第四話 旅立ち
自分も久しぶりに人の姿になったので訓練は必須だろう。
なので妹たちも見ながら自分も鍛えていこうと思う。
基本的に妹たちの強化を優先し、それが終わり次第自分を鍛えていく事にする。
と言っても特に変わった事をする事もなくただただ地味なトレーニングをするだけ。でも、何事にも基礎が出来てないといつか大きな失敗をする。その為にも地味な練習は必要だろう。
ただ、俺たち竜のような種族は基本的に最初から強く鍛錬をするやつなんていない。それだから傲慢になるのだ。妹たちにはそうなってほしくない為みっちり練習させる。
努力はなかなか実らないがそれでもやり続ける事が大事なのだ。俺は努力をどれだけしてきたかが自身の強さであると思っている。
そして妹たちはその努力が出来る側だった。実際、たくさん努力出来る人なんて限られている。しかし、妹たちはそれが出来ている。それはとても嬉しい事だ。
数週間が経ち二人もそれなりに戦えるようになってきた。まだ個々の戦力はイマイチだが、連携がかなり上手く苦手な分野をカバーし合えていると思う。それに前衛と後衛を分けており相手を休ませない攻撃が出来ている。
最近は二人に負けそうになる事もあるくらいだ。個々の戦力についてだが、これは自分達でなんとか出来るだろう。お互いが連携し合っている事で相手の得意、不得意がわかり、教え合う事もできるだろう。
俺は二人と最後に会話をする機会を設けた。
『俺が進化した時からずっと鍛錬してきたが、良くここまでついてきてくれた。二人共、よく頑張っていたよ。もう俺が居なくても二人でなら生きていけるだろう。俺は明朝、街に出掛けるとするよ』
『そっ…か…。行っちゃうんだねお兄ちゃん…』
『ごめんな、俺としても離れたくないんだがあいつに復讐する為にはもっと情報が必要なんだ。折角人間の姿になれたんだし街に行って情報収集をしてくるよ。それが終わったらまた一緒に過ごせるさ』
『兄さん…妹の事は任せて、僕が守るよ。だから兄さんも気をつけてよ』
『あぁ、ありがとう』
その日の夜は久しぶりに三人で固まって寝た。
◇
明朝、まだ寝ている二人に行ってきますと声を掛けて街に向けて出発した。この森はなかなか人が寄り付かず長い距離を歩かないと行けないのだが、何せ元の体が竜なもんで一日で半分の距離を進む事が出来た。
当然野宿するのだが、竜の姿になると人間にバレてしまう可能性があるので人間のままにする。幸い魔物どもは俺の気配が只者ではない事を感じ取り近づいてこない。だからゆっくり休む事ができた。
次の日の昼には目的地に着く事が出来た。大きな外壁に囲まれており、門には人の行列が出来ていた。
自分も一応並んでは居るが今日中に入れるかどうかは分からない。
しかし、意外とスムーズに進み日が沈む頃には街に入る事ができた。この後どうするかは特に決めては無いがとりあえず金を稼がないと始まらない。その為に異世界ではお馴染みの冒険者ギルドを探す。
店には看板がぶら下がっておりそれっぽいマークを探しているとすぐに見つかった。
中に入ってみると正面には受付左側には酒場、右側に依頼が貼ってあるボードがあった。
そして中にいる人全員から注目を浴びる。俺はさっさと用事を済ませるために受付に向かい登録をお願いした。
「この紙に名前と得意な武器、属性を書いてください」
「分かりました」
困ったな…。名前なんてないし武器なんて使った事ない、属性もよく分からない。とりあえず武器は拳でいいとして属性はなんと書くべきか。影…か?それとも闇?
考えに考えた結果影と書くことにした。そして最後の問題として名前だがどうする…?とりあえず前世の名前でいいか。
「書けました」
「はい、エイタさんで属性は…影?何ですか?それ」
「えっと…自分の影に隠れたり他人の影に潜れたりしますね…」
「……嘘じゃないですよね?」
「はい…」
「まぁいいでしょう。深くは追求しないでおきます。その代わり今後受付を利用される場合は私のところに来てくださいね」
「は、はい…」
「あ、私はミズキって言います。これからよろしくお願いしますね!」
「よ、よろしくお願いします…」
何とも幸先の悪いスタートを切った俺だった。




