうるさい奴等が目障りで耳障りだ、俺のために死ねばいいんだ。

そう思って炎を放つ。燃え尽きてしまえばいいんだと。

顔面が焦げて髪や服が燃えて泣き叫ぶ女の姿は最高だった。うるさくって邪魔だったやつの苦しむ姿は傑作だった。男が余計な回復をしたのはムカついたが、底辺な奴等の無駄に足掻く姿も、見ていて面白いなと放置することにした。女に駆けてこようとした奴もいたが、一声かけるだけで止まる。屑なやつはやはりその程度なのだ。

と、思ったが。


 ソイツはこの状況でも女の方へ駆けていった。

その行動を目の当たりにする前は、もし治癒なんてしに行ったらそいつも焼くつもりだった。しかし実際にその行動を目の当たりにすると、驚きが大きくて動けなくなった。

自分の命を何だと思っているのだろう、と。

ヒトは屑ばかりなんだから、いくら家族だろうと友人だろうと恋人だろうと他人は他人。死にたいと思っている奴以外は、自分の命を犠牲にしてまで他人を助けないもの、と思っていた。

 違った。呆れながらも微笑ましそうに2人を見ていたアイツは、エンジェル・キャットは、助けに行った。

幸せそうな顔を呑気に浮かべてたアイツが。


 妹ごときを助けるために、うるさく喚く奴なんかのために、走った。そして治癒を行い、女を大事そうに抱き抱え言った。それを見た衝撃で、人格は元に戻った。


「どうしてこんなことしたの?」


 エンジェルは生まれて初めてこんなにも怒れる気持ちを抱いた。ずっと小さな頃から我が儘だけど可愛い妹と暮らしてきたから、なるべく怒らないよう優しくあれるように今までずっとずっと注意してきた。

 たった1人の家族に嫌われたくなくて、怒る気持ちを封じてきた。そのため他人にだって、きつく怒ったり怒りを抱いたりはしてこなかった。

「たしかにあなたは黙ってって言ったよ。だからうるさくし続けたらびちゃんたちも悪いよ。でも」


けれど、今回は違う。嫌われたくない妹のために、きちんと怒らなくてはならない。


「暴力は違うでしょ。」

例え相手がどんなに最低なヒトだとしても、恐ろしいヒトでも、思ったことは真っ直ぐ伝よう。






「……暴力は1番手っ取り早い。殺したかったのをやめただけでも、有り難く思え。」


 不死炎鳥は意識が途切れてから甦るまでの記憶がなかったのだが、なにせもう1人自分のことなのだ、だいたいどんな奴かは分かっている。“奴”はまたヒトを焼いたのだろう。

 周りの状況と彼女の言葉からそう理解してそう言った。周囲の誰かには“奴”の存在は悟られぬようこれまでもずっと努めてきた。病院やら何やらに連れられたくないから、それは今もこれからも続けていくつもりだ。

人間性のある本来の自分が、もう1人に合わせていくこと。他人に嫌われたっていい、どんな陰口を言われたっていい。変な噂がたってもいいから、天才であり続けるための努力を続ける。

 欠点なんて知られたくない。そんなものないと胸を張りたい。家庭科だってやれる努力はやっている。


「私はそんなこと思わないから。」

 エンジェルにとっては訳のわからない無茶苦茶なことを言ってきた彼に向けてエンジェルは言う。

「暴力はいけないこと、殺すのなんてやらなくってあたりまえなの。殺さなかっただけありがたく思え?むりだから。」










 美夜と美影の2人は、2人の小屋に帰って昼御飯の支度を始める。美影は料理が苦手なので、美夜が調理を担当し、美影がテーブルの準備の担当をする。

当然美影の仕事が先に終わるため、美影は空き時間で小屋の掃除をする。だいたいいつもその間に料理が完成するので、完成したら美夜が美影を呼んでランチスタート。

 今日の午前の散策ではキノコしかとれなかったため、掘ってつくった地下室に保管していた別の食材も使って調理した。

「きゃ~!あの私ドクありますって感じのキノコくんがおいしそう!!」

料理上手な美夜の見た目はおいしそうなキノコスープに、美影が声をあげる。

「えへへ、でも味とかはわかんないよ。そのキノコ初めて使うもん。」

「じゃあドク見いくよー、」

美影がそう言い、薄い赤色のキノコを口に運ぶ。

「うっ…これドクある!!」

思った通りドクがあり、慌てて吐き出す美影。それを見て急いで美影に手をかざす美夜。美夜の手から薄紫の淡い光が溢れ出したかと思うと、美影から濃い紫色の霧が出てきて、光に吸い込まれた。そして美夜の手から体内に吸収される。

「ちーっ、これも外れかあ…」

体内からドクが消えた美影がため息混じりに呟く。

「ほんとだねー…この森で食べれそうなもの他にないのかなー」

今のところ2人が見つけた安全に食べられる物は10数種類で、夏~秋にかけてはまだ良いが、春、冬に見つかるものは3種類ほどしかない。

「まあいいか、また午後探そー」

第3話、最後まで読んでくださり感謝です✨


この作品は最初のほうから登場人物が多めで、キャラの把握がしにくいと思いますので、もうすぐ人物紹介を出す予定です。

キャラの把握ができなくて話がよくわからない方、すみませんが少々お待ちくださいm(__)m


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