第2話 周りとの格差
戦闘訓練が始まって、真っ先に鳥南という少女が技を披露した。それがあまりにも凄く、驚きを隠せずにいたエンジェルたち。そこに話しかけてきた少女が…
「ばかみたいって、そんな言い方しなくたって」
エンジェルがそう言うと、西葉はあきれたように笑った。
「だって本当にバカみたいだから。あたしだってこのていどのレベルのことなら簡単にできるし。えwまさかあんたたちにはできないのー?」
「そんなのやってみないとわかんないし!」
「へー、そーうー?やらなくてもわかるでしょ。顔面だけじゃなくて頭までポンコツなんだー?」
「がんめんがポンコツ!?らびのこのかわゆいかおにシットしてんの?」
らびちゃん、可愛いのはそうなんだけどね。意味もわからず嫉妬とか言うのは…
呆れたエンジェルはとりあえず2人は無視しておこうと決めて、玄武たちの方に顔を向ける。
「…プッ、可愛い~?自分で言っちゃうところイッターい!てかあんたみたいな変な子にしっととかありえなーい」
「う~!じゃあしょーぶしよ!これかららびたちも、ちょーなちゃんたちみたいにやるんでしょ?どっちがすごかったかげんむせんせいにさいてんしてもらうの!」
「いいわ!うけてたってあげる!」
その頃、玄武は別の少年を指名して、その彼、《麒麟 無龍》に技を披露させていた。
「えい!」
無龍がキラキラと煌めく光を放つと、先程鳥南によって焼け焦げたはずの木々が、どんどんもとの綺麗な姿に戻っていく。
楽しそうに嬉しそうにその回復技を使う無龍のその姿に、エンジェルは思わず声をもらす。
「す、すごい…!」
そして喋ってしまってから気づいた。今の声は、無龍の邪魔になったかもしれないと。しかしそれは杞憂だった。
「ありがとー!!えーと…え、えん…えんじぇるちゃん!も、がんばってね!」
と、彼は太陽のような笑顔で言った。緑色のくせっけのサイドテールに、燃えるような赤い左目、背景の森に、日の光まで合わさり、エンジェルは彼に「太陽」という印象を抱いた。
右目の眼帯はよくわからないが。
「せんせー次こいつにやらせてください!」
無龍の披露が終わった途端に、西葉が叫んだ。
「ん~?予定狂うがまあいいじゃろう、んじゃあバニー、やってみ」
「ら、らびがさき!?」
「なに?怖いの?」
「ちがうし!見てなさい!」
自信満々にラビジェルはそう言い、ハートの形をした塊を産み出して木々に放つ。
ポンポンと気の抜ける音がして、木はほんの少し黒く焦げた。
「あ、あれ?らびこんなによわっちかった?」
しばらく沈黙のまま時が流れたが、黒く焦げた部分がポロっと地面に落ちると、西葉が呟いた。
「あんだけ色々言ってたくせに…こんなんであたしたちと同じ土俵に立とうとしてたの?」
「ちがうもん!ほんとはもーっとできるんだもんん!!」
涙を必死に堪えて叫ぶラビジェルが、とても痛々しかった。何か言ってあげたかったけれども、あれだけ色々言ったラビジェルにも問題があるので今回はお灸を添えるつもりで黙っておく。
少しして、西葉が玄武に言った。
「せんせー、次あたしにやらせてくださーい。」
「ん?お、おう。いいぞ。」
「!!」
自信満々なその顔から放たれたモノは、先程のように気の抜けたモノではない。バリバリと強い電気を放電して、森全体は瞬く間に炎に包まれた。鳥南とは違う形で焼き付くしたが、彼女に勝るとも劣らずなその威力は本当に彼女の事故評価の通りだった。
周辺の木が燃え尽きた途端、西葉は腰に手を当てて言った。
「どーう?ラビジェル。あんたとちがってあたしの『力』はすごいでしょー?鳥南と大して変わらないんだから!」
「ぐぬぬ…」
さすがにもうラビジェルは何も言い返さなかった。負けを認めたのだ。
その後も全員の『力』の披露は続き、終わった。エンジェル的には、30人中、鳥南、西葉、無龍、龍東が凄いなと思った。鳥南の炎や西葉の電気は言うまでもなく。無龍は同じ回復魔法の使い手として尊敬する。龍東の『力』は他の誰とも違い、一瞬で周囲の木々を灰にするといったもので、この『力』が披露されたとき、クラスの皆が思わず息を飲んだ。
ちなみにエンジェルのときは、無龍ほどの大した回復こそできなかったものの、「女神さまみたいだった!」「優しさがつたわる!」と、終了後クラスの子たちに褒めてもらえた。
皆が口々に感想を伝えあっている中、玄武が一人ぶつぶつと何か呟いていた。何て言ってるんだろうと思っていると、玄武がようやく皆に聞こえる声で話し出した。
「ほいじゃあこれでクラス分けテストを終了する!ちなみに今のクラスは仮のやつじゃ。という訳で3、4時間目は自習。2組を見とらなあかんからの。」
