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死んで、転生して、影竜になった話。  作者: いなさと
第一章 王都カラリナ学園
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第一話 出逢いと別れ

 俺の名前は影野英太、高校三年生である。しかし、俺の人生は終わろうとしていた。

 いつもどおりの時間に起き、登校して授業を受け下校していた。なのに目の前までトラックが迫っていた。

 綺麗にトラックに()ねられた俺はそのまま絶命し異世界へと転生した。




 ◇




 目が覚めると目の前は薄暗く何かに覆われているようだった。体も丸められていて窮屈なので外に出ようと壁を殴る。

 すると簡単に亀裂が入り外に出る事ができた。

 目の前には大きな竜が立っておりこちらを見つめていた。

初めて見る生物に驚きはするものの自分の体も同じ構造になっておりそっくりだった。


『お前は私達の希望だ』


 急に頭の中に語り掛けられ体が跳ねる。

 咄嗟に何か答えなければと思った俺はラノベで読んだけ通りに相手に語りかけるように言葉を念じた。


『希望だって?』


『ほう…?産まれたてで竜語を操るか。なかなかに知性を感じる』


『あんたは俺の母親なのか?』


『うむ、母さんと呼んでくれ』


『分かったよ、母さん。それで色々と説明して欲しいんだけど…」


 そこで二つ目と三つ目の卵に亀裂が入る。そして俺と全く同じ見た目の竜が二体出てきた。


『お前の妹と弟が産まれたぞ』


『よろしくな』


『喋りかけても無駄だ、喋るどころか理解もまだ出来ていない。お前が異常なだけだ』


『へぇ…ま、それで一体ここはどこなんだ?それに俺達の種族は?』


『ここはスティープ山脈の一番高い山の頂上付近にある洞窟の中で私達の種族は影竜と言う』


 どれも聞いたことのない山脈と種族だった。そして母さんが言うには俺達、影竜は個体数が他の竜種と比べて非常に少なく極めてレアらしい。

 大昔は個体数も並みにおり、竜の王とされる竜王の種族だったとされている。影竜は他の竜種と比べ多少小柄だか、動きが速く、影移動ができ殺傷能力がずば抜けて高いらしい。


 一通り母さんに聞いた後、俺はこの体がどこまで使えるのかを試してみることにした。

 まずは最高速度だが、四足歩行に慣れていないのにも関わらずまぁまぁな距離を一瞬で走る事ができた。


『お前は影竜の中でもとんでもない速さをしているよ…』


 多少の呆れと共にそんな事を言われた。それを横目に俺は翼を使って空を飛んでみる。なかなか慣れないながらも浮遊する事はできた。

 

 そして、そうこうしている内に数日が経ち自分の体を完璧に理解した。数日間色々試して恐らく自分だけであろう能力を発見した。

 ある日自分にステータスがあるのかどうか気になり「ステータス」と唱えてみると目の前にゲームに出てきそうなステータス画面が出てきた。


ーーーーーーーーーー

種族:影竜(幼体)


名前:無し


レベル:1


スキル:影移動 影召喚 ???

ーーーーーーーーーー


 情報量は思ったより少ないがレベルとスキルがある事がわかったので大収穫だ。それにバグか分からないが???表記があるのが気になる。まぁ今どうこう考えたって変わらないのでひとまず置いておく。


 俺はその日から鍛錬を始めた。そしてレベルを上げるのに必要な経験値は鍛錬をするだけでも極微量だが得ることが出来ると分かった。効率の良い経験値稼ぎは恐らく強い敵を倒す事だろう。


 今できる経験値稼ぎは何かと考えていると弟と妹が自分に戯れてくる。前世が一人っ子だった俺はそれが堪らなく可愛くてついつい遊んでしまう。それに弟はだいぶ攻撃的で意外と訓練になる。対して妹は俺にスリスリ体を擦り付けてくるだけでつい抱き締めたくなる。

 それを母さんはいつもそばで見守っていた。


 しかし、最近母さんはずっと外を見ている事が多くなった。どうしたのか聞いてもなんでもないと答えてくれない。母さんは何かを感じ取っているのかも知れない。そしてその答えを知るのは意外と早かった。

 今日も妹達と戯れていると急にドッと空気が重くなったような感じになり、母さん以外はまともに動けなくなっていた。すると、目の前には母さんの他にポツンと佇む男の人がいた。


『まさかこんなに早く来るとは思わなかったよ…』


「そいつを殺させてもらう」


『無理だね』


「そいつはイレギュラーだ。ここで排除しておく」


『この子を殺したいなら私が相手になるよ』


 俺は何を言っているのか理解できなかった。弟や妹は怯えて俺の後ろに隠れている。

 どうやらあいつの狙いは俺の様で母さんはそれを阻止しようと目の前で男と戦っている。その中で一瞬母さんと目が合うと俺は妹達を連れ逃げ出していた。本当は逃げたくなどなかった。でも俺が加勢したところで足手まといなだけだし目が合った時に母さんは俺に妹達を託したと言われた様な気がした。


 俺は何も出来なかった自分に腹が立ち、母さんも命を懸けて俺達を逃したのだと思うと涙が溢れてくる。

 俺達は振り返る事なく涙を流しながら走り続けた。


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