エンジェルはもちろん、他の皆もそれは知らなかったようで、玄武に口々と文句をぶつける。
「なにそれー」「聞いてないし!」「せっかく友達できたのに」「ありえなーい」
その全てを聞き流し、玄武は偉そうな足取りで立ち去っていった。それがより皆の怒りを買う。
「なにあの歩きかた!」「うわえらそー」「なにさまのつもり?」「いちおうあいつ星の長老だしさ」「あー、星の王さまきどりか」
しばらくして皆は文句を言うのに飽きたのか、ちらほらと教室に戻り出し、自習を始めた。
キーンコーンカーンコーン…
隣の教室から聞こえるベルの音で、4時間目の自習の時間
が終わった。今日は入学式兼始業式なので、これで授業はおしまいだ。エンジェルはラビジェルと共に家に向かう。
途中、ラビジェルがポツリと呟いた。
「ねーじぇる…くらすどうなるのかな?」
「ん?どういうこと?」
「だって、きょーのくんれん、らび、みんなよりもできないこだった。」
しょんぼりとした顔をしたラビジェルを、エンジェルは慰める。
「そのこと…気にすることないよ。わたしもそうだったし。おんなじくらいの子もいっぱいいたじゃない。」
「らびたち、だめなこばっかりのクラスになる?」
「そう、かもね…でも大丈夫!そうなってもこのクラスは毎年クラス替えがあるから。だめなクラスから良いクラス目指してがんばろ!」
エンジェルにも少し悔しい思いはあったけど。それは隠しておくとする。
「だね!りゅーとと、せーはには、まけないんだから!」
「けんかした子ばっかだね…もうちょっとみんなと仲良くしようよらびちゃん…」
「らびそんなことできない!じぇるみたいなまともなおんながいないからわるいんだよ!」
また人のせいにする…たしかにあの子たちも口悪めだけどさ、、
翌日。朝早く起きて身支度と朝ご飯をすませ、登校時間の30分前くらいにお寝坊なラビジェルを叩き起こして、エンジェルはラビジェルを引っ張りながら学校に向かった。
家から学校までの距離はおよそ1㎞。30分あれば余裕なので、ゆっくり歩いていく。通学路には蝶々がたくさん舞っていて、花を飛び回る姿がとても可愛らしかった。
こんなふうに自然の美しさに浸っていると、この星は本当に沢山戦争をしている&いたのかがとても疑わしく思えてくる。エンジェルが生きてきた6年間は、化物界は戦争をしていないことも、そう思わせる原因だ。
いったいどれほどの星に、玄武や上級生の皆は手を出してきたのだろうか。宇宙全体の多くの星に恨まれるほどだから、よっぽど酷いこと沢山をしたのだろうということしか分からない。
そんなことを考えながら20分程。エンジェルたちは学校について、貼り出されているクラス名簿を確認して、ラビジェルと共に1組の教室に向かう。エンジェルとラビジェルは2人とも1組だったのだ。
「じぇるー!おなじくらすでよかったね!」
「うん。ちょっと安心した。」
教室の扉を開けると、扉のすぐ近くの席にいた、見知った顔の少年と目があった。少年は、ラビジェルを見るとあからさまに嫌そうな目をした。ラビジェルも、あからさまに嫌そうな顔をした。
「げっ!迷惑ラビジェルじゃねぇか!」
「うげ!らびのシュクテキりゅーとじゃん!さいあく!」
声をそろえて言う2人。そしてラビジェルが謎の表情をして言った。
「ははーん。らびちゃん、かなしいながらもこれでナットクした。さてはおまえもらびもれっとーせーだな。ちょーなとかはいないくらすだし!」
「はあ?何言ってんだてめぇ!優等生と劣等生ごちゃまぜにしてんじゃねぇの!?オレみたいな優等生もいるし、おまえみたいな劣等生もいるってことはよ!」
エンジェルが注意をしようとしたその時、冷酷な声が、燃え盛る炎の圧倒的なオーラが、エンジェルのそれを制止した。
「お前達、うるさい。黙れ。」
美夜と美影の2人は、とりあえずそのキノコ?を持ち帰ることにした。
「みや、このキノコ食べてみてさ、もしドクとかあったら助けてよね」
「いいよ~。まかせてね☆」
「キメ顔すんなし。」
美夜はどんな魔素でも自身に自由に取り込め、好きな目的で使えるといった『力』がある。
魔素とは、大気に含まれる魔法エネルギーの素である外素と、食物中に含まれる魔法エネルギーの素である内素を合わせた名称である。
食物に含まれる魔素には種類があり、(外素にも種類はあるが。)その中でも有害なものがある。それを皆はドクと呼んでいて、毒との違いはない。
第2話書ききれましたー!最後まで読んでくださった皆様に感じです✨別種の話も書き始めたので、よければそちらも見ていってください。
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